乱戦
「次、誰が行く?」
時間が止まったような沈黙の中、間柴が低く問いかけた。
「……行かんわけにいかんやろ。“一番”を名乗る覚悟があるんやったらな」
春也が前を睨んで言い返す。
沈黙の中、小野原が顔を上げた。真っ直ぐ、春也を射抜くように睨む。
「……おい、金髪ぅ」
春也が応じる。
「なんや、金髪」
空気が鋭く裂ける。誰も声を出せない。
「お前、やっぱ金髪似合ってへんわ。黒ぉ染めたるわ」
「ハァ? だったらこっちは、全身“赤”で染めたろかぁ!!!」
春也が小さく息をつき、後ろに声を投げた。
「竜! 間柴! こいつは俺がやるで」
力強い踏み込み一発、距離が消える。
金髪vs金髪。もう挑発じゃ終わらない、殺気混じりの〝舐め合い〟
春也はジャブで探る。小野原は一歩も退かない。拳と拳がぶつかり合うたびに、火花が散るような衝撃が走る。両者、ゼロ距離。
小野原が指で鼻をなぞった。
春也がその仕草を見て、皮肉な笑みを浮かべる。
「あん時のあれ、ええ音鳴ったなぁ」
小野原の目が、血走った。
「鼻の骨、ズレたままや。医者に戻せ言われたけど……わざと直してへん。お前に折られた“そのまま”にしといた」
春也が鼻を鳴らす。
「変態やんけ……」
「今から、このツケ、利子つけて返してもらうで、“金髪”」
春也がニヤリと笑う。
「利子ぃ? ほんなら“赤字”にしとくか。“鼻血”でな」
春也が左のフェイントから右ストレートを叩き込む。しかし小野原はそれを腕でブロックし、同時に強烈な膝蹴りを春也の脇腹へねじ込んだ。
「っぐぅ……!」
肋骨の軋む感触に顔を歪めながらも、春也は退かない。逆に小野原の襟首を掴んで引き寄せ、自らの額を相手の鼻頭へ叩きつけた。硬質な音とともに小野原の首が仰け反り、鮮血が夜の闇に舞う。
「……ははは……それやそれ。ボクサーやろ、お前? ボクサーがチョーパンかいぃ!」
鼻血を手の甲で拭いながら、小野原は狂気を孕んだ笑みを浮かべた。
「今度はもう途中で終わらせへんで……“金髪”」
――全員が二人に注視する中、アスファルトを金属製の空き缶が激しく弾け、転がる音が鳴り響いた。
音の方向に一斉に視線が集まる。
蹴り飛ばしたのは、闇天狗特別遊撃隊副長・近藤。
「おいお前らぁぁぁ! 観戦しにきたんちゃうぞぉ! ぼーっとすんなぁぁ!! ほんまのケンカ教えたれぇ!!!」
近藤の咆哮を合図に、闇天狗の連中が吠えながら突進してくる。
「……やばい、来るぞ」
江藤が息を呑む。
「もう来とる」
間柴が短く応じたその直後――雪崩のように双方がぶつかり合う。――“ゴチャマン”が始まった。




