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村人Aとヤンデレ勇者(♀)  作者: 九條葉月


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師匠


 使命に燃えるサナは堂々とした足取りで冒険者ギルドへと向かった。あまりに気合いが入っているせいか道端に生えている雑草が次々に枯れていくね。


 まぁ、サナなら大丈夫。たとえ魔王と四天王が同時に襲いかかってきても勝てるはずだ。


 サナに対して絶対の信頼を抱きつつ、僕は師匠の店へと向かった。


 ――ガラン堂。


 古ぼけた看板にはそんな店名が書いてあった。『ガラン』という言葉にどういう意味が込められているかはよく分からない。


 王都では珍しくもないレンガ造りの二階建てで、親爺さんたちのお店と基本的な構造は変わらない。ただ、こっちのお店の方が明らかに年月が経っているけれど。


 軋む木製のドアを開けながら、僕は店内に向けて声を張り上げた。


「こんにちは~。師匠、いますか?」


 相変わらず、ホコリっぽい店内だった。


 店の中央奥にあるのがカウンターなのだけど、お客さんが商品を置けるような空きはなく、商品である魔導具やら呪いの品やらが雑多に積み上げられていた。いかにも古そうな本に、奇妙な形をした透明ガラス、黒いモヤが立ちこめている怪しげな仮面などなど……。


 お店の左右の壁には天井まで届くほどの棚が設置されていて、これまた雑多なものが詰め込まれ、ホコリを被っていた。光り輝く四角い板や、真っ赤に輝く宝石、何かが入っていそうな膨らみがある革袋などなど……。


 鑑定してみれば価値があるものだというのは分かるのだけど、そうでないとガラクタにしか見えない物ばかりが並んでいる。


 結論とすれば、やはり怪しい店だった。価値あるものを扱うにしても、もうちょっと分かりやすいものを揃えればいいのに……。お客さんが入っているところをほとんど見たことがないけど、ちゃんと経営は成り立っているのかな?


「師匠ー? ししょー?」


 何度も呼びかけると、カウンターの奥、物が積み上げられた先から面倒くさそうに手が伸ばされた。


「あ、いたいた」


 カウンターに近づき、背伸びして向こう側を覗き込むと、いかにも偏屈そうな初老男性が難しそうな顔で魔導具を解体していた。


 すっかり頭頂部が薄くなり、色も白くなってしまった髪。高いかぎ鼻にかけられた、弦の曲がった丸眼鏡。背中も丸まっているけれどこれは加齢のせいというより魔導具を分解している最中だからだと思う。


「師匠、いるなら返事くらいしてくださいよ」


 僕が不満を漏らすと、師匠はこちらに目も向けることなく鼻を鳴らした。


「ハッ、返事をしないくらいで帰るような根性無しに、うちの商品は売れぬ。欲しいものがあるなら何日も通い詰めるくらいの根性を見せるんじゃな」


「そんなこと言っていると、万引きされちゃいますよ?」


「心配いらん。そんな不届き者は店を出るときに消し炭になるのでな」


「なんかさらっととんでもない発言が……」


 思わず振り返り、店の出入り口を確認。――鑑定眼(アプレイゼル)を起動すると、たしかにドア枠のすぐ上あたりに攻撃用の魔導具が設置してあった。うわぁ、容赦ない……。


 鑑定眼(アプレイゼル)持ちなら分かるだろうけど、それ以外の人間ならまず気づかないはず。というか鑑定眼(アプレイゼル)持ちも常時スキルを発動しているわけじゃないし、大抵の人間はトラップに引っかかっちゃうと思う。


 ……いや、サナなら直感で回避できるし、万が一トラップが発動しても防御結界で無傷だろうけどね。うーん改めて考えても僕が守る必要性が皆無……。


「んで? 今日は何の用じゃ? またあの娘っ子が変なものを見つけたのか?」


 娘っ子とはサナのことだ。師匠からすれば世界を救うべき勇者であっても『小娘』でしかないらしい。


 サナは勘が鋭いからよく変なものを見つけちゃうんだよね。大抵のものは僕がその場で鑑定し、危険なものならすぐに破壊してもらうのだけど。ときどき判断に困るものが出るので、そういうときは師匠の判断を仰ぐのだ。


「いえ、実はですね……勇者パーティーを抜けることになりまして。師匠には報告しておいた方がいいな、とですね」


「……なんじゃと?」


 やっと魔導具から視線を外し、僕の方を見る師匠。その顔には「まーた面倒くさいことになりそうじゃな」と書いてある。


「勇者パーティーを、抜ける? 誰が?」


「僕が」


「……世界の終わりか」


 やれやれとため息をつく師匠だった。


「終わりませんって。大丈夫、サナがちゃんと世界を救ってくれますから」


「そんなことを純粋に信じているのなんて、お前くらいのものじゃろうて」


「?」


 みんなサナを信じてないの? ……あぁ、サナって実力は凄いけど、見た目はか弱そうな美少女にしか見えないものね。ちょっと不安視されてもしょうがないのか。


「大丈夫ですよ。サナならきっと何とかしてくれます。師匠はサナの戦っている場面を見たことないかもしれませんが、サナってとっても強いんですよ?」


「そういうことではないというに……ま、おぬしに何を言っても無駄かのぉ。頭の良いバカはこれだから……」


 深く深くため息をつく師匠だった。師匠って自分の中で勝手に結論を出しちゃうんだよね。




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