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血環 ー大阪・西成、裏社会と少年たちー  作者: 京田 学
三章 西成公道百鬼夜走
41/83

最初

福井県の外れにある、雪と潮の匂いに包まれた漁師町。三崎邦親は、そんな町のボロ長屋で生まれた。

 父は地元の定置網漁の作業員。朝四時に海へ出て、昼には酔いつぶれていた。母は地元の魚加工場で働きながら、家計を支えていた。

 家には金がなかった。冬になれば灯油代すらケチられ、家の中で息が白くなった。台所には常に煮詰まった味噌汁が鍋ごと置かれていた。新しい靴なんて一度も買ってもらったことはない。全部おさがりだった。

 漁師町の男は気性が荒いと言われるが父は更に輪をかけて荒かった。どんなことでも三崎が誰かに負けることを許さなかった。運動会で二位を取った小一の秋、帰ってきた父は三崎の頬を殴った。


「恥かかすな、一番以外は意味がないんじゃ」


 何千回聞いたか分からない。

 テストでカンニングをしたのは、小四の冬だった。九十一点。一番になれなかった。それが許せなくて、答案を修正し、「先生、間違ってます」と言って再提出した。教師は点数を修正した。クラスで一番になった。

 学校から帰宅すると母が鬼のような形相で立っていた。不正に気づいていた担任が連絡したのだ。母は激怒し、布団叩きで殴られ、物置に閉じ込められた。


「お父ちゃんに報告するからな」


 その言葉が一番怖かった。

 夜。父が帰ってきた。物置の戸が開く。殴られるのかと思いきや、父は一言だけ言った。



「それでええ」

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