第5話 図書委員は二人きりで
新学期が始まってから一週間が経ち、委員会活動が始まった。
俺が所属している図書委員の活動は昼と放課後に図書室で本の貸し出し当番をすること。
そしてその当番は二人一組で行われる。
昼食をサクッと食べ終え、俺は図書室に向かった。中に入ると、先に今回の相方である見知った少女が座って本を読んでいる。
「よう、久しぶりだな美琴」
「あ、司くん。今年もよろしくね」
今回俺と共に当番をするのは黒髪ショートの美少女、好本美琴。去年一緒に図書委員をしたことで仲良くなった。
「今年も図書委員を選んだんだな」
「うん。やるなら慣れてる物がいいと思って。……それに司くんとも話せるし」
「え?何か言ったか?」
「ううん。何も言ってないよ」
「そうか?まぁ慣れてるって言うのは分かる。俺も同じ理由で図書委員を選んだからな」
「そっか。同じだね」
俺たちはのんびりと話をしている。それでいいのかと思うだろうが、昼放課の図書室に人など来ない。みんな友人と昼休みを楽しく過ごすからだ。
よってどれだけ駄弁っていても問題ない。
「しかし相変わらず人が来ないな」
「だね。けどそのおかげで本が読み放題だよ」
美琴はかなりの本好きだ。
美琴のおかげで色んなジャンルの本に詳しくなってしまった。
「そういえばそっちのクラスはどうだ?」
美琴は二年二組、隣のクラスにいる。
「ん~。去年とあんまり変わらないよ。私、休み時間はずっと本読んでるから。司くんは?」
「俺も同じような物だ。ずっとゲームしてるからな」
「相変わらずだね。今年は司くんと同じクラスになりたかったな~」
「それでも本は読むんだろ?」
「もちろんだよ。でも、本の話が出来るのは司くんくらいだから」
まぁ俺の周りでも本が好きな奴なんてほとんどいないからな。
「なるほどな。でも本の話をするなら図書室でもいいだろ?」
「それは、そうだけど。……本当は司くんと少しでも一緒に居たいだけなんだけどな」
「何か言ったか?」
「ううん何でもない。そろそろお昼休み終わるし、図書室閉めよっか」
「そうだな。じゃあまたな」
「うん。またね」
こうして昼休みが終わった。
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放課後。今日は昼放課に続いて放課後も図書委員の当番が入っている。
「少し早かったか、まだもう一人の当番は来てないな」
放課後は担任によって帰りのホームルームが終わる時間が変わるので図書室につくには多少の時間差がある。
「ま、どうせ誰も来ないから遅れてきても問題ないんだけどな」
昼放課もそうだが図書室に本を借りに来る生徒はほとんどいない。来るとしても勉強目的で図書室を使うくらい。本を借りたりする生徒は本当にいない。
「暇だが、さすがに図書室でゲームをするわけにもいかないからな。本でも読むか。確か美琴がオススメだって言ってた本があったよな、どれだったかな」
「せ~んぱい!」
本を探していると、突然背後から抱き着かれる。
「うわっ!?……その声、忍か」
「正解です!司先輩の可愛い後輩。後藤忍。ただいま見参しました!」
どうやら放課後の相方は黒髪ポニーテルの美少女後輩、後藤忍。
こいつの特技は音も無く近づいてくること。おかげで毎度毎度、いきなり抱き着かれて驚かされる。
「久しぶりだな忍」
「はい。お久しぶりです!」
「この高校を受けたんだな。お前ならもう少しいいとこにも行けたんじゃないか?」
「もちろん行こうと思えば行けましたよ。でも先輩はここにしかいませんから。先輩いるところに私ありです」
「何だよそれ。まぁ、また会えて嬉しいよ」
「私もすごく嬉しいです!」
忍とは中学の頃からの付き合いで、中学では共に文芸部に所属していた。
「そういえば去年はありがとな。魔導華が世話になった」
魔導華も中学では俺たちと同じく文芸部に所属している。現在では魔導華が部長をやっているらしい。
「いえいえ。魔導華ちゃんいい子ですから安心して部長を任せることが出来ました。魔導華ちゃん、私の妹になってほしいくらいです」
「そうだろう。でも魔導華はやらんぞ。俺の妹だからな」
「久しぶりに聞きました先輩のシスコン。それに相変わらず鈍いですね」
「鈍いって、何が?」
「いえいえ。これで分からないなら問題ありません。どうせ先輩恋人とかいませんよね?」
「何でそんなこと聞いてくるんだよ。いなけどさ」
そう答えると忍は笑顔で背中を叩いてくる。
「ですよね!」
「痛い痛い、あと何でそんな嬉しそうなんだよ」
「一緒に居ない間に先輩が変わっていなくて安心したんですよ!」
放課後の委員会も人が来ることは無く、ひさびさの後輩との会話を楽しんで本日の活動は終わった。