閑話 四天王奇襲・2
「ん。妄想じゃない。事実を確認していただけ」
「ほんとかなー? まぁいいや。サンドウィッチ作ってきたよ。サナの分と、みんなの分もね」
「サンドウィッチ!」
わぁい! と全力で喜びを表現しながらバスケットを受け取る私だった。顔はたぶん無表情のままだけど。たとえ表情が動かなくてもニキには喜んでいると分かってもらえるから別にいいのだ。
「ニキ、これ、食べていいの!?」
「え? ダメだよ?」
「えぇ!?」
なんで!? なんで食べちゃダメなのに持ってきたの!? ――あ! まさか犬プレイ!? 『待て』をしている私を楽しむとかそういう系!? ちょっと理解しがたいけどニキが望むなら頑張るよ私!
「もー、これは保存食として持ってきたんだから、出発してから食べなきゃダメだよ?」
「……ほぞんしょく?」
「うん。空間収納に入れておけば長持ちするし。またすぐ冒険に出るんでしょ?」
ニキの言葉に即座に反応した男がいた。ギルマスだ。
「お、おう! そうだニキ! サナたちはすぐに出発して四天王の帰り道を襲わなきゃならねぇ!」
「やっぱりそうですよね。だと思ってサンドウィッチの他にもいろいろと保存食を作ったり食材を買い込んだりしておきました。――サナの空間収納に入れておくね?」
ニキの言葉とほぼ同時、彼の空間収納から私の空間収納に食料などが移動した感覚があった。
理屈上、空間収納は本人の同意があれば接続でき、それぞれの中に入っているものを自由に取り出したり、受け渡したりすることができるのだ。
ただし、それは財産の共有に他ならないので普通なら夫婦でもなければやらないし、たとえ夫婦であってもやっている人間は少ない。この世界では夫婦であろうとも財産は別々に管理するのが常識だし、そもそも二人とも空間収納を持っていることがほとんどないからだ。
つまり、空間収納を常時繋げてある私とニキはもはや夫婦。運命の相手。フォーエバー☆エターナル☆カップルなのだ。
……いや、ちょっと待って?
ニキが準備万端でここまで来たということは……今夜の夕食は? 豪勢なお食事は?
私の考えなど(恋愛方面以外では)お見通しであるニキは朗らかに笑ってみせた。
「帰って来たら腕によりを掛けて美味しい料理を作るからね」
「…………」
つまり、今日は作る気はなし、と。
なんということだ。
四天王討伐のお祝いがお預けなのは、まだいい。
でも。
でも。
このまま二人目の四天王を倒したら、お祝いの料理も同時に済まされてしまうのでは? 誕生日が12月だとクリスマスと一緒に祝われちゃうのと同じ感じで。
「……ジーザス」
やはりこの世に神も仏もない。私は改めて確信したのだった。
「じーざす?」
この世界にない言葉を聞いて首をかしげるニキだった。可愛い。
「――ニキ!」
「うん?」
「別枠で!」
「べつわく? ……あぁ、そういうこと? 大丈夫、四天王討伐のお祝いは、それぞれ別でやろう」
「さすがニキ!」
やっぱり彼には私の考えなどお見通しなのだ! 神! 仏! 創造主! なんでこれで私の恋心に気づいてくれないんだろう!?
私がニキを称える踊りを踊ろうとしていると――ガルスが私を小脇に抱えた。
「よし! サナの気が変わらないうちに出発するぞ!」
「ニキ君の説得はどうするんです!?」
「後回しよ! そんなことしていたらまたサナちゃんの気が変わるかもしれないわ!」
ドタドタと冒険者ギルドを出て行くガルス、リッラ、アイリスだった。もちろん私も一緒に。
「サナ、みんな、頑張ってねー。あと、ちゃんとギルドに報告するんだよー?」
ニキからの熱烈な応援を一身に受け、私たちは四天王を奇襲するため旅立ったのだった。




