捕縛
明らかに過剰防衛な魔導具を設置している師匠にドン引きしていると、
「――おう、ニキ。ずいぶんと派手にやったじゃないか」
お店に入ってきたのは冒険者ギルドのギルドマスター・デーニッツさんだ。
「僕じゃないですよ。防犯用の魔導具です」
「お? じゃあコイツは強盗か?」
「はい。金を出せと脅されまして」
「なんだなんだ、強盗するならもっと儲かってる店にすればいいものを」
「言い方ぁ」
「ははは、すまんすまん。悪気はねぇんだがな」
がっはっはっと笑ったデーニッツさんが空間収納からロープを取り出し、強盗二人を縛り上げた。
手際がいいなーっと感心していると、デーニッツさんが眉間に皺を寄せた。
「なんだこいつら、よく見たらうちの冒険者じゃねぇか」
「そうなんですか?」
「おう。とはいえこっちに流れてきたばかりの新参者だが……なるほど、だからニキにケンカを売るような自殺行為を……」
「自殺行為って。人を危険人物みたいに言わないでもらえません?」
と、僕としては正当な抗議をしたのだけど。
「お前さんはどこからどう見ても危険人物だろうが。元勇者パーティーとして戦闘経験豊富だし、冒険者にしては珍しい攻撃魔法の使い手。しかもすぐに噛みつく狂犬もついているしな」
「きょーけん?」
僕は犬なんて飼っていないんだけどなぁ?
首をかしげていると、デーニッツさんが懐から小さな丸い物体を取り出した。連絡用の魔導具だ。かなりお高いはずだけど、ギルマスという職業柄ああいうものも必要なんだろうねきっと。
「騎士団を呼ぶが、構わないよな?」
「はい、お願いします。冒険者ならデーニッツさんが対応してくれた方がいいでしょうし」
「まったく、せっかくの休憩時間が台無しだぜ……。おっと、すまんかったなニキ。うちのバカ共が迷惑を掛けて」
「いえいえ、デーニッツさんが悪いわけじゃないですから。それに冒険者は自己責任ですし」
「そう言ってもらえると助かるな。……重ね重ね、ニキが勇者パーティーから抜けたのが惜しいぜ。こうも話が通じる上に、サナを抑えられる人間がなぁ……。人類の損失と言っても過言じゃないだろう」
迷惑を掛けたばかりとあってお世辞を口にするデーニッツさんだった。こういう気遣いが組織の長には必要なのだろうね。
デーニッツさんが騎士団への連絡を終えたのを見計らって声を掛ける。
「ところでデーニッツさんはなぜここに? 何か捜し物ですか?」
「いや、ニキが店を買ったと聞いてな。様子を見に来たんだよ。……あとはちょっと恨み言をな」
「恨み言?」
なんだか穏やかじゃないなーっと考えていると、デーニッツさんが師匠に視線を移した。
「おい爺さん。ニキには冒険者ギルドが先に粉を掛けていたんだぜ? かっ攫うのは違うじゃねぇか」
粉を掛けるって。かっ攫うって。
対する師匠はどこか自慢げに鼻を鳴らした。
「はっ、戯言を。師匠が弟子に店を譲るのは当然じゃろうが。こっちが何年掛けてニキを育てたと思っておる? むしろそっちが後からかっ攫おうとしたんじゃろうが」
「チッ、それを言われると弱いなぁ。……ニキ、店の経営が苦しくなったら借金をする前に言えよ? ギルドで雇ってやるからな」
「いやだから、言い方ぁ」
「ははは、すまんすまん」
デーニッツさんが悪気なく笑っていると、
「――ニキ君!」
バーン! っと、店の扉が勢いよく開かれた。




