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モブと恋愛は出来ますか?  作者: よもぎ
2/7

主人公かヒロインにあたる女

日向朔、同僚で3年ほど先輩。部署異動で知り合い、1年半程になる。

異動後に仕事の説明やらなんやら世話を焼いてくれたのがこの女で可愛さと美しさを兼ね備えた顔のいい女である。スタイルもよく驚くべき事に性格も悪く無い。割と気軽に話しかけられるタイプの嫌味のないサッパリとした美人だ。


そう、日向は所謂主人公かヒロインになれる女だと私は思う。誰に対しても親切でモブに対しても明るく丁寧に接してくれる。

だが高嶺の花と言うよりはサバサバした面もあり庶民的な声のかけやすいタイプだ。

転生ものなら悪役令嬢ではなくぽっど出系聖女か男爵ヒロイン的な感じか。


ところがこの女、役所はメイン級のはずなのにやたらとモブに声をかけてくる。


そう、私だ。


異動直後から私のフォロー役に立候補していた。

いや、まぁ誰もやらないなら仕方ないし私がやるか的な感じなら納得なのだが超絶前のめりだったと言わざる得ない。

なぜなら他にも異動してきた社員は数人いたのだから。

まぁ上司はやってくれるならなんでも良さそうですぐに承認していたが。


そんな訳で異動初日から日向の世話になっているのだが数ヶ月経って気づいた事がある。

他者と比べて私への態度がフランクなのである。

後輩である事を差引いてもだいぶ軽い。

一応だが本人に聞いた事がある。


「日向さん、気のせいでなければ私にだけ随分フランクに接してくださるようですが・・・」

『え?嫌だった?坂井さん気にしないかなーと思って。なんなら晶子さんて呼んでいいです?』

「はぁ。まぁ確かに気にしませんけど・・・。敬語も結構ですよ。日向さん先輩ですし。あと呼び方は好きにして下さい。」

『やったー。じゃあ晶子さんて呼ぶわ。私も敬語いらないんで。』

「まぁ気が向いたら。」

『かったいなぁー』


そんな感じである。なんなら『晶子さん』なんてすぐに呼ばなくなり『あきちゃん』の方が歴が長い。

1年も経つとツッコミが辛辣になる程度には気心がしれた状態になっていた。

なんでも良いがなぜモブに絡んでくるのか全く理解できないまま今を迎えている。実に不思議だ。


ところでこの女、当然だがモテる。

部署内どころか社内で告白回数ランキングを作ったらダントツ1位なんじゃないかというレベルでモテる。こういう女は大抵女に嫌われるもんだが割と同性とも仲が良い。妬み嫉みは多少あるだろうが性格も相まってか後腐れがないのだろう。

少なくとも居心地が悪そうでも生きづらそうでもない。聞いたことはないが。

不思議な事にこの女は平等にお断りをしているらしい。そう、平等に同じ言葉で振っているという噂だ。


『好きな人がいるので』


当然どんなやつが好きなんだと話題にも上がる訳だが全くその情報はないらしい。

まぁ聞かれても『秘密です』と言われた場合、デリカシーのカケラを持ち合わせていれば執拗に聞き出そうとはしないのが大人である。


そんな訳でやたらとヒロインに絡まれているモブはいい情報源とばかりに知らない人間からやたら話しかけられるようになる。正直面倒くさい。

『日向さんのタイプってどんな感じ?』『好きな人ってどんな人?』など同じ質問ばかりされる訳だ。

そうなってくるとこちらもNPCよろしく答えは固定されてくる。


「そう言った話はした事がないので存じません」


そこら辺のモブは取り巻きではない。私だってその一人だ。つまりは本当に知らないのである。

こいつはヒロインと仲が良い友達では無いのかと察するとすんなり諦めてくれる。こう言う時だけはモブで良かったと感じてしまう・・・事もある。


『別にあきちゃんなら聞いてくれてもいいんだけどー?』


いつの間にそこにいたのか本人が立っていた。

話はおそらく聞こえていたのだろう。


「いえ、隠し事は苦手なので」

『へぇー!そうなの?口堅そうなのに』

「・・・なんです」

『え?なんて?』

「いや、だから口じゃ無くて顔に出るみたいなんです」

『え?顔・・・?』

「そうです・・・はいかいいえの質問だけで問い詰められたらすぐ堕ちます」

『目は口ほどに物を言うとは言うけれど顔全部で語っちゃう訳か』

「はい・・・」

『へぇー、いい事聞いちゃった♪♪』

「いや、なんですか一体」

『ふーん?なーるほどねぇー?』


一体なにがそんなに楽しいのか知らないが、上機嫌な日向さんを見ていたらなんでもいいかと思ってしまった。

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