閑話 四天王奇襲
世界の危機と、ニキとのデート。
どちらかを選べと言われれば、私は迷わずニキとのデートを選ぶ。
でも、世界が滅んでしまうとニキも死んでしまう可能性が高いので、私は仕方なく世界を救うのだ。ニキがもうちょっと頑丈で、世界が滅んだあとも問題なく生き抜けるなら迷うこともないのに。残念無念。でもそんなところも可愛いよね。
ともかく、ニキとの幸せな家族計画を実現するために私たちは一刻も早く四天王を倒し、魔王を討伐しなければならない。――の、だけれども。
「……今すぐ出発しろと?」
私がギルマスを睨み付けると、彼は冷や汗を吹き出しながらも頷いてみせた。
ここで怖がって引いてくれれば話が早いのに、やりづらい人物だ。
ちなみにニキは私がどれだけ威圧しようが変わらない笑顔で隣にいてくれる。素敵だ。心強い。やはり運命の相手。結婚式は王都の大聖堂で挙げようか。それとも海の見える小さな教会という手もありか……。故郷の村は絶対なし。
私が輝かしい未来を空想していると、それを邪魔するかのようにギルマスが現実に戻してきた。
「お、おう。当然だ。四天王が『陣地』から出てきた今が好機。魔王城から陣地に帰る前に襲撃できれば、攻略の手間が省けるからな」
「むぅ」
四天王はそれぞれ領地の中に陣地とか城と呼ばれる拠点を持っている。土のデザイアの城は大したことはなかったけど、彼は四天王の中でも最弱。他の四天王の陣地はもっと手こずるかもしれない。
それを考えると、四天王が陣地から出てきて魔王城に向かったという今はチャンスなのだ。それも分かる。
でも、私は承知できない。
なぜなら、今日の夕食はニキがお祝いの料理を作ってくれるからだ。
しかもニキが『豪勢』とまで言うのだから、きっとものすごい料理に違いない。私はこっちの世界の料理になんて何の期待もしていないけど、ニキの手料理なら話は別だ。
――ニキの手料理を食べずに四天王討伐などできるだろうか? いや、できない。
四天王なんていつでも倒せる。
でも、四天王討伐記念の料理は、今しか食べられないのだ。
というわけで。
私が断ろうとしていると――ギルドの受付嬢・エリーが駆け込んできた。
「ぎ、ギルマス! ニキ君が! ニキ君が来てくれました!」
まるで地獄に救世主が現れたみたいな顔をするエリーだった。
うん分かる。ニキはまさしく救世主だからね。この世界に微塵も希望を抱けなかった私を救ってくれた救世主。心優しいニキは私以外にも多くの人を救っているに違いない。それはちょっと寂しいけどしょうがないニキはそういう人だからいやニキはもう人なんていう区分で語っていい人じゃない救世主いや神いやいや創造主いやいやいやその程度の連中と同列に語ることすらおこがましいニキとはニキでありそれ以上でも以下でもなくもはや世界そのものいいや世界よりずっとずっと貴い存在で――
「――あ、サナ。また何か妄想しているの? みんなを困らせちゃダメだよ?」
ニキがエリーに続いて部屋に入ってきた。




