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村人Aとヤンデレ勇者(♀)  作者: 九條葉月


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貴族令嬢


 


「おー、アリサさん格好いいなぁ」


 第一王子率いる騎士団が出陣することになり。僕も王都大通りの閲兵式パレードを見学していると、馬上にアリサさんを見つけたのだった。


 いつもの軽装鎧ではない、戦争用総金属鎧(フルプレート)

 普段は付き合いやすいお姉さんなのだけど、改めて見るとやっぱり格好いい騎士さんなんだよね。サナによると『くーるびゅーてぃー』というらしい。


 ひしめく見学客。街を埋め尽くす歓声や、馬の蹄の音。僕も大きく手を振って「アリサさーん、頑張ってくださーい!」と声を掛けてみたけれど……まぁ、気づかれるはずがないか。


「――――っ!」


 お?

 アリサさんが『ぐりんっ』という勢いで僕を見た。いや自意識過剰すぎか。こんなに見学客がいるのに僕を見つけられるはずがないものね。


「―――! ――――――――――――! ――――――――! ―――――――――――――――――――――――――! ――――――――――! ―――――――――――――――――――――――――! ――――――――! ――――――――――――――――――――! ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――!」


 アリサさんがブンブンと手を振って何かを叫んでいた。もちろんここからだと内容は分からないけど、きっと観衆に向けて決意の大演説をしているのだと思う。格好いいなぁ。


 アリサさんはその場で馬を止めて手を振り続けていたけれど、騎士団長っぽい人にゲンコツされ、渋々といった様子で城門に向かっていった。偉い騎士様なのに庶民向けの対応(ファンサービス)を欠かさないだなんてさすがだなぁ。


 これからアリサさんたちは『土のデザイア』が治めていた領地を攻めるそうだ。


 サナたちは騎士団とは別行動。他の四天王の領地近くを小突いて、援軍を出せないよう注意を引く役割みたい。


 正直、サナと騎士団を一緒に突っ込ませた方が確実性は上がるのだけど……今回の作戦は『第一王子に武勲を』というのが目的だからね。サナが全部やってしまっては作戦の意味がなくなってしまうのだと思う。


 それが分かっているのか、サナもやる気はなさそうだった。あの様子だと本当に小突くだけで、四天王の首自体は狙わないみたい。


「まぁ、サナもアリサさんも強いから大丈夫かな?」


 そんなことを考えながら僕はお店に戻り、師匠と一緒に商品の整理を再開した。在庫管理も終わったし、そろそろ師匠も隠居して僕にお店を任せてくれるつもりみたい。


 いよいよだなーっと僕がそわそわししていると、


「――失礼いたします。お店、開いているでしょうか?」


 ずいぶんと丁寧な口調と共に店の扉が開かれた。


 僕が視線を向けると、そこにいたのは旅装上衣(ローブ)に身を包んだ女性だった。

 いやフードを目深に被っているし、全身はローブで覆われているから顔や体格は見えないのだけど。声質から女性だろうと察したのだ。


 この店は古物の買い取りもしているので、怪しげなお客さんが『いわく』ありげな品物を持ち込むことも多い。明らかに盗品ぽかったり、いかにも呪われていそうだったり、没落気味の貴族が金策をしようとしたり……。


 そう、師匠がランクA鑑定眼(アプレイゼル)持ちなのは有名なので、このお店には貴族も結構来るのだ。そのためかお店の床面積も結構広め。……雑多な商品で埋もれていたのでそんな感じはしなかったのだけど。


 そして今日の来客もまた貴族みたいだった。

 旅装上衣(ローブ)とはいえ、生地は鑑定するまでもなく上等なもの。しかも傷や汚れも皆無。靴は高品質な編み上げブーツ。さらには先ほどの丁寧な口調と、ローブの端から見える指先の美しさ。庶民ではあり得ないほど凜とした立ち姿とくれば――


(高位貴族のご令嬢ってところかな?)


 下級や中級貴族のご令嬢だと平民に対する嫌悪感がにじみ出ているのだけどね。こういう『上品さ』は高位貴族ならではだと思う。


 鑑定すれば色々と読み取れるけど、初対面の人にそんなことはしない。


 ま、とにかく。お金のやり取りをする意志があるなら貴族でも貧民でも平等にというのがこの店の方針(スタンス)だ。


「いらっしゃいませー。ガラン堂へようこそ。購入ですか? 買い取りですか?」


「いえ……その、ニキ様(・・・)にご相談したいことが」


 僕?


 僕の名前を知っている貴族令嬢というと……かなりいると思う。なにせ勇者パーティーの一員だったし、王城のパーティーに招かれたことも一度や二度ではないからだ。


 えーっと、僕の名前を知っている貴族令嬢で、あのくらいの身長で、こんな感じの声音というと……。


 僕が該当者を絞り込んでいると、ご令嬢がカウンターに近づき、金貨を一枚置いた。


「魔導具やスキルについて、教えていただきたいのです」


「あ、はい?」

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