大作RPGに割とある過去編㉔
「おじゃましています。斎藤です」
俺が一声掛けると、一度こちらの方を見るが、その後興味が無いという様子で、何も言わず明後日の方を向いてしまった。
「ごめんなさい。お母さん朝からずっとあんな様子で、現実をまだ受け入れられていないようなんです。
お兄ちゃんのこと本当に大切にしていたから。だからその分余計に辛いんだと思います。
今はそっとしてあげて下さい」
美咲ちゃんが俺の耳元でそっと説明してくれる。
確かに考えてみればまだ遺体を発見してからそんなに時間が経っていないし、これが普通の反応なのだろう。
そう考えると美咲ちゃんの心の芯の強さに改めて驚かされる。
もう少し美咲ちゃんの様子を観察しようと視線を美咲ちゃんの顔に戻すと、美咲ちゃんははにかみながら、
「斎藤さん、こちらを見てもらえますか?」
と声を掛けて、裏面になっている白い封筒を手渡してくれた。
一瞬心の芯がヒュンと冷える感覚がした。
それは遺書なんじゃないか? という疑惑が心の隅に生まれたからだ。
見たくない、と思う気持ちがあると同時に、見て現実を受け入れなければならない、という使命感が湧きあがってくる。
俺は美咲ちゃんからその封筒を受け取り、表面をゆっくりと向けた。
「遺書 先行く僕を許して下さい」
封筒の表面には田村君の字でこう書いてあった。
いつもの田村君の字だ。細く繊細な性格を映し出しているような綺麗な堂々とした字で悲しくなる。
俺は震える手で封筒の中から手紙を取り出して、ゆっくりと読み始めた。




