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英雄の薬⑥

一通り聞き終わると、やはり朝霧さんも店長と同じように、何かを考えているような真剣な面持ちで運転に集中して無言になった。 


俺も喋ることが無くなると、喋りすぎた恥ずかしさでもじもじしてしまい、他のことを話す気にもなれず無口になってしまう。


しばらくの無言の空間の中、車から発されるエンジン音だけがBGMのように流れ続けた。


「あ、そこ左です」


やがて曲がり角が来て、俺は指示を出す。


「曲がったら少し行った所に俺の家はあります。


もうすぐです。


話を聞いてくれてどうもありがとうございました。話せただけですっとしました」


俺がお礼を言って降りる準備を始めると、朝霧さんはちらりとこちらを見てから


「一真君、この後何か用事あるの?


もし良かったらなんだけど、もう少し話がしたいから、喫茶店かどこかで話せないかな?」


と新しい提案をしてくれた。


さっきまでニートだった俺に用事なんてあるわけがない。あるわけがないのだけれどすぐに返事ができない。


朝霧さんは急かすでもなく、車を路肩に止めて俺が返事をするまで待ってくれた。


「大丈夫です。俺ももっと聞いてもらいたいし、お願いします」


そう返事をすると、朝霧さんはどこか安心した様子でハンドルを握り直して、俺の家とは違う方向へと運転を再開した。

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