表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
血環 ー大阪・西成、裏社会と少年たちー  作者: 京田 学
三章 西成公道百鬼夜走
47/83

乱戦

「次、誰が行く?」  


時間が止まったような沈黙の中、間柴が低く問いかけた。


「……行かんわけにいかんやろ。“一番”を名乗る覚悟があるんやったらな」 


春也が前を睨んで言い返す。  

沈黙の中、小野原が顔を上げた。真っ直ぐ、春也を射抜くように睨む。


「……おい、金髪ぅ」


春也が応じる。


「なんや、金髪」  


空気が鋭く裂ける。誰も声を出せない。


「お前、やっぱ金髪似合ってへんわ。黒ぉ染めたるわ」


「ハァ? だったらこっちは、全身“赤”で染めたろかぁ!!!」


春也が小さく息をつき、後ろに声を投げた。


「竜! 間柴! こいつは俺がやるで」


力強い踏み込み一発、距離が消える。

金髪vs金髪。もう挑発じゃ終わらない、殺気混じりの〝舐め合い〟

春也はジャブで探る。小野原は一歩も退かない。拳と拳がぶつかり合うたびに、火花が散るような衝撃が走る。両者、ゼロ距離。  

小野原が指で鼻をなぞった。

春也がその仕草を見て、皮肉な笑みを浮かべる。


「あん時のあれ、ええ音鳴ったなぁ」


小野原の目が、血走った。


「鼻の骨、ズレたままや。医者に戻せ言われたけど……わざと直してへん。お前に折られた“そのまま”にしといた」  


春也が鼻を鳴らす。


「変態やんけ……」


「今から、このツケ、利子つけて返してもらうで、“金髪”」  


春也がニヤリと笑う。


「利子ぃ? ほんなら“赤字”にしとくか。“鼻血”でな」


春也が左のフェイントから右ストレートを叩き込む。しかし小野原はそれを腕でブロックし、同時に強烈な膝蹴りを春也の脇腹へねじ込んだ。


「っぐぅ……!」


肋骨の軋む感触に顔を歪めながらも、春也は退かない。逆に小野原の襟首を掴んで引き寄せ、自らの額を相手の鼻頭へ叩きつけた。硬質な音とともに小野原の首が仰け反り、鮮血が夜の闇に舞う。


「……ははは……それやそれ。ボクサーやろ、お前? ボクサーがチョーパンかいぃ!」


鼻血を手の甲で拭いながら、小野原は狂気を孕んだ笑みを浮かべた。


「今度はもう途中で終わらせへんで……“金髪”」


――全員が二人に注視する中、アスファルトを金属製の空き缶が激しく弾け、転がる音が鳴り響いた。


音の方向に一斉に視線が集まる。

蹴り飛ばしたのは、闇天狗特別遊撃隊副長・近藤。


「おいお前らぁぁぁ! 観戦しにきたんちゃうぞぉ! ぼーっとすんなぁぁ!! ほんまのケンカ教えたれぇ!!!」  


近藤の咆哮を合図に、闇天狗の連中が吠えながら突進してくる。


「……やばい、来るぞ」  


江藤が息を呑む。


「もう来とる」  


間柴が短く応じたその直後――雪崩のように双方がぶつかり合う。――“ゴチャマン”が始まった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ