ぼくは、くま
ぼくは くま。こげ茶色の毛をしたちいさな子どものくま。
お母さんは、、お母さんはいなくなっちゃった。人間さんと喧嘩してそのまま。
ご飯を分けてもらおうと山から下りて人里で話しかけたら、人間さんはお母さんの姿に驚いて、おびえさせちゃったんだって。
その夜、「明日、謝りにいってくるよ」とお母さんは、ぼくを大きな体で包むように温めながら優しく語った。
お母さんのいない巣穴で、小さな体をもっと小さくして丸まって眠る日々。
ある日、ふしぎな夢をみた。
雲の上にいるんだ。きらきら輝く星の島が、ぷかぷかと雲の海に浮かんでいる。ぼくは、三日月のお月さまのボートで島から島へ冒険をする。
おいしい果物や、蜂蜜、お魚が島にはあって、とても楽しかった。でも、お母さんはどこにもいなかった。次の島にはいるかもしれない。
ゆらゆら、ゆらゆらと揺れるボートで、ぼくはお母さんが怖くて眠れないとき、揺らして寝かしつけてくれたことを思い出す。お母さん……
最後の島に、一匹の大人のくまがいた。
「ぼくのお母さんはどこ?」
震える声で尋ねる。大人のくまは、ぼくの目をまっすぐに見つめながら、こういった。
「君が今まで渡った星の海がお母さんだよ。お空に輝くおおぐま座になったんだ。いつでも、君を空から見守っていられるように」
「なんで?寂しいよ。お母さんと話したい。お母さんに抱きしめられたいよ」
「残念ながら、もうそれはできない。でも、また会えるよ。ぼくが君に会えたように」
そういって、微笑むと、くまは遠くに行ってしまった。
目が覚めた。ぼくは、まだ、胸にぽっかりと穴が開いてる。でも、夜に、夢の中でお月様の上で眠ると、お母さんのそばにいられる気がして、とても幸せなんだ。それに、いつも見守ってくれているから、頑張らなきゃ。
ぼくも、お母さんのような、立派なくまになるんだ。