タイトル未定2026/02/06 07:58
ノエルの光が剣の形を成した瞬間、地下室全体の空気が震えた。
まるで長い眠りから覚めた“何か”が、ルナマリヤの決意に呼応したかのように。
お父さんはその光を見て、わずかに目を細める。
怒りでも嘲笑でもない、どこか懐かしさを含んだ表情だった。
「……それが、君の力か。」
ルナマリヤは剣を握りしめ、震える声で返す。
「これは……私が守りたいと思った人たちがくれた力よ。
あなたのためじゃない。あなたの望む未来のためでもない。」
お父さんはゆっくりと歩み寄り、魔法陣の中心に立つ。
その足元では、途切れていた紋様がルナマリヤの存在に反応し、じわりと光を帯びていく。
「ルナマリヤ。君はまだ理解していない。
私は“世界を救おうとしている”のだよ。」
「救う……? 私を殺してまで?」
「そうだ。」
お父さんの声は静かで、狂気すら感じさせないほど澄んでいた。
「この世界には、君が想像もできないほどの“災厄”が存在する。
そしてその災厄に、たった一人で立ち向かおうとしている者がいる。
私はその者を助けたい。
そのためには――君の血が必要なんだ。」
ルナマリヤは息を呑む。
その言葉は、彼女の心に深く刺さった。
「……それでも、私は死ねない。
私には……大切に思える人がいるから。」
その瞬間、ノエルの剣が強く輝き、ルナマリヤの背中を押すように風が吹いた。
《ルナマリヤ。大丈夫。君は一人じゃない。
僕はずっと、君のそばにいる。》
ルナマリヤは涙をこらえ、剣を構える。
「お父さん……私はあなたを止める。」
お父さんは静かに目を閉じ、そしてゆっくりと開いた。
その瞳は、かつて彼女が知っていた優しいものではなかった。
「ならば――証明してみせなさい。
“王の血”が、ただの少女の意地に屈しないことを。」
魔法陣が爆ぜるように光を放ち、地下室全体が震えた。
結界の向こうでは、グストアンが番人と激しく刃を交えている。
そして、ルナマリヤと“お父さん”の戦いが始まった。




