主人公はフォーカスされているので
最近、日向さんが今まで以上に、より目立っているし目に入るようになった。
えっ?恋?アホか。
チームリーダーに日向さんが抜擢されて私がそのチームで補助役として動いているだけの話だ。
ハッキリ言っておこう。恋愛体質じゃない私が誰かを好きになるなんてだいぶ困難である事を宣言する。
以前にも言ったが日向朔は物語のメイン級の配役が似合う女だ。
まぁ何をやってもよく目立つ。見目も良い。気立ても良い。仕事もできれば気遣いだってお手のものだ。
おい、どーするんだよ。成績表だったら5段階評価で5が並びまくんぞ。
この女の唯一の欠点はモブに絡みまくる事位なもんだ。いいか、本気だぞ。
そんな訳でそりゃ昇進も近付く役どころな訳だが当然、目立てば障害は付き物である。
時には悪役の場合もあるだろうし好敵手の場合もあるだろう。今回はそうだな・・・
アクションRPGの中ボス手前の罠チックなファイアーボールみたいな・・・
本来だったら避けるだけで十分対処が効くような役回りの奴だ。だが避ける事に失敗すると痛い。
現実では痛いというより面倒臭いか。一言で言えば邪魔である。
世の中はだいぶ女性に寛容になってきたと言うが妬み嫉みが減った訳ではない。
その対象が同性だけでは無くなったというだけでなんなら増えたんじゃないだろうか。
差別は愚とされるが無くならない。足を引っ張りたい人間はどこにだっているんだから。
目の前の人間もそう言う奴だろう。
関係ない日向担当のプロジェクトに首を突っ込もうとする。
『日向さん、チーム内の連携とれてないんだって?リーダーなんてまだ荷が重かったんじゃないの?お願いされたら僕が手伝ってあげたっていいよ?』
『あー、大丈夫です。連携が取れてないという意見があったのなら調整してみますね。教えていただきありがとうございます』
『は?』
『確かにリーダー経験少ないんで貴重な経験ありがたいです。じゃあ打ち合わせがあるので失礼しますね。』
『・・・・ッ』
あーゆー輩は何を言ったって反感しか持たないからな。日向がどんな返答をしてもあんな態度になるだろう。
『めんどくさいわねぇー。自分の仕事に集中しろっての』
「まぁ自分の仕事はまわせてる自信があるんでしょう。実情は知りませんが」
『まぁ手伝うって言うだけましか。降りろとか辞めろとか言うやつもいる位だし』
「そんなバカいるんですか。天狗もいい所ですね」
『まぁ女ってだけで目立つっておもってるんじゃない?』
まぁ確かに目立ってはいるが。女だからと言うよりは日向朔だからだと思う。女の出世も割合が高いこの会社においては女が理由とは思えないのだが・・・
ついでにあの人日向に一度振られてるし。日向さん忘れてるのか?・・・いや興味なさすぎる可能性もある。
「とりあえず真偽は分かりませんが懸念の払拭は必要でしょうね。情報連携を見直します?」
『そうね。連携は1番重要だから何回見直してもいいからね。メンバーに意見を募って検討しましょう。』
「了解しました。意見、まとめておきます」
『よろしく』
「・・・・あなたは十分リーダーですよ」
『えっ?』
「十分に役割を果たせていますよ。気にかける必要もない」
『えっ、あっ、あー。気にしてるように見えた・・・??』
「いや?全く」
『・・・よかったぁ』
「?気にはしていなかったとしても仲間の評価は気になるものかと思いまして」
『まぁ・・・確かに』
「なのでお伝えしました」
『あ、ありがとう・・・』
他者の悪意を全く気に留めない人間なんていない。
だからおそらく気にしていないように見せているのだろう。大した攻撃力は無かったとしても精神的な傷は残る。そんなもんだ。
私の、仲間の言葉で少しでも和らいだのであれば効果は多少たりともあったのだろう。
ちょっと耳と頬が赤くなった日向さんの表情を横目に意図せず目立ってしまうのも大変だなと思ってしまった。
まぁ、そんな珍しい様子も何分と経たないうちにいつもの様子に戻ってしまったのでちょっとだけ横目だけではもったいなかったかなとも思った次第だ。