アリサ
「――ニキ君!」
バーン! っと開かれたお店のドア。
僕が視線を向けると、そこにいたのは騎士甲冑に身を包んだ黒髪美人さんだった。『甲冑』とはいえ重要部分だけを防御した簡易のものだけどね。
彼女の名前はアリサさん。王国の騎士団に所属する女性騎士さんだ。外見年齢は20代の前半くらいかな。
いかにも厳格そうな凜々しい顔つき。
騎士として活動しているはずなのに、なお白さを失わない肌。
東洋の出身らしく腰には両刃剣ではなく湾曲刀を差している。
そんなアリサさんは無表情のままこちらに近づいて来た。
「ニキ君。強盗が入ったというのは本当かい? 何という命知らずだ。神にも等しいニキ君の店を襲うだなんて……。まったくサナは何をしているのか。アイツがいるからこそボクも安心して職務に当たれるというのに。ニキ君。サナがいなくて不安だよね? だが安心して欲しい。強盗共は必ずやボクが捕まえて四肢を切断しニキ君に敵対したことを後悔させながら死に至らしめよう」
顔色一つ変えず一気にまくし立てるアリサさんだった。最後にとんでもないことを口走ったような?
まぁ戦場経験が豊富な騎士さんだからね。少しくらい過激な発想をしてもしょうがないか。
「アリサさん、大丈夫です。もう強盗は捕まえましたから」
ロープで縛られた二人組を指差す僕。だというのに、アリサさんはそちらに目を向けることなく僕を凝視していた。
「さすがはニキ君だ。ふがいないボクやサナがいなくてもちゃんと結果を残しているんだね。キミが勇者パーティーを抜けたと聞いたときは不安でしょうがなかったけど杞憂だったようだ。そして勇者パーティーを抜けると決断するほどに悩んでいたのにそれを察することができなかったボクを許して欲しい。キミが悩んでいるときは朝まで寄り添いキミが困っているときは騎士を辞め国を捨ててでも駆けつけると決めていたのに」
アリサさんって僕の前だと早口になるよね。普段はどっちかというと無口な方なのに。
まぁ、騎士の代表として何度も勇者パーティーに同行してくれたし、気を許してくれているのだと思う。
なにせ他のメンバーは勇者であるサナに、厳ついガルスさん、この国一番の魔法使いとして有名なリッラちゃんに聖女のアイリスさんだし。きっと平々凡々とした僕が一番話しかけやすかったのだ。
「ニキ君が勇者パーティーを辞めたと耳にしたとき、本当はすぐに駆けつけたかったのだけど大規模な作戦準備中でね。今日やっと『犯人の捕縛』という大義名分を得てここまで来ることができたんだ。本当にすまない。これほど遅くなってしまって。こうなったらこれからは王国の騎士ではなくニキ君の騎士として生きていこう。ボクにはサナほどの力はないけれどニキ君を想う気持ちだけなら負けないよ。いざというときはボクが盾になってでもキミを守るから。大丈夫ボクはサナの『おこぼれ』で十分だからね」
おこぼれって、なに?
……あぁ、魔王討伐の手柄ってことかな? アリサさんだったらサナに負けない活躍ができるだろうに、謙虚な人だなぁ。
しかし、店が強盗に入られただけで騎士を辞めようとするだなんて。心配性だなぁアリサさんは。
もう勇者パーティーを抜けた僕なんてこの国や騎士団からすれば重要度が下がっているだろうに。それでもこうして気に掛けてくれるのだから優しい人だよね。
「アリサさん、そんなに心配しなくても大丈夫です。僕だって自分の身くらい自分で守れますからね」
「……ふっ、いつの間にか頼りがいのある男になっていたようだね。そうそう、キミは誰よりも強いものね。ボクやサナなんかよりもずっと……」
評価してくれるのは嬉しいけど、さすがに二人とは比べものにならないと思うなぁ。いやほんとに。さっきは奇襲をしたから強盗も倒せたけど、たぶん真正面から普通に戦ったら勝ち目はないし。
アリサさんの評価に苦笑していると、
「……魔性だな」
「魔性じゃな……」
なにやら「うげぇ」みたいな声を上げるデーニッツさんと師匠だった。ましょー?
※ちなみに戦闘での強さで言うと
サナ>上級魔族・アリサ>勇者パーティーメンバー>上級魔物
>中級魔族>中級魔物・ニキ>下級魔族・高ランク冒険者
>下級魔物・冒険者>一般人
って感じです。(相性などによって変動)




