男 再会①
「うぉ~。この種族特性はやっぱり凄いなー。こうして見ると森の出口までが一発で分かるぞ。」
「お兄ちゃん。本当にありがとう。もの凄く気持ちいいのー。」
亜人である鳥人 の天賦の才
種族特性は翼。その名の通り翼を用いて飛行出来る。レベルが高い程に高度が上がり高速での移動も可能になる。Lv15を超えれば高さ約50mの上空を飛行出来る。
ただし、それは翼が生えているからではなく、この種族は天賦の才で飛行をしているのだ。鳥人はこれにスタミナ1とSPを小消費し、その状態ではスタミナを20秒間に1ずつ減らす事になる。例の如く普通は30分くらいしか飛行出来ない。
春人とレイアは天賦の才『翼』での飛行を楽しんでいた。
異世界で種族はたくさんあるが、レムリア大陸内で特に数が多くて有名なものは以下の種族になる。ただし、魔王側に与する者はこれとはまた別にある。
――人間
基本四種の民
火の民
天賦の才 種族特性 紅
風の民
天賦の才 種族特性 翠
水の民
天賦の才 種族特性 蒼
地の民
天賦の才 種族特性 灰
上位種族
海の民水の上位種
天賦の才 種族特性 海
谷の民土の上位種
天賦の才 種族特性 岩
特殊な人間種族
樹の民
天賦の才 種族特性 樹
森の民樹上位
天賦の才 種族特性 森
――亜人
≪ 妖精人 ≫
森人
天賦の才 種族特性 寿
矮人
天賦の才 種族特性 矮
≪ 半妖精 ≫
鬼人(男)
鬼人(女)
天賦の才 種族特性 鬼
小鬼人
天賦の才 種族特性 善
妖狐
天賦の才 種族特性 狐
≪ 半獣 ≫
龍人
天賦の才 種族特性 龍
象人
天賦の才 種族特性 象
鳥人
天賦の才 種族特性 翼
山羊人
天賦の才 種族特性 山羊
魚人(全体)
魚人男 人魚女
天賦の才 種族特性 魚人
≪ 獣人 ≫
獅子人
天賦の才 種族特性 獅子
熊人
天賦の才 種族特性 熊
狼人
天賦の才 種族特性 狼
虎人
天賦の才 種族特性 虎
猫人
天賦の才 種族特性 猫
兎人
天賦の才 種族特性 兎
「うっ。一度にたくさん食べたから、お腹が痛くなって来たぞ。」
「……私もなの。」
春人とレイアは、空高く飛行した事で風でお腹を冷やし、暴飲暴食も相俟って急激に便意をもよおしてくる。
「レイア。トイレを作るからちょっとついて来てくれ。」
「お兄ちゃん、そんな物も作れるなの?」
「ああ。作れるから心配するな。」
地上に降り立つと、春人はスキルでトイレを生成する事にした。このスキルはSPの消費が激しく、価格も高い為何度も使いたくはない。だが、現実世界から来た春人はレイア以上に野生でそれをやるほどの度胸もない。
「【 風呂トイレ 生成 】【 道具 生成 】 トイレットペーパー。」
「凄いなのっ!」
「ユニットバスか。水洗式だしどういう仕組みなんだ。……レイア。これがトイレットペーパーだ。終わったらお尻を拭くやつな。座るタイプのトイレ使った事はあるか?」
「無いけど、なんとなく分かるの。」
「おう。先にやっちゃってくれ。でも、頼むから急ぎなっ! このレバーを押すと水が流れるからな。」
「凄いなのっ! りおかいしましたなの。」
レイアがユニットバスに入ると、春人はそこから少し遠ざかった。まだ幼いとはいえレイアは女の子だ。そこは紳士的に気を遣った。
少し待つとレイアが幸せそうにトイレ(ユニットバス)から出て来る。
「幸せなの。こんな綺麗なトイレは初めてなの。」
「そっか。悪いけどすぐに入っちゃうよ。水で流れたんだから平気だよな?」
「うん。それは大丈夫なの。匂いがしないトイレの方が初めてなの。」
春人はレイアの返事を聞いて、急いでトイレに駆け込む。レイアと同じ様に幸せそうな顔でトイレ(ユニットバス)から出て来た。
「とりあえず、俺は国の場所とは反対の方向に抜けたいんだけど、進路はアッチ側でも良いか? 今なら飛んで行けちゃうけどどうする?」
「お兄ちゃんについていくの。」
「よしっ。あっ。トイレってアイテムボックスには仕舞えないかな? ちょっと抵抗あるけど、高いからさ。」
「流れたものがどこかに貯め込まれている形跡がないの。どこかの溜池とか別の場所に転移させているんじゃないのかな? 触れる物なら容量さえあればアイテムボックスに収納できるの。」
「ん? たしかにそうだな。仮設トイレとかだと、高い位置になるけど、これは高さが変わらない。……でも、やっぱり心の健康に悪いからそれはやめとくか。」
話をしている春人達の前に、何者かが猛烈な勢いで近づいて来る。
「ごめんなさい。ちょっと、そのトイレ貸してくださいっ!!」
それは昨日お城(平地)で別れたはずの八百屋の店員だった。トイレのドアが空いていた事で、その便座に気が付いたのだ。
「あっ。」
「すいません。お借りします。離れててください。」
トイレから泣きそうな顔で懇願する愛媛うらら。咄嗟に春人はレイアの手を取りそこから少し離れていた。
数分後、トイレから幸せそうな顔で出て来るうららの姿があった。
「ありがとうございました。まさか、異世界に水洗トイレ。いや、ユニットバスがあるとは思いませんでした。ところで、常連のお兄さん。私の事を仲間にしてくれませんか?」
しかし、春人は怖い表情でその提案を却下した。春人は先日の一件以来、うららの事を全く信用していない。
「駄目だ。こっちにはメリットがない。それに、どうせ仲間にしても裏切られるのがオチだからな。」
「モンスターをたくさん倒せます。状況が変われば別の道を歩む可能性はありますが、裏切るような真似はしません。私はあなたをずっと探していたんです。許可も無く異世界に召喚されて、顔見知りなのはあなたしかいないんです。あなたもそれは一緒でしょう?」
「悪いな。生憎、俺にはレイアという妹が出来たからな。モンスター退治もレイアで間に合っている。」
「……そんな。」
うららは、地面に座り込み泣き出していた。
うららは昨日から春人を全力で探していた。それでも冷静でいられたのは春人から食料品を貰っていたおかげで食事だけは出来ていたからだ。春人に会ったら分けようと思い、少しずつこれを食べていた。
だが、唯一まともだと思っていた春人に見捨てられたのは、春人に再会する前よりも絶望的だった。
これで本当に異世界でたった一人になるのだ。