表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
25/83

激昂

西成一中・裏のガレージ。春也が愛車のCBXを工具でいじり、竜はタバコを吸いながらぼんやりしていた。京志は黙って、ただサンドバッグを殴っていた。

――そのとき、鉄扉が何かにぶつかる激しい音と共に、勢いよく開け放たれた。


「……っハァ、ハァ……ッ、竜くん、た、助けて……!」


入ってきたのは青木と高松。一中の後輩、ニ年生。しばらく見ない間に、その姿はまるで“別人”。頬はこけ、目はギラギラしてて、唇が乾いて割れてる。手は震えて、息が荒い。


「お前ら……どうしたんや」


竜が立ち上がった瞬間、青木が崩れるように座り込む。


「……間柴さんが……間柴さんが俺らのせいで……ッ!」 


高松が涙を堪えながら、絞り出した。


「……ブツ……買ってた。最初は軽いやつやった。でも気づいたら、頭の中ずっと痺れてて、もう何も……食えんし、寝れんし、薬のことしか……」


青木の手が震えてる。


「今日も、また買いに行ったんす。そしたら、間柴さんが来て――『何してんねんお前ら、目ぇ覚ませ!』って……」


「怒られるって思った。でも……違った。間柴さん、俺らの腕掴んで、無理やり引き離そうとした……でも、でも……」


高松の声が潤んで途切れる。


「……間柴さん、一歩も引かんかった。でも……数が多すぎて……めちゃくちゃやった。それでも最後まで俺らのこと……」


青木が泣き崩れた。


「俺らのせいや……間柴さん、病院運ばれて……なんで俺ら……こんなことに――」


肉を打つ重い音が響いた。気づいた時には、青木の顔面に竜の拳がめり込んでいた。


「は――がッ……ッ!!」

 

青木の体が横に吹っ飛ぶ。口から血が吹き出した。


「ア”ァ”ッ!  何、泣いとんねんボケェ!!!!」


今度は高松の胸ぐらを掴んで、壁に叩きつける。


「間柴に庇ってもらった? 意識ない? かわいそう? ――フザけんなや……お前ら、何をしとってん! 何で“買う側”におってん! なんでそのまま逃げてんねん!!」


高松の鼻腔へ、容赦のない膝蹴りが突き刺さる。軟骨の砕ける感触と共に、赤黒い液体が飛び散った。


「 “守ってくれた”ことに感謝して泣いとるんちゃうやろな? お前らがやったことは、間柴の命を削らせたってことや!!」 


竜の眼は完全にイッていた。青木が床に這いながら、血を吐きつつ泣きながら謝る。


「すんません……すんません……」


拳は止まらない。春也が叫んだ。


「竜!! やめろッ!! 殺す気か!!」


「――殺す気やボケがァァ!! 何もわかってへんクソガキが、“簡単にブツに手ぇ出して”……死にたがっとんのはこいつらやァァアアアアアア!!」

 

京志が、静かに立ち上がり竜の肩に手をおいた。


「竜……、痛みで変わるやつなんかおらん……」


竜が振り向く。静寂。

春也があっけに取られたように京志を見ている。

やがて竜の声が、空気を切り裂いた。



「――間柴が何守ったか、よぉ考えろ。お前ら、死ぬ気で薬抜いてこい。無理やったら俺が殺したる」

 

青木と高松は顔を腫らして、涙と鼻血と唾液でぐちゃぐちゃになりながら、ただ黙って頷いた。


「これ武市って金髪アフロの奴からです……」


そう言って高松が間柴の血で染まったバンダナを竜に差し出した。


竜はそれを黙って受け取り走って飛び出して行った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ