これから
勇者パーティーを脱退する旨の書類はすぐに書けた。抜ける冒険者パーティーの名前と、自分の名前を書けばいいだけだからだ。
「さて。これでニキは本当に勇者パーティーから抜けたわけだが……良かったのか? 今ならまだ無かったことにできるんだぞ?」
「大丈夫ですよ。サナなら僕がいなくても平気ですし」
「それはない」
「え?」
「ったく、自覚のねぇヤツだ……。頭はいいくせに……。まぁお前さんに何を言っても無駄か」
「なんだかものすごく馬鹿にされてません?」
「馬鹿にはしてねぇが、呆れ果ててはいるな」
「なぜ?」
「自分の重要さをまるで理解していない、そういうところがだよ」
「う~ん?」
僕のどこが重要なんだろう? 魔法の実力は勇者パーティーの魔法使い・リッラちゃんの足元にも及ばないし。貴重なスキルだという鑑定眼も、みんなそれなりに物を見る目が肥えてきたのでほとんど意味がない。
ちなみに鑑定眼を使えば罠の場所や毒の有無も分かるのだけど……そういうのこそ必要ないんだよね。だって『勇者』であるサラは尋常じゃない直感を持っていて全部回避できるし。
なんとも役に立たない鑑定眼。
そのうえ自分の身を守れるかどうかも怪しい程度の戦闘力なのだから、やはりパーティーのお荷物になるという判断は間違っていないはずだ。そんな僕のどこが重要なのだろう?
「いっそ感心するほどの鈍さだが……まぁそれはいつものことか。しっかし、もったいねぇじゃねぇか。このまま勇者パーティーに所属していれば、後々は救世の英雄だ。一生食うに困らねぇし、どこに行ってもチヤホヤされるんだぜ?」
「自分の実力で世界の平和を達成したのなら嬉しいのでしょうけど……僕の場合はただサラたちの後に付いていくだけですからね。むしろ心苦しいだけだと思います」
「ったく、あの嬢ちゃんにはもったいないほど良い男だ。……住むところは変わらずあの屋敷なんだろう?」
あの屋敷とは、勇者パーティー共同で借りている中古物件のことだ。
「はい。サラからは冒険後のお出迎えを頼まれましたので。そのまま住み続けることになると思います」
「そうだよな。慌てて新居を探しても失敗するだけだ。二人が末永く一緒に暮らすんだからじっくり選ばないとな。サラなら金を持っているし新築という手もあるか」
「?」
新居? 新築? パーティーハウスを新しくするという話があるのかな? 冒険者ギルドは冒険者向けに住居の斡旋もしているので勇者パーティーの誰かから相談されていても不思議じゃない。
でも、今の屋敷は中古だけど状態はいいからまだまだ使えそうなんだけど。
「まぁ、新居については俺からもいいところを探しておいてやる。……あとは新しい就職先だな。どこか当てはあるのか? 最近は『主夫』って手もあるらしいが」
新居についての疑問は解消されないまま。どうやらこのまま失職後の相談に乗ってくれるらしい。
でも、さすがに主夫は無理じゃないかな? こんな僕と好き好んで結婚して、しかも養ってくれる女性がいるとは思えないもの。
というわけで、主夫は無理。堅実に再就職を目指すしかないよね。




