曲がる!!
「真っ直ぐに打ちなさい!」
「姿勢を崩さないように!!」
散々、言われてきた言葉。
もし。
もしさ。
真っ直ぐに打たずに。
竹刀の軌道を一気に曲げて、小手を打ったら。
姿勢をぐいって曲げて、小手を打ったら。
中心から手を外して、胴を打ったら。
それで。
全国に行けたら。
そこで見える景色は。
今まで言われてきたことを全て自己流に塗り替えて。
剣道の文化を。
真っ直ぐに打つ。
中心を崩さない。
そんな文化を壊して。
汚い剣道で。
全国に行ったら。
インターハイに行ったら。
汚くて。
「素敵な剣道」
って。
言われるかな。
「おー!!来たぞ!群大会!!」
「ケンちゃん騒いでんなぁー!!」
「だって、だって!俺たち最後の大会でさ!群大会!全中に繋がる大会だよ!!」
ケンは、ニコニコと笑っている。
その様子を、ショウは見つめる。
そして、笑う。
ショウは、中堅。
そして、ケンは。
大将。
「でもさ、ケンちゃん。」
「なに?」
「相手の中学、ちょー強そうだよ!!」
一回戦の相手。
海生中学校。
みんな、デカくて、強い。
「おい、お前ら。」
そのうちの1人に、ケンとショウは、話しかけられた。
ケンは答える。
「なんだよ。」
「お前、次の大将か。」
「ああ、そうだ。おれは、ケン。全国に行く。」
「全国に行くのは、このおれだ。」
「いいや、おれだ。」
「お前・・・。何段だ?」
「・・・1級だけど。」
「おれは2段だ。1級で全国なんて、行けるわけ、ねえだろ。それに、この体格差。みろ。お前のアップ見てたけど、構えもフォームも、ぐっちゃぐちゃ。お前じゃ、おれの完璧なフォームには、勝てな・・・」
「でもおれのコテは、曲がる。」
団体戦。
引き分けで大将に回ってきた。
ケンは構える。
相手の名札には、大黒という文字が。
「始め!」
大黒。
すごく、大きな体。
構えも綺麗。
「メエエエエエン!!!」
速い。
速すぎる。
でも。
おれのコテは。
曲がる。
ケンは、首を横に曲げて、面を避け。
相手の伸び切ったコテに向かって、竹刀を、ブン、と振った。
「コテエエエエ!!!」
今の、コテ。
もし、一歩遅かったら。
決められていた。
大黒は、もう一度、面を打った。
その面は。
一本に、なった。
そのまま、時間が切れた。
全中地区予選、一回戦負け。
ケンの全国の夢は、絶たれた。
「おい、大黒。」
「お前・・・あのコテ、全然基本と違うのに、どうやって・・・」
「自分で。研究して。」
「お前、全国に・・・」
「全国に行きたかったから!!おれは自分で!!研究をして!!」
「・・・全国に、行ってやる。」
「大黒・・・」
「お前の努力の分だけ、おれも全国に行ってやる。高校に行ったら、もう一回勝負だ!そのコテを、磨き上げろ!そして、おれは、磨き上げたお前のその汚くて、素敵な剣道を、ぶっ潰す!」
「望むところだ。」




