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理想が現実になるとめんどくさい  作者: 影束ライト
 序章 平凡で平和な世界
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第2話 新しいクラス

 俺と甘音は新たな教室に足を踏み入れる。

 この学校は一学年、四十人、五クラスで構成されている。

 ただクラスごとに多少の人数差がある。


 教室に入り、名簿順で与えられた席に座る。

 俺は天道、甘音は辛木ということで席はかなり離れている。

 自分の席に座り、バックからゲーム機を取り出して厳選の続きを始める。

 他の奴らは友達と同じクラスであることを喜んだり、別のクラスに居る友達のもとに遊びに行ったりとしている。

そんな中、俺は一人でひたすら厳選をする。……別に友達がいない訳じゃないから。


 ちなみに甘音はあの容姿に加えて俺と話す時のような強い口調で話すこともないので友人が多い。猫かぶりが上手いと言うか、あいつなりの処世術と言う感じだ。まぁ俺には関係ないことだが。

 俺はイヤホンを両耳に付けて音楽を流し、厳選に集中する。……よし来た最高個体!あとはこいつに栄養剤と飴を与えて、考えていた技構成に変えて―—。


「みなさんー、席に着いてください」


 いいところだったが教師が入ってきた。もうそんな時間か。


「あれ、あの人見たこと無い。新しい先生か?」


「めっちゃ美人!」


「今年のクラスは当たりだな!!」


 入ってきた教師はかなり若い女教師。しかも美人でスタイルが良い。長い黒髪と優しそうな表情。周りの男子生徒が騒ぐのも分かるほどのいわゆる当たりの教師だ。


「みなさん初めまして。今日からこの二年一組を担当する先山言美さきやまことみです。今年から教師になった新任教師ですが、精一杯頑張るので一年間よろしくお願いします!」


 そんな新任教師の先山先生の自己紹介にクラス中で拍手の嵐が巻き起こる。いいクラスだなぁ。よし、レベルMAX!


「ありがとう。みんないい子そうで先生安心だよ。それじゃあ今から新学期の全校集会です。映像だけどしっかりと見るようにね」


 最近の時代、体育館で集まらずにクラスごとに映像で集会を行う学校が増えている。この学校も例にもれず黒板に全校集会の映像が映し出される。

 だが集会なんて真面目に見る奴はほとんど居ない。俺と同じように内職をしてる奴の方が多い。


「ちなみに内職をしてる子を見つけたら問答無用で没収ですからね。ちゃんと見るように!」


 ……まぁ最初の全校集会くらい真面目に見てやっても良いだろう。

 しかしあの教師、新人とか言いながら鋭いな。いや、新人だからこそ年齢の近い俺たちのやることを見通して先手を打ったのか。

 しかたなく全校集会を見るが、体育館よりも腰が痛くならないだけで校長の長い話も、どこぞの部活の表彰も無くなるわけじゃない。

 そんなことを考えながらボーと黒板を眺めている間にいつの間にか集会が終わった。


「はい。みんなお疲れさまでした。ちゃんと見ていて偉かったですね」


 この新人教師、まるで幼稚園児でも相手にしてるような言葉遣いで褒めてくるな。周りの男子たちはかなり嬉しそうだが。


「集会が終わったので、次は自己紹介をしてもらいます。一年間同じクラスで過ごす仲間に自分のことをアピールしましょう!では出席番号順で、浅井くんからどうぞ!」


「は、はい!」


 突然の自己紹介タイム突入で立ち上がる浅井。だが勢いで立ったはいいが、何も考えていなかった浅井は立った状態で何を言おうか考えている。


 張れ浅井。そのまま時間を潰して俺の前あたりで時間切れを起こしてくれ!別に自己紹介が嫌なわけでは無いが、やらなくていいならそれに越したことは無い。

 だが俺の思惑通りにいかないのが人生。そう時間をかけず浅井は自己紹介の言葉を決めたらしく口を開く。


浅井一あさいはじめです。部活は野球部で絶賛彼女募集中です!よろしくお願いします!」


 浅井の自己紹介にパラパラと拍手がされる。なぜパラパラなのかは言うまでも無いだろう。自己紹介で彼女募集中とか言えるその強靭な精神、どこに売ってるのか知りたいものだ。

 浅井のかなり滑った自己紹介で自己紹介に対する難易度が下がり、その後のクラスメイトはすらすらと簡単な自己紹介を行う。


「辛木甘音です。部活には入っていません。みんなと仲良くしたいと思っています。一年間よろしくお願いします」


 甘音の自己紹介も無難な物だ。だがその前の誰よりも拍手の音は大きい。やはり容姿というものはどこでも影響を及ぼすな。

 甘音の後も無難な自己紹介が続き、しばらく待って俺の番だ。


「天道司です。部活は入っていません。一年間よろしくお願いします」


 俺の自己紹介に対してはまばらな拍手。他の人たちとそう変わらない。その後も無難な自己紹介と適度な拍手があり、自己紹介は終了。結局一番滑ってたのは浅井だったな。


「みんなあらためて一年間よろしくね。じゃあ次に決めないといけないこと、クラスの係を決めましょう。まずはクラス委員、やってくれる子は手をあげてください」


 クラス委員。初めに決めようとするが中々決まらない物の一つ。だいたい一度やった人間が再度やることが多い。つまりこのクラス内に去年やったことのある奴が居ればそいつに白羽の矢が立つ。


「はい。私がやります」


 どうやらその人物はこのクラスに居て、さらに自分から言い出すタイプだったらしい。手を上げたのは黒髪ロングの少女、名前は……覚えてない。

 彼女以外に手を上げた生徒は居ないのでこれは決定したな。


「長野さんありがとう!それじゃあクラス委員は長野さんにお願いします。それと残りの係決めは長野さんにお願いしていいかな?」


「はい。任せてください」


 ここで先生から委員長にバトンパス。委員長の名字は長野らしい。

 先生は教室の後ろに移動し、委員長が教壇に立つ。


「それでは残りの係を決めていきます。まずは……」


 委員長主体の元、特に問題無く係が決まった。

 ちなみに俺は図書委員。甘音は保健委員に決まった。


 _______________



 無事に係が決まり。新学期一日目の学校は午前中で終わった。

 クラスメイトたちは連絡先を交換したり友達と談笑したりしている。

 そんな中、俺は帰る準備を整えて一人教室を出る。


「ちょっと、待ちなさいよ!」


 下駄箱まで来たところで甘音に呼び止められる。走ってきたらしく少し息が荒い。


「なんで一人で行くのよ!?」


「一人で帰ったらダメなのか?」


 特に約束してるわけじゃないし。そもそも何でこいつは追いかけてきたんだ?


「ダメに決まってるでしょ!せめて一言私に言いなさいよ!」


「なんでだよ。別に……」


「なに?」


 言い切る前に睨まれた。ここで言い合っててもめんど……仕方ないし、適当に頷いてさっさと帰ろう。


「何でもない。さっさと帰るぞ」


 俺と甘音は靴を履き替えて下駄箱を出る。


「そういえば、何ですぐに教室出ていったのよ?クラスの人たちと連絡先交換とかしなくて良かったの?」


「………」


 ……察してくれないかなぁ。別に友達が欲しいわけじゃないし、連絡先交換とか面倒だからどうでもいい。そんなことしてる暇があるなら早く帰ってゲームしたいし。


「連絡先なんてお前のがあれば十分だろ」


「えっ!?ま、まぁそうね。あんたには私がいれば十分よね!」


 甘音は何故か嬉しそうに笑いながら歩く。

 クラスの奴らの連絡先知らなくても、何かあれば甘音に聞けばいいからな。クラスの奴の連絡先とか無くても問題ない。

 そうして甘音と雑談をしていると家に着いた。


「それじゃあまた明日な」


「明日はチャイム押したらちゃんと出なさいよ!」


「だから迎えに来なくていい……」


「出なさいよ?」


 また甘音が睨んでくる。こいつほんと人の話を聞いてくれないな。


「……分かったよ。じゃあな」


「じゃあね」


 俺は甘音に手を振って家の中に入った。



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