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最高なのはいつだって九月最後の水曜日  作者: 園村マリノ
第二幕

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13/21

06 出逢いはアフタヌーンティー①

 東京……行きたいっっ!


 時々なんだけど、東京へ行きたいという強い衝動に駆られる時があるんだよね。このループ中にも池袋や渋谷などに行ってるけど、今回ほど強い衝動じゃなかった。


 じゃあ、東京の何処で具体的に何をしたいのかというと……うーん、特にない、かな。ああ、時間はあるのに何か勿体無い。


 どうせなら、せめて美味しいものでも食べて記憶に残そう。普段なら食べにいかないような……あ、例えばバイキングとか?


 それとも……アフタヌーンティーとか。




 ゆりかもめ──正式名称何だっけ──で汐留(しおどめ)駅までやって来たのは、一一時四〇分過ぎだった。


 駅から歩いて一分かそこらで、庶民のわたしには本来無縁な高級ホテル〈コンデッゾ東京〉に到着。横に広くて平べったい感じの建物の中に入って、従業員の挨拶に小さく頭を下げてから、エレベーターで三〇階へ。


 そういえば、汐留自体初めて来たなぁ。この近くに大きなテレビ局があるんだよね。他にも大きな公園の……えっと何だっけ……ナントカ(きゅう)カントカ庭園、とか。後で行ってみるかな。


 お目当ての階に到着して、エレベーターから出てちょっと進むと左側にロビー、そして右側にバー&ラウンジ〈サンゼロ〉。


 え、泊まるのかって?


 ううん、わたしが用があるのは、右の方。


「おはようございます」


 バー&ラウンジの出入口まで来ると、丁度こっちに気付いた女性従業員が挨拶してくれた。


「おはようございます。あの、一二時から一名でアフタヌーンティーを予約した草薙です」


 まだ家にいた時、スマホで東京のアフタヌーンティーが楽しめる店を色々と検索した。何店かの候補は、そのほとんどが事前予約制だったから一旦諦めかけたんだけど、〈サンゼロ〉は空きがあれば当日予約も可能との事だったので、駄目元で試してみたらOKだったってわけ。


 女性従業員の予約確認の後、店内に通されて四人掛けの席へ。ちょっと離れた窓からはホテル周辺の景色──主にビルだけど──がそれなりに見える。窓側席だったらもっと細かい所まで眺められたんだろうけど、まあ仕方ない。あ、ちゃんと名前を覚えてない庭園もちょっと見えるぞ。


 丸いテーブルの上にはナイフにフォーク、小さいスプーン、おしぼり、皿の上に折り畳まれたナプキン。


 わあ、何かちょっとずつ緊張してきたかも。ドレスコードはないっていうから、ニットワンピースとショートブーツで来たけど、今更ながら場違いだったりしない?


 さりげなく周りを見回す。女性のグループかカップルばかりで、一人で来てるのはわたしくらい。あ、あのカップルの男性の方、Tシャツにジーンズだ。んじゃOKだよね。


 少し待つと、背の高い男性従業員がメニューブックを持ってきて説明してくれた。一〇種類以上の紅茶に、コーヒーやジュースは全ておかわり自由! へへへ……片っ端から飲んでやろうじゃないのさ。


 最初にホテルオリジナルのホットティーを頼んでから男性従業員が去っていくと、入れ替わりで小柄な女性従業員が、男性客一人をわたしの右隣の席に案内した。


 男性客はわたしと同じくらいか、少し歳上かな? 猫顔で、銀縁のオーバル型眼鏡を掛けていて、短い茶髪にはベージュのメッシュ。黒のジャケットセットアップと革靴という服装は、ちょっと細身な体型にマッチしている。


 男性が一人でアフタヌーンティーって、何か珍しい気がする。いや決して変ってわけじゃないけど、一緒に来られる彼女がいそうに見えるんだよなぁ。


 あ、お隣さんと目が合った。そっと目を逸らす。失礼しましたー……。


 お、さっきの男性従業員がやって来た。わたしのテーブルに、ホットティー、長方形の皿に乗った小さなプレーンスコーン四つ、スコーン用のジャムとクリームを置く。説明によると、ホットティーはセイロンと緑茶をブレンドしたもので、ジャムはイチジク味だそうだ。


「ごゆっくりお楽しみください」


 はーい! 


 小さなスコーンを一つ手に取り、とりあえず食べやすいサイズに割る。あ、何か意外と柔らかいかも? それからイチジクジャムとクリームにつけて……いただきまーす!


 んむむ……ああ、やっぱり柔らかい! 市販のスコーンってちょっと硬めだから、自分で買って食べる程好きってわけじゃなかったんだよね、実は。でもこれは食べやすい!


 ああ、どんどん食が進む。このスコーンなら毎日でも食べたい。まだメインが来ていないというのにこの満足感よ。ジャムはストロベリー派なんだけど、イチジクも気に入った。


 ホットティーも一口。おお、セイロンより緑茶の味が強くて渋い。これ、甘いおやつに合うよね……そう、これから来るスイーツたちに!


 ああ、早く来ないかなぁ。スコーンを食べてお腹が膨れるどころか、どんどん食欲が増してきている。朝ご飯少なめにしておいて正解だったな。


 斜め前の窓側席の、わたしより先に来ていたカップルの方を盗み見る。二人共、お喋りに夢中で大して食べていない。あのピンクっぽいような薄い紫色っぽいような丸いやつ可愛いな。小さな透明のカップに入ってるあれは何だろう──……


「お待たせ致しました」


 最初に応対してくれた女性従業員がやって来た……カラフルなあれこれが乗った、三段のケーキスタンドを持って!


「ん待ってましたっっ!」


 あ、いけない。つい心の声が口から……。


 超にこやかな女性従業員。カップルがこっちに振り向く。うわあ、お隣さんもこっち見てるし! ちょっと笑ってるし!


 恥ずかしい……へへっ、こっちも笑って誤魔化そう。


 まあ、日付変わればわたし以外は覚えていないんだけどね。

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