少し前
時が戻りルナマリヤとグストアンはとある施設にいた...
そこはルナマリヤにとっては懐かしく思わせる思い出のある場所だった、この施設はルナマリヤを育ててくれた人物が運営している個人の施設で決して贅沢をできるような場所では無かったが当時身寄りの無かったルナマリヤはここで育てられた。
ルナマリヤを育ててくれた人はとても優しく施設にいた子たちからはお父さんと呼ばれ、本当の父親のように親しまれていた、だからルナマリヤ自身心配をかけまいと、学校での出来事は秘密にしていた。
だが今この施設はそんな、誰かの心を育んだ場所とは思えぬほど、風に晒され崩れかけた瓦礫の塊となっていた。
ルナマリヤは足を止め、崩れかけた門柱にそっと手を添えた。
指先に触れる冷たい石の感触が、遠い記憶を呼び起こす。
かつて笑い声が響いていた中庭も、今は雑草に覆われ、風が吹き抜けるだけの空間になっていた。
「ここが…ルナマリヤ様が育った場所なのですか?」とグストアンが静かに問いかける。
ルナマリヤは小さく頷きながら、目を伏せた。
「そう。私の“家”だった。だけど…もう誰も、ここにはいない。」
その言葉は、まるで風に溶けるように静かに消えていった。
彼女の胸の奥に残る温もりは、今や誰にも見えない幻となり、瓦礫の隙間にそっと眠っていた。
ルナマリヤはゆっくりと歩を進め、かつて食堂だった場所の前で立ち止まった。
扉は外れ、床には割れた食器が散乱している。
それでも、彼女の目には、あの日の夕暮れに響いていた子どもたちの笑い声が、幻のように蘇っていた。
「…変ですね」グストアンが周囲を見渡しながら呟く。
「廃墟にしては、妙に整ってる。まるで、誰かが“意図的に”壊したみたいだ。」
ルナマリヤはその言葉に、胸の奥がざらりと波打つのを感じた。
何かがおかしい。何かが、ずっとおかしかった。
けれど、それを言葉にするには、まだ記憶の靄が濃すぎた。
彼女は黙って奥へと進む。
かつて“お父さん”と呼ばれていた人物の部屋。
扉は開いていた。中は空っぽだった。




