大作RPGに割とある過去編㉓
扉を開けて少し顔を出したのは、前に田村君の家に遊びに来た時に1回だけ顔を見たことのある田村君の妹さんだった。
確か中学2年生で名前を美咲ちゃんと言ったと覚えていた。
きっとどこかから人影が見えて、なかなかインターフォンが鳴らないので様子を見たのだろう。
「ああ……斎藤さんですね」
美咲ちゃんは少し驚いた様子を見せたが、すぐに状況を理解した様子で言葉を続けた。
「兄のことを知って訪ねて来てくれたのですね。わざわざどうもありがとうございます。
今は両親も私もあまり相手を出来る状態ではないかもしれませんが、どうぞ中にお入り下さい。
斎藤さんにお伝えしたいこともありましたので、こちらからいずれ連絡することになっていたと思います。タイミングが良いと言っても良いのかもしれません」
美咲ちゃんは中学生とは思えない程丁寧な言葉使いで、大変な時なのにしっかりと対応してくれて感心した。
同時に、伝えたいことがあるという言葉を聞いて、どんなことなのだろう、こういう状況だからきっとあまり良くないことなのだろうと想像して気分が沈んでしまう。
「おじゃまします」
俺は小さな声で挨拶をし、おずおずと玄関をくぐる。家の中は前と変わらず、さっぱりとした綺麗な作りで、掃除が行き届いているのが分かる。
前に来た時と同じなので、前と同じように田村君が奥の部屋から顔を出して迎えてくれるような錯覚を覚えてしまう。
少し感傷に浸っていると、美咲ちゃんが奥の部屋に招いてくれた。
奥のリビングには田村君のお母さんがいた。
前に会った時より明らかに元気が無く、焦点の定まらない目で、生気を欠いた雰囲気で佇んでいた。




