秘密-2
魔法陣の脈動が一際強くなった瞬間、空間が軋み、広間の空気が一変した。
「……来ます。」
グストアンが低く呟いたそのとき、魔法陣の中心から黒い霧が噴き上がり、空間を裂くようにして“それ”は現れた。
人の形を模してはいるが、異様に長い四肢、仮面のように無表情な顔、そして背から伸びる無数の黒い触手――それはこの契約の番人、“門の影”だった。
「……番人ですか。」
グストアンの声に緊張が走る。彼ほどの戦士が、即座に剣を抜き、構えを取る。
「ルナマリヤ様、下がってください。これは私が――」
だが番人は言葉を遮るように、触手を地に這わせ、魔法陣の縁をなぞるように走らせた。次の瞬間、魔法陣の一部が激しく発光し、空間が歪む。
「……まずい!」
グストアンが駆け出すが、間に合わなかった。番人の魔力が魔法陣を媒介にして空間を裂き、ルナマリヤとグストアンの間に黒い結界の壁が立ち上がる。
「ルナマリヤ様!」
彼が剣で結界を斬りつけるが、刃は弾かれ、火花を散らす。番人がその前に立ちはだかり、無言のまま剣を構える。
「……なるほど。私を足止めするつもりか。」
グストアンは深く息を吐き、剣を構え直す。
「ならば、貴様が崩れるまで斬り続けるまでだ。」
結界の向こう、ルナマリヤはただ一人、父と対峙していた。
「ようやく二人きりになれたな、ルナマリヤ。」
「貴方は何を望んでいるの?強大な力を手にして何がしたいの!?」
ルナマリヤはお父さんに聞いた。
「私はね気づいてしまったんだよ、この世界にはとてつもないバケモノが存在していることに、そしてそのバケモノに対したった一人で立ち向かう存在がいる事にも。
だから私はその人を助けるためにルナマリヤ君を殺す。」
「そうなのね、昔の私だったら大人しく殺されてあげてもいいと思えたかもしれないけど、今の私には大切だと思える友人がいるだから大人しく殺されるわけには行かない。」
その瞬間長らく沈黙していた“ノエル”が、微かに震えた。まるで、彼女に応えるように。
《ごめんね、ルナマリヤ。やっと君の力になれるよ!》
心の奥に直接響く声。懐かしく、温かく、そして鋭い。
「ノエル……!」
彼女の指輪が神々しい光を放ち指輪が剣の形をなした。




