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英雄の薬⑩

恥ずかしい気持ちもあったけれど、思いを更に熱く語ってしまう。


「そうなの。


私もギルティワールドっていうゲームはやったことないけど、聞いたことくらいはあるかな。史上最大最高のオンラインゲームだったっけ。


確か社会現象になった、って言ってる人もいるくらい有名なのよね」


俺は自分が褒められているようかのように嬉しい気持ちになって顔を赤らめた。


「そこで俺は、俺の人生の全てを掛けるくらい情熱と時間を費やして、最強のキャラを作り上げたんです。


単に遊ぶためだけじゃなくて、のめり込むことで救われたし、だからこそ恩返しの意味も込めて続けてきました。


その気持ちはこれからも絶対変わりません。


ギルティワールドに出会う前の俺の人生なんて、本当につまらない物でどん底だったから。


社会的にはニートっていう底辺に見えるかもしれないけど、俺にとってはそれまでよりずっと良い人生になってたんです」


真剣に自分の思の丈を打ち明ける。


朝霧さんは初対面の人のはずなのに、話したくなるオーラがあるから不思議だ。


「それまでの人生がどん底だったってどういうこと?


それっていつくらいのこと?


あなたの年から言ったらまだ学生の時のことよねぇ?


中学か高校の時に何かあったの?」


朝霧さんは俺の真剣な様子応えるように真剣に俺の目を見て質問をしてくれる。


俺ももう恥ずかしがることもなくまっすぐに、朝霧さんの目を見つめ返して質問に答える。


「俺がひきこもりになったのは、あれは、もう5年くらい前の話。俺が高校生の時にあった話。


ある出来事があってひきこもったんです。


あんまり思い出したくないけど、今のこの状況を突破できるきっかけになるなら聞いてもらえますか?」


「もちろん。他の人には秘密にしておくから教えて」


「分かりました。少し長い話になりますけどお願いします」


勇気が欲しい。


ほんの少しだけ。


こんな時ギルティワールドなら「英雄の薬」を飲めば、勇気のパラメーターが一時的に増えるんだけど、リアルにはそんな物無い。


だけど、勇気を出さなければ。


英雄にはなれなくてもいい。


少しだけ前に踏み出す勇気を。


ゴクリ、と英雄の薬をのみ込んだつもりで一息ついて、俺は朝霧さんにあの事件の話を始めた。

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