男 冒険者パーティー②
「コユキ。どの杖が良い? うららが仕留めた得物の報酬がやばい金額だった。好きな物を選べよ。」
「それを、春人が自由に使うのはおかしいんだよ。」
「コユキ。そういう取引だから、それで良いのよ。春人といる事で得られる快適な生活は何物にも代えがたいわ。それにさっき春人が一番惜しまずにお金を使った捜索依頼は私の母親なの。」
「うん。料理もお風呂もトイレも最高なんだよ。」
春人は次にうららに買い物を頼む。
「うららは、アミンさんに贈るショートソードと弓を選んでくれないか? どちらも適正があるみたいだからな。」
「分かったわ。お世話になったから、真心も大切よね。」
「そうだな。これは夏さんの為でもある。」
「うん。」
フォルトナ達は、武器屋でコユキ用の杖装備とアミン用のショートソードと弓を購入した。店を出ると路地裏に入り、それらを一旦マテリア化した。
「今度は武器が消えたんだよ。」
「ああ。新しくスキルで製造する為にマテリア化したんだ。本当はたくさん素材があるから、それでも作れるんだけどこの街の仕様に少しは合わせたかった。【テイルム】…………【アルミス】。」
「杖が戻ってきたんだよ。弓もショートソードも。あれ? 買ってない服と靴が二つずつあるんだよ。」
それはルルシア聖皇国でルキウス聖皇からマテリア化した法衣を、リサイズしてコユキとアミン用に製造したものだ。
靴は魔物の皮素材から作れるものがあったのでそれを基に春人のスキルで製造した。
「元がめちゃくちゃ大きな法衣だったから、それを二つに分けたんだ。組み合わせたアイテムで継続回復の効果もあるぞ。レベルが上がってスキルの扱いの自由度が上がったみたいだな。【 住居生成 】フィッティングルームを作ったから、ここで着替えてくれ。」
「うん。継続回復の効果。きっと聞き間違えなんだよ。ありがとう。」
「【 ツール 】武器と防具には、この①天球をつけてな。」
※天球武器スロットに付ける石の中で最上位の物。モンスターの解体時にドロップする。運の数値が千以上でないとドロップはせずに千でドロップ確率が1%千ごとに1%上昇し10万で100%ドロップする。運が最高の職業の場合はLv100で運742。その為レムリア大陸にはあまり存在しない。価値は①天球②地球③能力宝珠の順番で高く、能力宝珠でさえもレアな一品。使用方法は付けるだけだが、一度付ければ武器一部となり鑑定以外の方法で判別は出来ない。スロットがある装備もあまり存在しない。
「……うん。能力宝珠ね。きっと聞き間違えなんだよ。ありがとう。」
フィッティングルームから出て来たコユキは新調した装備に着替えると嬉しそうにしている。ずっと荷物持ちだったコユキは戦闘用の装備などを着た事がない。
「春人。うらら。ありがとうなんだよ。」
「はいよ。」「私は何もしてないよ。」
一行は適当に街をぶらついた後で冒険者ギルドに戻って来る。受付でアミンに武器と防具を手渡していた。
「アミンさん。お世話になったので、これは俺からの贈り物です。」
「え? 嬉しい。ありがとうございます。……でも依頼人や冒険者の方から、贈り物を貰うなんてはじめてです。これ開けてみても良いですか?」
アミンがあまりの嬉しさに、受付から飛び出して春人に近づくと春人の服をツンツンした。
「あわわわわっ。……す、すみませんっ!! 法衣が入っているので急いで着て下さい。」
アミンの服がマテリア化で消えてしまい、下着姿に変わる。手で触れなければ大丈夫のはずだったので、うららが春人を睨んでいる。
「ちょっと、春人。いくら何でもこれは最低よっ。大丈夫なんじゃなかったかしら?」
春人はうららに耳打ちをする。
「マテリア化は秘密だろ。言うなよ。それに、これは不可抗力だ。男としての本能はきっとこれだけは拒めない。」
「やっぱり最低っ!」
アミンが涼しくなった自分の体を確認すると、自分が下着姿である事に悲鳴を上げた。
「キャッーー! 何でなのー。見ないでっー。」
アミンが受付に戻って、その下に隠れた。訳が分からずにキャーキャーと叫んでいる。
「アミンさん。落ち着いて下さい。贈り物の中に法衣が入っていますから。」
アミンが貰った商品の中に法衣を発見し、慌てながら急いで着た。
「春人さん。贈り物、本当にありがとうございます。実は私は弱いんですがギルドの職員として、冒険者業もたまにやっているのです。大切に使わせて頂きますね。それにしても、いったい何だったのでしょう? 新手の攻撃でしょうか?」
「さあ。俺にも分かりません。それより、冒険者の方達の状況はどうですか?」
「ええ。それなら、酒場の方で6人パーティーが待機しています。後は依頼主の春人さん達次第です。」
「よっぽど変な性格とかでなければ、決まりで良いですよ。」
「もちろん。春人さん達への依頼です。礼儀正しい人物である事を徹底させて頂きました。」
「ふふ。なんだか勘違いされていますが、アミンさん。本当にありがとうございます。お世話になりました。」
「こちらこそ、新しい装備一式。私の才能まで調べてくれて本当に嬉しいです。休みの日が待ち遠しいです。」
アミンは、貰った装備の性能をまだ知らない。武器の見た目は、街の高級品の部類に収まっている。それでもギルド職員では手の届かないような一品なので飛び上がる程に嬉しい。ただし、中身は同系統の素材を使った武器よりも2ランク上の攻撃力だ。各武器には、組み合わせたアイテムとスフィアの特殊な効果で、更にその武器の性能を底上げしている。
矢筒に入った矢は、秘密の森で得た神木や素材の組み合わせとスフィアの効果で、無限に攻撃力の高い矢が生成される。
極めつけは、コユキとお揃いの法衣。元が国宝級の聖皇の衣装なので、武器とは比べ物にならない程に価値がある。
「こちらが皮ランク。真の友情のメンバーです。ヴァンサン。依頼人の冒険者の方よ。ご挨拶をして頂戴。ランクは同じく皮でこの護衛依頼では同程度の冒険者の実力が知りたいみたい。」
春人達は皮ランクで話を通して貰った。皮ランクの実力が知りたいのと、経験の浅い自分達の力にはまだ自信がない。
「はじめまして、真の友情のリーダーヴァンサンです。」
「はじめまして。春人です。こっちがうららとコユキです。この依頼を受けてくれてありがとう。道中は楽しく行きたいので、お互いに敬語はやめよう。」
「分かった。こちらこそ、高額の依頼をありがとう。本当に助かるよ。こいつがサブリーダーのレン。右からリア、シン、マリナ、レンジだ。みんなも依頼人に挨拶を。」
「レンだ。よろしくな。」「「「よろしくー」」」




