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策謀

黒と白の特攻服が入り乱れ、空気に緊張が満ちる中――まるでその混沌を割くように、才が音もなく後藤竜の前へと現れた。

竜は、わずかに動揺し目を細める。才はそんな視線を受けながらも、飄々とした笑みを浮かべて言った。


「……猛はお前を、本気で潰すつもりやで」


唐突なその言葉に、竜の眉がわずかに動いた。


「あいつはな、兄弟や血のつながり――そんなもん、最初っからなんも考えとらへん。お前のことなんて、ただの“踏み台”。必要がある間だけ踏んづける、それだけの存在や」


才の声音は冷静で、“そうであることが悲しい”とでも言いたげな、憐憫を帯びていた。


「俺はな、ああいうヤツ、ほんま好かんのや。ずっと上から他人を見てる癖に、自分じゃそのことにすら気づいてへん。打算で人を見とる。そんなやつがトップ座ってるチーム、気色悪いやろ?」


竜は言葉を返さない。ただ静かに、じっと才を見据えている。


「もしも、――ほんの少しでも、目線を下ろしてくれたら。俺はあいつを頭として、支える覚悟ぐらいあるんやけどな……」


才はそこでひと息つき、口元をわずかに歪めた。


「でも無理や。あいつは“変われん自分”に、意味を持たせたがっとるだけや。それを信念とか都合の良い言葉に換えて、正当化しとるだけ」


そして、ふっと――


「でも、弟のあんさんは、違いますやろ?」


才の言葉は、竜に選択を“委ねる”ようでいて、同時に、“答えを知っている者”の声にも聞こえた。


竜は、才の顔をじっと見たまま、数秒間、微動だにしなかった。だがその沈黙は、確実に何かを――自分の中の“何か”を、殺していく音だった。


「……ほな、お前は俺に何をさせたいんや?」


ぽつりと落ちたその問いに、才は口角をほんのわずかに上げる。


「させたいんとちゃう。“選ばせたる”言うてるんや」


「選ぶ?」


「せや。兄貴のために潰れるか。兄貴を潰すか、どっちかやろ?」


 才の声は相変わらず静かで、感情がない。


「今の“闇天狗”は抜け殻や。だからお前が必要なんや。猛が消えた後、お前がその穴埋めるんや。それが出来へんなら……看板はもう用済みや。俺が畳む」


竜の目が細くなった。才の本音が、初めて露わになった瞬間だった。

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