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血環 ー大阪・西成、裏社会と少年たちー  作者: 京田 学
三章 西成公道百鬼夜走
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自立

――小野原の拳が、春也の顔面を無慈悲に歪ませた。拳が重いだけでなく春也の体が、もう限界だった。視界が滲む。肩がもう上がらない。

小野原は余裕の笑みを浮かべ、春也の胸元を掴む――


「早い引退やったのぉ」


拳を引き、鳩尾に全体重を乗せた拳を打ち込もうとした、その時――


「やめぇ」


春也の前に割って入った男の腕が、その拳を受け止めていた。――竜。 


「なんや……ずっと後ろで震えとったおぼっちゃま君やないか」


小野原が嘲笑うが、竜の瞳は狂気とも、覚悟ともつかぬ炎で揺れている。


「ほんまにええんか? これ、猛さんへの反逆やぞ」


竜の肩が跳ねた。震えは一瞬で熱に変わり、その瞳がどろりと濁った絶望を焼き尽くしていく。握りしめた拳から、骨の軋む音が漏れた。


「……上等や。昔からアイツの言う通りにして、残ったんはトラウマと悪夢だけや。やっとわかった――今、こいつらみたいに立たんかったら、俺の人生、ずっと負けっぱなしなんじゃ!」


竜の拳が、小野原の顔面を正面から撃ち抜く。小野原はのけぞりながらも口の端を吊り上げて笑う。


「ええやん……ほんま、ええで……!」


春也は、放心した目で二人を見つめながら、ゆっくりと膝をつく。遠くでサイレンがかすかに鳴り響いているような気がした。

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