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理想が現実になるとめんどくさい  作者: 影束ライト
 序章 平凡で平和な世界
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第7話 みんなで昼食を

 金ヶ崎のお嬢様に購買の使い方を教えてから数日が経った。

 今日も今日とて購買に向かっている。ただ今回は甘音と一緒だ。


「お前が購買とは珍しいな」


「今日はお母さんが寝坊したから。あんたはだいたいいつも購買でしょ、オススメとかある?」


「オススメか、やっぱり焼きそばパンだな」


 甘音と話しながら廊下を歩いていると、曲がり角で本を持った生徒、好本美琴と出くわした。


「あれ、司くんと辛木さん?」


「こんにちは好本さん」


 甘音と美琴はクラスこそ違うが、体育が一、二組合同なのでお互いに名前くらいは知っている仲だ。


「よう、美琴。今日は図書委員、じゃないよな?」


「うん。今から購買に行こうと思ってたの。今日寝坊してお弁当作れなかったから。司くんは?」


「俺も購買だよ」


「そっか。一緒に行ってもいいかな?私購買で買ったことないからちょっと不安で」


「もちろんいいぞ。な、甘音」


「えぇ、一緒に行きましょう」


 こうして美琴を加えて購買に向かう。


「好本さんその本は?」


「これは今日のお昼に読もうと思って持ってきたの。たまには外で読むのも良いかなって」


「本当に本が好きなのね」


 前で女子二人が話しているのを聞きながら歩いていると、不意に後ろから衝撃が襲ってくる。


「せ~んぱい!」


「うおっ!?」


 生意気な後輩が後ろから抱き着いてくる。本来であれば女子に抱き着かれて喜ぶところなんだろうが、勢いが強すぎて抱き着くというより突撃、少し痛い。


「……忍、お前は俺に恨みでもあるのか?」


「まさかまさか、先輩には好意しかありませんよ」


 そんな冗談を言う後藤忍を引っぺがす。


「あれ、忍ちゃん?」


「おや、美琴じゃないですか!」


 あれ、二人って面識あったのか?


「二人は知り合いなのか?」


「うん。お母さんの実家が忍ちゃんのお父さんの実家の近所でね、忍ちゃんとは小さい時からよく一緒に遊んでたの」


「遊ぶと言っても美琴は昔から本を読むばかりでしたけどね」


 二人は楽しそうに笑う。まさか二人にそんな繋がりがあったとは。


「あれ、後藤さん?」


「おや、辛木先輩もおられましたか」


 甘音と忍は同じ中学なので多少の面識がある。あんまり仲が良い印象は無いが。


「それで忍は何用なんだ?」


「特にこれと言った用事はありませんよ。購買に行く途中で先輩を見つけたので」


「忍ちゃんも購買なんだ、それじゃあ一緒に行こうよ」


「そうですね。いいですか先輩?」


「あぁもちろん。な、甘音」


「そうね。行く場所は同じだし」


 ということで忍が加わった。


「辛木先輩は相変わらず司先輩と一緒に居ますね」


「あんたは相変わらず出合い頭に司に抱き着くのね。もう高校生なんだからやめなさいよ」


「忍ちゃん司くんに抱き着いてるの!?」


 女三人寄れば(かしま)しいとはよく言ったものだ。事実かなり賑やかな集団となった俺たちはのんびりと歩き、購買に着いた。

 のんびりと歩いていたので購買には人が群がっている。


「やっぱり人が多いな」


「先輩のお望みならば人ごみを避けて目当ての物を手に入れてきますよ」


「後藤さん、あなた何する気なのよ?」


「先輩のお望みなら何でもしますよ」


「あはは。忍ちゃんなら本当にやりかねないね」


 美琴による忍の評価が気になるが、今はそれよりも購買だな。


「人がいなくなるまで待つしかないか」


「あら、天道さん?」


 名前を呼ばれた方を見ると、そこには焼きそばパンを両手に持った金ヶ崎が立っていた。


「よう金ヶ崎。今日は購買なのか?」


「はい。天道さんに買い方を教えてもらってからは様々なパンを買っていますの」


 どうやらお嬢様はすっかり購買にハマってしまったらしい。いやハマったのは購買と言うか買い物の方か?


「天道さんも購買ですの?」


「そうなんだが、この人の多さだからな」


 今日はいつにも増して人が多い。これは無くなってるかもな。


「司ー!そろそろ行くわよ!」


「分かった!じゃあな金ヶ崎」


「あ、天道さん……」


 ようやく人が減ってきたので購買を覗く。だが……。


「これは……」


「もうほとんど、というか全く残ってないですね」


「残ってるのはパン三つ」


 サンドイッチ、アンパン、チョコパンの三つが残っていた。だが残ったパン三つに対して俺たちは四人。


「お前らで分けてくれ。俺は昼飯抜いても大丈夫だから」


 ここは女子に譲るべきだろう。事実昼飯くらいなら抜いても平気だからな。

 購買から離れると、金ヶ崎が近づいてくる。


「あの、天道さん。よろしければわたくしの焼きそばパンをお食べになりますか?」


「金ヶ崎、いいのか?」


「はい。二つありますし、以前に助けていただいたお礼です。こんな物でよければ」


「ありがとう金ヶ崎」


 金ヶ崎から焼きそばパンを頂いた。このお嬢様は懐が広いな。


「あれ、金ヶ崎さん?」


「あら、確か同じクラスの好本さんですわね」


「うん。金ヶ崎さん、司くんと仲良かったんだね」


「えぇ、以前天道さんに助けていただきましたの」


 そうか二人は同じクラスだったな。だがこの会話から同じクラスなのに会話は初めてなんだな。


「司、買い終わったわよ。あれ、金ヶ崎さん?」


「あなたは、確か隣のクラスの方ですね。お名前は……」


「辛木甘音よ。よろしくね」


「金ヶ崎茜ですわ。こちらこそよろしくお願いします辛木さん」


 凄いな女子は仲良くなるのがあっという間だ。


「先輩、先輩」


「うわっ!?びっくりした、いきなり背後に立つなよ忍」


「それは無理です。というより先輩こそ、そろそろ慣れてください」


「それこそ無理だろ。それでなんだ?」


「あちらのベンチと机が空いていたので、みんなで昼食を取りませんか?」


「いいんじゃないか。行って来いよ」


「はい!ではみんなで食べましょう!」


 ゲームをしようと思っていたが、忍に引きずられ、みんなで昼食を取ることになった。



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