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45ジークヴァルトの執心

 ジークヴァルトはぐっと息を詰め、何とか踏みとどまった。

 あくまで今皇太后に認められている『魔女』はホージ侯爵家のマリアンヌ嬢だけだ。


「…憶測だ」


「なるほど、確かに。

実際僕もエマに確かめたわけじゃないし、証拠を持っているわけじゃない。

どのみち皇太后が頷かなければ、正妃云々(うんぬん)はどうにもならない。

君がエマの真相をあくまで憶測として片付けたいなら……

僕もこのままでいいと思うよ」


「っ…?!ルイス…」


「だがっ、エマは僕がもらうよ」


「ルイスッ!」


「皇太后に公認されなくても、エマは『魔女』だ。

多分、マリアンヌ嬢が及ぶべくもないね。

だから、僕の側にはいてもらう。

側室はないとは言ったけど、正妃になれないのなら側室とするしか仕方がないじゃないか。

『魔女』のことを横に置いたとしても、彼女の知識と教養、気性、品性、容姿全てが僕の側にいるのに相応しい。

君は『絶対ない』んだろ?

なら、いいよね?

ああそうなると、彼女にはホージ侯爵以上の後見が必要になるな。

さて、どうすればいいか……」


 ジークヴァルトはギリリと奥歯を噛み締めた。

 ホージ侯爵以上の後見などジークヴァルトしかいない。ルイス王子はエマをジークヴァルトの義妹にしろと言っているのだ。


 こんな馬鹿げたこと、引き下がるわけがない。


「聡い彼女がっ、愛しても愛されてもいないお前の言うことを何故聞かねばならんっ!」


「愛?!君からそんな言葉を聞くとは思っていなかったよ」


「皇太后様の『占い』通り、お前は『魔女』のマリアンヌ嬢と結婚して幸せになれ。エマを巻き込むなっ」


「はっ!幸せだって?よく言うよ!

それに、エマのことは僕は最初から言っていたじゃないか!

優しくていい子だって。

強かな女呼ばわりして彼女を傷つけていたのは君じゃないか。

僕は、エマを気に入っているし、愛せる」


 ジークヴァルトの手元でバキッと鈍い音がなった。


「気に入っている?愛せる(・・)だと?

何を、(ぬる)いことを言ってるッ!!」


 怒りにまかせて立ち上がり、手でへし折ったペンを机上に叩きつける。

 書きかけの書類にインクが飛び散るが、ジークヴァルトは目もくれない。


「前言は撤回だ。『気が変わった』」


 激昂から一転、静かにそう言い切るジークヴァルトの声はもう冷静さを取り戻したように聞こえたが、机についた手はインクが飛んだ書類をぐしゃりと固く握り潰し、ルイス王子を見つめるアイスブルーの瞳は次に下らないことを言えば容赦しないと敵意をむき出しにしていた。


 ここまで感情をむき出すジークヴァルトに、ルイス王子は更に棒で突くような真似をする。


「君は自分の言葉にプライドはないのかい?

断言した言葉を(ひるがえ)すなんて、貴族としての品性にも欠けるんじゃないか?」


「俺のプライドの為にエマをみすみす失うつもりはないッ」



 ルイス王子はジークヴァルトの気迫に息を呑んだ。

 今なら膝をついて願えと言えばそうしかねないなと思った。

 シュタルラント国最上位貴族の誇り高いホランヴェルス公爵家の人間であるジークヴァルトがエマの為ならプライドを捨ててしまえると言っているのだ。


 相当な執心だ。


 ジークヴァルトの本心が見れたのは嬉しいが、ここまで振り切られると恐ろしくもある。

 その想いを一心に向けられるエマを少し気の毒に思った。

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