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巨体

戦闘が始まってから、まだ十分足らず。

準備が功を奏した。地の利、奇襲、そして陣形。数では倍近い闇天狗を相手に、京志一家は互角以上に渡り合っている。


「あっちの方で煙幕が見えたで。江藤のやつ、早速つかったみたいやな」


不敵に笑う春也。だが、間柴は視線を正面から外さない。


「よそ見してる場合やない……みたいやぞ」


唸るエンジン音とともに、闇天狗の単車が群れをなして突っ込んでくる。


「ええか? せーのでいくぞ」

「せーの!」


電柱から飛び出した間柴の木刀が空気を引き裂き、最前の単車に乗った男の胸元を正確に撃ち抜いた。

男はなす術なく単車ごと滑り、アスファルトを削って沈黙する。混乱に乗じて、間柴と春也が敵の群れへ突っ込み、次々と単車を蹴り倒していく。


「おらぁ! よう来たなお前ら!」


その刹那。


「おい――」


春也が振り返った瞬間、視界が巨大な拳で埋まった。


「ぐっ……!」


春也の体が浮き、地面を転がる。


「ハルヤー!!」

 

普段は寡黙な間柴が、喉を引き裂くような声をあげた。春也は鼻血を拭い、にやりと笑った。


「やろぉ……。おぅおぅ、きやがったぜ。厄介そうなやつがよぉ」


間柴は春也に駆け寄ったが、視線は一点を射抜いていた。


堂島。鍛え上げられた筋肉に浮き出た刺青。鋼のような腕、そして異様なまでの圧力。


「間柴……お前より、でけぇんじゃねぇの……?」


「春也、まだ肋骨痛むんやろ。休んどけ。俺がやる」


「……こいつのサイズ見たら、内心そうしてくれへんかなっ思っとったとこや」


春也は苦笑し、鼻を擦ると敵兵たちを睨みつけた。


「おぅ雑魚ども! 京志一家の金狼とは俺のことやぁ! 闇天狗の看板でぎっくり腰かぁ? せやったら老人ホーム帰れやァ!」


挑発しながら離脱していく春也。

その背を見送った間柴の前に、堂島が立つ。

距離は五歩。互いの呼吸が届く距離。間柴が見上げる。


「誰かを見上げたんは……久しぶりや」

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