圧倒
堂島は鼻を鳴らし、言葉を捨てて拳を鳴らした。衝突まで、一秒も残されていなかった。
間柴は真正面から突っ込んだ。逃げも隠れもない。己のすべてをぶつける覚悟だ。
「――ッ!」
腕と腕が噛み合う。骨が軋み、筋肉がぶつかる。だが――。
「……なんやこれ……」
自分の力が、相手の腕に吸い込まれて消えていく。どれだけ力を込めても、堂島の肉体は微動だにしない。まるで巨大な岩塊を相手にしているような錯覚。
間柴の足元が、じり……じり……と下がる。歯を食いしばっても、後退は止まらない。
(動かん……こいつ、全然動かん……!)
呼吸が詰まりかける。咄嗟に組みを解き、顔面へ右ストレート。流れるように腹、脇腹へと渾身の連打を叩き込む。
だが、堂島は微動だにしない。拳が沈まない。衝撃がすべて跳ね返ってくる。
「っ……!」
堂島の右腕が振られる。かすっただけで、間柴の頬が裂けた。
(避けても、脳が揺れる……!)
汗が額から滴り、手のひらがじっとりと湿る。逃げ出したいという本能をねじ伏せ、間柴は低く構えた。ラグビー仕込みの一点突破。
地を蹴り、全身の筋力を一点に集め――ぶちかます。
渾身のタックルが、堂島の腹を完璧に捉えた。鈍い衝撃が骨を伝い、間柴の肩が深く沈んだ。
「…………」
堂島は、動かなかった。踏み込んだ間柴のほうが、逆に跳ね返されそうになる。
「は……?」
理解できなかった。今の一撃は、“誰にでも効く”はずだった。だがこの男は、ただ立っていた。
「おわったか?」
堂島の声は、乾いていた。
――壁じゃない。こいつは、“受けきる”ために作られた獣だ。
間柴の膝が、わずかに震えた。
(――勝てるビジョンが、どこにもない)




