きれいなニートの条件⑩
店から2,3歩出た所で強い力で後ろから肩を掴まれて、バランスを崩して前向きにずっこけてしまった。
痛い。
かなり痛い。
こんなに痛いの何年ぶりだろう。
頬やひざに刺すような痛みを感じて、うめき声がもれてしまう。
「君ねぇ、ちょっと怪しすぎだよ。
おまけに店の商品もあんなにしてしまって。とりあえず店の事務所まで来てもらうよ」
頭上から非情な声がかけられる。
が、こっちは痛みでそれどころではない。
「うぅ……は、ぁぁ、ぃ」
うめきながらかろうじて返事をし、痛くて目に涙が溜まっていることに気づく。
情けない。
ひょっとしたらこの涙は、痛みじゃなくて情けさで出ている涙なのだろうか。
「まぁ、とりあえず水でも飲んで落ち着きなさい」
店長らしい人に手を借りて、なんとか連れてこられたのは小ぎれいな4畳ほどのスペースの事務所だった。
あるものといったらパソコンとイスとソファだけの、本当に簡素な休憩スペースといった感じの所だ。
借りてきた肩を離れて、ソファで満身創痍に深く座りうなだれていると、先ほどの男性がペットボトルの天然水を手渡してくれた。
封が開いていないから、もしかしたら売り物なのかもしれない。
「気にせずに飲んでいいよ。僕のせいで怪我させてしまった所もあるから。それは僕のおごりってことで」
俺の気持ちを見透かしたかのように説明だ。
「僕は柳、この店の店長をしている者だ」
右手で自分の左胸にあるネームプレートを指さしながら説明してくれる。
そこには確かに『店長 柳 邦道』と書いてあった。




