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村人Aとヤンデレ勇者(♀)  作者: 九條葉月


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魔石


「ねー、ニキも行こうよ」


 冒険者ギルドでの会議終了後、お店にやって来たサナがカウンターに右頬をつけ、僕の顔を見上げてきた。可愛い。


 なんでも王城に行って国王陛下に四天王討伐を報告。その後は豪勢な晩餐会になるそうだ。まぁ連続で二人も倒せばね。国としてもそれくらいしなきゃいけないのだと思う。


 で、サナは僕も一緒に行こうと誘ってくれているのだけど。


「ダメだよ、僕はもう勇者パーティーを抜けるって申請書を出しちゃったんだから」


 いや正確に言えば冒険者ギルドマスターのデーニッツさんに提出しただけなので、国の方での承認はまだかもしれないけど。そういう問題じゃないよね。力不足でパーティーを抜け、四天王討伐に参加しなかった僕が、四天王討伐の報告やら晩餐会に参加するわけにはいかないのだ。


「ニキは真面目すぎ。でもそういうところも素敵」


 なぜか自慢げな顔をするサナだった。ありがとう?


「ま、とにかく。せっかく豪華な料理を食べられるのだから楽しんできてよ」


「豪華な料理になんて興味ない。ニキの手料理の方が1000万倍マシ」


 いやお城の料理と比べられてもなぁ、と僕が苦笑していると……サナの顔が真っ青になった。


「いや『マシ』なんて言い方はなかったよねごめんねニキの手料理は素晴らしいよこの世界で一番だよほんとは独り占めしたいくらいなんだけどそれだとニキが悲しむから我慢しているんだそれに比べてこの世界の料理はダメだよね味付けは雑だし種類も少ないし材料の質も悪いしなのにニキは凄いよね調味料も材料もお城のものより劣るはずなのにレベルの違う料理を作ってくれるしそもそもゼロに何を掛けてもゼロだよねニキの料理には私への愛情も込められているし込められているよね気のせいじゃないよね私の勘違いじゃないよね私としたことが失言しちゃったごめんねごめんねごめんねごめん――」


 あれアリサさんが乗り移った?


「んー、よく分からないけど……お城の料理が口に合わないなら、帰って来てから何か食べる?」


「っ! うん! 食べる! お城では何も口にしない!」


「いやぁそういうわけにもいかないのでは?」


 僕もサナのオマケで何度か参加したことがあるけど、なにも食べないとそれはそれで気を使われちゃうんだよね。それだけならまだマシで『勇者ご一行の満足する料理を作れないとは……料理人はクビですな』とかいう話になっちゃうかもしれないし。貴族ってそういうところあるよね。


「ん、分かった。付き合い程度に食べてくる」


 嫌そうな顔で頷くサナだった。昔は『付き合い』なんてものは理解しなかったのに、成長しているんだなぁ。ちょっと感動。だけど少し心配。


「無茶しちゃダメだからね?」


 人付き合いが苦手なら帰って来てもいいのだし。


 あ、でもそれなら『無茶しちゃ』じゃなくて『無理しちゃ』の方が良かったかなぁ、と僕が考えていると、


「――ん。分かった。無茶はしない」


 こくんと頷くサナだった。まぁ分かってくれたならいいか。


「あ、そうだ。サナ、いいナイフが手に入ったのだけど、どう?」


 この前強盗から獲得したナイフをカウンターに置く僕。サナには聖剣があるから武器としては必要ないけれど、ちょっとしたことに使うのなら便利だと思う。


「ん。私はいっぱいあるから平気。むしろニキが持っているべき」


「僕が?」


「うん。私もアリサもいないとき、そのナイフで身を守るべき。ニキなら上級の魔物くらい()れるはず」


「それはさすがに買いかぶりすぎだなぁ」


 サナってどうも僕のことを過剰評価しちゃっているよね。実際は中級でも厳しいはずだ。


「――そうだ。魔物と言えば」


 ことり、っと。サナがカウンターの上に何かを置いた。


 丸い、丸い、真紅の宝石。一見するとルビーのようにも見える。……ん? ルビー?


「それは?」


四天王(グラント)を倒したら、出てきた」


「出てきた?」


「ん。心臓付近から」


「心臓付近から?」


 そんなの、『魔石』みたいじゃない?


 魔石。魔力を内包し、様々な魔法現象を起こす石。魔物を倒すと心臓付近から獲得することができ、討伐の証明として使われたり素材として買い取られたりするものだ。


 でも、魔石は魔物から出てくるもので、魔族から出てきた例はないはず。少なくとも僕は見たことがない。


 一応鑑定してみると――鑑定できなかった。まるで、師匠の預かり物である『あれ』みたいに。


 あれもまた、ルビーのような外見をしている。形はこれほど丸くはないし、大きさは比べものにならないけれど。


「……土のデザイアを倒したときも、出てきたの?」


「分からない。聖剣で死体も残らず消滅したし」


「あ、そうだったね」


「……ニキが持っていて」


「僕が?」


「ん。なんかそっちの方が(・・・・・・)良い気がする(・・・・・・)


「…………」


 四天王から出てきたのなら、ギルドか国に提出するべき。そんなことはサナでも分かっているはず。なのに、僕が持っているべきだとサナの『勘』が判断した。


 今まで何度も危機を乗り越えるのに役立ってきた、サナの勘。


 僕は、常識とか使命感よりはそちらを重視するべきと経験則で知っている。


「じゃあ、僕が預かっておくね」


「ん。よろしくね、ニキ」




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