第五十二章 亮太、子育てする
やがて、政男と聡子の結婚式も無事に終わり、秋山家に新しい家族、聡子を迎えて平和に暮らしていた。
近所の住民達は、「少しでも間違った事をすると、聡子さんに叱られるわ。さすが、総理大臣の眼鏡にかなった、清廉潔白な女性ね。以前住んでいたマンションでは、住民から煙たがられて虐めると、総理大臣を怒らせて、そのマンションのゴミは回収しない事になったそうよ。自分達で処理場まで持って行かなければならなくなったそうよ。従わなければ、マンションを取り壊すと、総理大臣が激怒していたそうよ。聡子さんに従わなければ総理大臣を怒らせて、ここを追い出されるかもしれないわよ。」と噂していて聡子に従っていた為に、聡子は近所の主婦達のリーダー的存在になっていた。
政男の部屋は、亮太と泉の部屋のように広くない為に、居間と寝室の、二部屋使用する事になった。
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一方、亮子が生まれて一年ほど経つと亮太は、「そろそろ立たないかな?」と立たせようとしていた。
幸枝が、「立たせてはダメ!」と止めた。
亮太は、「何故ですか?」と不思議そうでした。
幸枝は、「まだ足の骨が体重を支えられない為に、今立たせると足が曲がるわよ。泉さんの足は、まっすぐですが、陽子さんの足は、曲がっているでしょう?私が、すみれを早く歩かせようと焦った結果、こうなってしまったのよ。成長したすみれの足をみて後悔しました。」と説明した。
亮太は、「それじゃあ、いつになったら立たせてもいいのですか?」と何か目安があるのかと確認した。
幸枝は、「その時は自分で立ちます。それまで待っていてね。」と説明した。
亮太も納得して、亮子が自分で立つまで待って、その後歩行訓練などして平和に暮らしていた。
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亮太も泉も、総理大臣直属の秘書なので、秘書と子育ての両立は困難で、亮子も動いて目が離せなくなっていた。
亮太は、幸枝はすみれが柿木から落ちた事があったので神経質になっていて、お手伝いさんや幸枝に負担をかけるので、三歳から保育園に預ける事にした。
泉が、「私の苗字は熊川だから、書類など何かあれば都合が悪いので、亮太が前面にでて。」と相談して、亮太も納得して各種書類などは亮太が秋山陽子として作成した。
保育園への送り迎えは、お手伝いの取りまとめがメインの仕事で、具体的なお手伝いの仕事が少ない啓子が担当していた。啓子が休みの日は、家の事は聡子に任せて幸枝が担当していた。
啓子は、亮太と泉の子どもの世話がしたくてそのようにしたようでした。
取りまとめの啓子が保育園に行っている時や休みの日など不在の時にさぼるお手伝いがいたが、不公平が許せない聡子は見逃しませんでした。幸枝と相談して、「さすが聡子さん。よく見ているわね。私の前だと、皆、鎧を着ていて真面目に仕事していてさぼらないからわからないのよ。これからもよろしくお願いしますね。」と評価して給料に反映していた。
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やがて亮子は小学校に入学した。この時も保育園の時のように、亮太が前面にでて各種書類を作成していた。
入学式や授業参観や運動会は、亮太と泉と二人で行った。
やがて、父母達の間で、「亮子ちゃんの所はいつも女二人でどちらが母親なのだろう?父親は一度も見た事ないけれども何かあるのかしら?」と噂していた。
そんな噂をしていると、やがてグループができた。
そのグループが喫茶店で噂していると、たまたま亮太の事を知っている母親がいた。
「秋山亮子ちゃんの様子をいつも窺っている女性だけれども、以前週刊誌で見た覚えがあったので、昔の週刊誌を調べると秋山総理大臣のお嬢様で、秋山陽子さんだったわ。やくざ絡みの人身売買事件や、結婚詐欺事件などを解決して、指名手配中の殺人犯とも格闘して取り押さえたとして、正義のヒーローとして週刊誌に掲載されていたわ。インターネットで検索すると、その時の動画が見られたわよ。現在は秋山総理大臣直属の秘書らしいわよ。今までの実績から公儀お庭番のような仕事をしているそうよ。知り合いになっておけば、何らかの事件に巻き込まれた時などに頼りになりそうだわよ。」と以前の週刊誌を見せて、亮太が指名手配中の殺人犯と格闘している動画をスマホで見せていた。
「私も秋山って、どこかで聞いた事あると思っていたけれども、この週刊誌と動画を見て思い出したわ。」と納得していた。
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「事件に巻き込まれなくても、総理大臣直属の秘書だから、子どもが将来進学する時に口添えして貰えれば有利にならないかしら?私達のグループに誘おうよ。うかうかしていると他のグループに取られるわよ。」と有名校への進学に期待している様子でした。
次回から母親達は、急に亮太に優しくなり、子ども達にも、「秋山亮子ちゃんと仲良くして友達になりなさいね。親友になればもっといいわ。」と諭していたので亮子は学校で人気者になっていた。
そんな様子を見て泉が、「亮太、若い母親に色目使って何しているのよ。」と不満そうでした。
亮太は、「母親達は俺を女だと思っているので色目なんて何の役に立つのだ?焼き餅もいい加減にしろよ。」とうんざりしていた。
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ある日、亮子のクラスに転校生、篠田修司がきた。
母親の篠田信子は、クラスの父母達の間で、いくつかのグループがある事に気付いた。
その中で一番大きなグループが亮太の噂をしていたグループでしたので、そのグループに入った。
信子は、以前子どもが通っていた学校で、父母達のグループでリーダー的存在でしたので、少し慣れてくればリーター的存在になろうとしていた。
信子は、「私の主人は、大手建設会社の部長で、国会議員の秘書とも知り合いなのよ。」と主人のPRをしていた。
他の父母達は、「あっ、そう。」と誰も乗ってきませんでした。
信子は、「主人は国会議員の秘書と知り合いなのよ。何か困った事があれば力で抑えてくれるわよ。」と誰も乗ってこないので頭にきている様子でした。
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そこへ亮太がきたので父母達は亮太に、「信子さんが、国会議員の秘書は偉いような事をいっていますが、そんなに偉いの?だったら、総理大臣直属の第三秘書なんてすごく偉いのね。」と聞いた。
信子は、「当たり前じゃないの。第三秘書なんて雲の上の人物で話もできないわよ。」と突然、総理大臣直属の第三秘書の話がでて驚いている様子でした。
父母達は、「話もできないだなんて、今、話をしているじゃないの。でも、陽子さん、そんなに偉いの?」と亮太がそんなに偉かったのかと驚いている様子でした。
亮太は、「第三秘書なんて、そんなに偉くないわよ。」と特別扱いされたくない様子でした。
信子は、「あなた、国会議員の秘書を馬鹿にしていると後で後悔するわよ。今日は主人が国会議員の秘書を連れて、私をここに迎えにくるのよ。国会議員の秘書に失礼な事言わないでよ。」と皆に自慢する目的で父母達のたまり場の喫茶店に迎えにきてもらう事にしたものの、心配で焦っている様子でした。
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そこへ信子の主人が国会議員の秘書と共に喫茶店に入ってきた。
「信子、待たせたな。帰ろうか」と信子に声かけした。
父母達は、「信子さんのご主人なの?その横にいるのが、偉い国会議員の秘書なの?そんなに偉そうに見えないわね。」と笑っていた。
信子は、「相手を見て喋りなさいよ。陽子さんが第三秘書なんてそんなに偉くないなんて言うからよ。そんな失礼な事を言ったら後で後悔するわよ。」と亮太に苦情を訴えて焦っている様子でした。
国会議員の秘書は振り返った亮太の顔を見て、「君こそ失礼じゃないか。」と慌てて信子を止めて、亮太に、「私の知り合いの妻が大変失礼な事を言って申し訳ございませんでした。」と謝っていた。
亮太は、「あなたも大変ね。いつもペコペコして。」と笑っていた。
信子は、「えっ!?陽子さん、あなた何者なの?」と亮太の事を知ろうとしていた。
父母達は、「陽子さんは信子さんが雲の上の人だと言っていた、総理大臣直属の第三秘書よ。」と教えた。
信子は小さくなり、迎えに来た主人と国会議員の秘書と帰った。
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信子は帰りの車の中で国会議員の秘書に先程の亮太の話は本当なのか聞いた。
国会議員の秘書は、「本当です。彼女は主に総理大臣に火の粉がかかりそうな事件を調査して解決しています。実際、彼女に退職に追い込まれたのは国会議員の秘書だけではなく、国会議員も退職に追い込まれています。その他には警察もまだ気付いていない事件にマスコミが気付いて騒ぎだして、問題が大きくなる前に彼女が解決しています。昔の公儀お庭番のような仕事ですね。彼女に睨まれれば私は勿論、先生も退職に追い込まれる可能性は否定できません。くれぐれも彼女に失礼のないようにして下さい。」と忠告した。
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信子は、今のグループは全員亮太を信頼している様子でしたので、リーダー的存在になるのは無理だと判断して別のグループに入った。
そのグループでは、子どもの将来の事を、話し合っていた。
「子どもに勉強ばかりさせるのはかわいそうで、元気で活発に生活してほしいと思っていますが、有名学校への進学も、子どもの将来の為に考えて、熊川泉さんと仲良くしているのよ。将来口添えして貰いたくてね。」と子どもの事を考えていた。
信子は、「それだったら、クラスの父母の中に、総理大臣直属の秘書がいるので仲良くすればどうなの?」と何故亮太ではないのか疑問に感じていた。
「だから、熊川さんと仲良くしていると言ったでしょう?熊川さんは、総理大臣直属の第四秘書よ。」と教えた。
信子は、このクラスは総理大臣直轄のクラスかと驚いて、他のグループにも、誰か大物がいるのかと感じて、このクラスの父母達のリーダーになるのは、諦めた様子でした。