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村人Aとヤンデレ勇者(♀)  作者: 九條葉月


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クズぅ

 クズぅ

 僕が軽く混乱していると、セリーナ様が詳細を語ってくれた。


「わたくしの友人の婚約者は自分勝手な男でして。実家に権力がある友人ではなく、知名度はありながらも身分の低い勇者様を婚約者にしようと画策しているのです」


 わー、サナがとんでもなく面倒くさいことに巻き込まれてる……。


 つまり、『友人』(セリーナ様)の婚約者である第一王子は、セリーナ様の実家である公爵家の影響力を嫌ってサナを狙っていると。


 で、そんな状況なのに第一王子は男爵令嬢と恋に落ちたと。


 第一王子にとって、



・セリーナ様 → 婚約を破棄したい


・サナ → 代わりに婚約したい


・男爵令嬢 → 真実の愛



 って感じなのだと思う。うーん、クズぅ……。


「えーっと、ご友人の話ですよね?」


 もう一度確認しておく僕だった。


「えぇ、わたくしの友人の話です」


 なぜか自信満々下なセリーナ様だった。たぶん「上手くごまかせていますわ!」と考えているのだと思う。


「話を纏めますと、そのご友人の婚約者が男爵令嬢に落とされた。しかも他の男性まで……。それは魔導具やスキルが原因じゃないかと考えていると?」


「そうなりますわね」


「でも……単純に、その男爵令嬢が魅力的だという可能性は?」


 あのセリーナ様なら逆上はしないだろうと判断し、ぶっちゃけた話をする僕だった。


「いえ、あり得ませんわ。――あの男、胸の大きな女性が好きですので」


「……胸?」


「えぇ。夜会などでもまず女性の胸を見て、胸の大きさで対応を変えるクズですので。それに対してあの男爵令嬢は慎ましい胸ですから、最初は興味がなかったはずなのです」


 えーっと、これ、僕はどんな顔をして聞いていればいいのかな?


 ちなみにセリーナ様の胸は――止そう。世の中には口にしてはいけないこともある。


 そんなセリーナ様は自説を自信満々に演説(?)してくれた。


「その他の男性陣も、女性の好みは男爵令嬢から外れていたはずなのです。だというのに次々に男爵令嬢に落とされて……これはそのような魔導具やスキルを使っているに違いありませんわ!」 


「あ、はい」


「ですので! こう、自動で相手が好む見た目に変わったり! 洗脳したり魅了したりできるスキルだったり! そういうのを使って男性を次々に落としているのです! おそらくは!」


「あ、はい」


 そんなものあるの? というのが正直な感想だ。


「そうですね……。まず、相手が好む姿に変わる魔導具が存在するとして。それですとセ――貴女もその男爵令嬢に好感情を抱いてもいいはずですが」


「いえ、あり得ませんわ。あんな軽薄な女性」


「あ、そうですか。では違いますね。その他の可能性ですと、洗脳や魅了は人間の精神に深く作用しますから、魔導具で行うのはかなり難しいと思います」


「なるほど、そんなものですか」


「そんなものです。……スキルの場合、貴族令嬢は7歳になったとき教会でスキルの鑑定をするのですから、その時点で露見するのでは?」


 僕が所見を述べると、セリーナ様はアゴ先に指を添えてしばらく悩んでいた。


「……よく考えてみればそうですわね。さすがは『賢者様』ですわ」


「けんじゃ?」


「いえ。感謝いたしますわニキ様。また相談に上がるかもしれませんが、その時はよろしくお願いいたします」


 ことり、とカウンターに二枚目の金貨を置くセリーナ様だった。いやいや相談料にしては高すぎですけど?


 止めようとした僕だけど、セリーナ様はさっさと店から出て行ってしまった。


 どうしよう? あとで返した方がいいのかな?


 でも、明らかに正体を隠しての相談だったからなぁ。全然隠せてはいなかったとはいえ。しかも内容が第一王子の浮気だから下手に口にはできないし。


「……師匠、どうします?」


 カウンターの奥。隠れるようにこちらの様子をうかがっていた師匠に確認する僕。一緒に引き継ぎ作業をしていたのに、『貴族令嬢』が入ってきたと分かった途端に身を隠しちゃったんだよね。


「もらっておけ。ああいうのは口止め料も兼ねているものじゃからな。これで黙っていれば常連になってくれるじゃろう」


「あぁ、そういうものですか。それにしても高すぎだと思いますが……」


「第一王子の浮気話なのだから、そんなものじゃろう」


「……魔導具についての質問なのですから、師匠が出てきてくれても良かったのでは?」


「はん、貴族相手にちゃんとやれるか見守っておったのよ。ここはもうお前の店になるのじゃから、いつまでも儂を頼ってどうする?」


「……実際のところ、貴族相手が面倒くさかっただけでは?」


「はっ、弟子を鍛えただけじゃよ」


 悪びれる様子もなく鼻を鳴らす師匠だった。




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