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村人Aとヤンデレ勇者(♀)  作者: 九條葉月


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19/55

引き継ぎ


「サナたちは大丈夫かなぁ?」


 勇者パーティーはあのあとすぐ四天王襲撃に旅立ってしまった。転移魔法を多用した強襲だそうだ。


 転移魔法は便利だと思われがちだけど、そこまで万能じゃない。いくつか制限があるので『一気に王都から四天王の城へ』とはできないのだ。


 制限のうちの一つは、転移可能人数。

 魔法使いのリッラちゃんが集団転移できるのは5人までなので、勇者パーティーの人員も定員が5人になっている。(ちなみに5人もの集団転移ができるのはリッラちゃん他数名のみだ)


 もう一つの制限は、移動距離。最大でも50キロルなので、遠くに行きたい場合はまず50キロル先にまで転移して、リッラちゃんの魔力と精神力の回復を待ち、また50キロル転移して――というのを繰り返さないといけない。


 まぁそれでも馬車や早馬を使うより遥かに早く移動することができるのだけどね。


 今の勇者パーティーは僕が抜けたのでリッラちゃんにも余裕がある。

 でも、なんだか疲れ果てた様子なのであまり無茶もしないはず。

 順調に討伐しても、帰ってくるのは数日後かなぁと思う僕だった。


 ……ちなみにサナの場合は身体強化(ミュスクル)を使うと転移魔法(休息込み)並みの速度で移動することもできる。けれど、勇者を戦闘前に消耗させてもしょうがないのでリッラちゃんの転移魔法か、馬車での移動を行うようにしていのだ。急ぎの場合は転移魔法、そうでないならリッラちゃんの魔力消費を防ぐために馬車って感じで。


「――なんじゃ? あの小娘はまた出かけたのか?」


 と、僕と一緒にお店の引き継ぎ作業をしていた師匠がどこか呆れたような声を上げた。


「そうですよー。サナは勇者として頑張っているのです」


「まったく。あの小娘が『勇者』だと本気で思っておるのか……」


「え?」


 サナほど立派な勇者はそういないと思うけどなぁ? 子供の頃から世界を救うために旅に出て、泣き言も漏らさずに戦い続けて。ついに四天王の一人を倒してしまったのだから。僕みたいなお荷物もいなくなったことだし、これからは万全の体制で魔王討伐に当たれるはず。


「まったく鈍いというか、人を見る目がないというか、バカというか……」


「いくら師匠でも、もうちょっと言い方ありません……?」


 まぁ師匠の口が悪いのはいつものことか。普段からこんな感じだけど、鑑定の目は確かだし、このように引き継ぎも丁寧にやってくれているのでこちらとしても文句はない。


「しかし、よく分からないのが多いですねー」


 今は引き継ぎ作業の一環、商品の棚卸し中だ。自分の店になるのだから商品の在庫や価値は把握しておかないとだからね。


 普通のお店なら在庫の把握も簡単なのだけど、この店はとにかく乱雑にとてもお高い商品をどこにでも放置――いや、置いてあるからね。在庫の把握だけでも一苦労なのだ。


 僕はランクAの鑑定眼(アプレイゼル)持ちなので視るだけで大体の価値は分かる。でも、ときどき僕でもよく分からない商品があるんだよね。


 そんな、僕でも価値が分からない赤い宝石を手に取ってみる。見た目としてはルビーに似ているけれど、カッティングもされていない楕円形だ。それによく見ると中心部がゆっくりと渦巻いている気がする。


 手のひらからはみ出るほど大きいので、もし本当のルビーなら凄い価値があると思う。……しかし、ただのルビーなら僕の鑑定眼(アプレイゼル)で鑑定できるはずだしなぁ。そもそもルビーの中身は渦巻かない。


「師匠ー。この宝石って何ですか? ルビーじゃないですよね?」


「あー? ……あぁ、それか。儂にも分からん」


「分からんって。そんなものを売っているんですか?」


 というか師匠って鑑定眼(アプレイゼル)のランクこそ僕と同じAだけど、経験値がまるで違うのでかなりレベル差があるし、師匠が測定していないだけでもうSランクに到達している可能性がある。そんな師匠が鑑定できないこの宝石って……なに?


「昔なじみから預かっていて欲しいと頼まれたものじゃからな。もう何十年も前のことじゃ」


「いやいや」


 それは相手が忘れているのでは?


 と、指摘しようとした僕だけど……やめた。何十年も前の話だと、下手をすれば相手が死んでいるかもしれないからだ。


 なので、当たり障りのないことを口にする僕。


「人からの預かり物を店に放置しているってどうなんです?」


「では、どこに置いておけと? 儂の家はここじゃぞ?」


「あー、それもそうですね」


 王都のお店はだいたいが一階店舗・二階自宅となっているのだ。それなら家賃を抑えられるし、泥棒が入ってきてもすぐ分かるからね。


 ちなみにこのお店は僕が買ったけど、師匠は変わらず二階に住んでいる。まぁ僕としても困ったときに助言を求められるので助かるよね。僕自体は勇者パーティーのパーティーハウスに住んでいるし。


 僕が納得していると、師匠がどこかイタズラっぽく口端を吊り上げた。


「それに、ここなら泥棒が来ても撃退できるからのぉ」


「…………」


 そういえば、防犯用にトラップが仕掛けてあるんだっけ? 入り口ドアの上あたりに。攻撃用の魔導具が。


 これから僕の店になるのだし、発動条件とか聞いておかないとだなぁ。



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