ころす
「――サナぁ! やっと見つけたぞ!」
聞き慣れた怒声が背後から響いてきた。
振り向くと、そこにいたのは勇者パーティー勇者抜き。盾役のガルスさんと、魔法使いのリッラちゃん、そして聖女のアイリスさんだった。
…………。
……みんな、なんかボロボロじゃない? 服装はもちろんのこと、なんだか疲れ果てた顔をしている。まるで四天王を倒したあとも休まず働き続けたかのような……。
僕が首をかしげていると、ガルスさんが一歩前に出た。
「サナ! 情報が入った! 魔王城に残りの四天王が集結しているらしい! 詳しい話を聞くために冒険者ギルドに行くぞ! 後始末をしなかったんだから休息も十分だろう!?」
おぉ、なんだか大変そうなことになっているね。魔王軍は四天王の一角がやられたから緊急会議をしているのかな? 完全に、僕の実力ではお荷物の案件だ。でも勇者であるサナなら何とかできると僕は確信している。
勇者たるサナは僕から手を離し、ガルスさんたちに向けて一歩踏み出した。なんという威風堂々とした姿だろう。
「――三人とも、私とニキのデートを邪魔するつもり?」
おや?
なんだかサナからものすごい威圧感が発せられているような? そりゃあもうこの前の冒険者ギルドマスターを超えるほどの、殺気とでも表現したくなるような。あまりの凄みに猫は逃げ、犬が吼え、鳥たちが気絶して落っこちてくるほどだ。
「ぐっ!?」
「ひえ!?」
「くぅ!?」
女性陣の盾になりつつ片膝を突くガルスさんと、そんな彼の背中にしがみついて震えるリッラちゃんとアイリスさんだった。
まったくもー。
「サナ。仲間を怖がらせちゃダメだって言っているじゃないか」
「……うん。そうだった」
途端に威圧感を萎ませるサナだった。うんうん、やっぱりサナは話せば分かってくれる、素直で良い子だよね。
サナは落ち着いたようなので、ガルスさんたちに視線を向ける。
「ガルスさん、四天王の一人『土のデザイア』を倒したんですって?」
「お、おう、そうなるな。死体は見つからなかったが、リッラによると転移魔法などを使った痕跡もないし、生命反応もなかった。おそらく聖剣の力をもろに受けて消し飛んだんだろう。近隣領主たちもデザイアは死んだものとして行動するそうだ」
「お疲れ様です! 凄いですね、パーティーメンバーが一人抜けたばかりなのにもう結果を残すだなんて! やっぱり僕が抜けたのは正解だったみたいで安心しました」
「い、いや、むしろニキの大切さを再認識したというかだな……」
即座に謙遜し、僕を気遣うガルスさんだった。優しい人だなぁ。僕がいないおかげでこんなにも順調に四天王を討伐できたのに。
「サナは確かに強いですけど、サナが実力を発揮できるのはガルスさん、リッラちゃん、アイリスさんが支えてくれているからですよ。一緒に冒険していた僕にはよく分かっています。――サナがいくら強くてもダメなんです。三人が一緒に戦ってくれないと」
と、素直な本音を口にすると――ガルスさんたちが、泣き出した。『どぱぁ』という効果音を付けたくなるような大号泣だ。
「くぅ、人の優しさが身にしみるぜ……」
「これが……癒やし……」
「偉大なる神はここにあり……」
えーっと? だいぶお疲れのようで? ゆっくり休んでもらって――いや、冒険者ギルドで会議をしなきゃいけないんだっけ?
三人はかなり疲労しているし、ここはサナが代表して話を聞いた方がいいよね。
「サナは早く冒険者ギルドに向かって。師匠のところには僕一人で行ってくるよ」
「ガーン!?」
なぜか涙目になるサナだった。ちなみに彼女はこういうときによく『ガーン!?』という擬音を使う。独特だよね。
「で、デート中なんだよ!? ニキとの! デート!」
「? うん、そうだね。でも緊急の会議らしいし?」
「ニキは私とデートしたくないの!?」
「え? そんなことないよ?」
「なら!」
「でもほら、なんか四天王が集まって大変なんでしょう? サナは勇者なんだから、早く向かわないと」
「……向かわないと、ダメ?」
「もちろん」
「…………。……四天王、殺す。魔王、殺す」
勇者としての使命感に燃えるサナだった。頼りになるなぁ。




