マフラー
「うう、寒いー」
「寒いねー」
今日は12月24日。クリスマスイブだ。
街はイルミネーションで綺麗に彩られ、賑わっていた。
私は付き合って1年になる彼の手を握った。
「こうするとあったかいよ。」
「ななみは寒がりだなぁ。」
彼は笑っていった。
「だいたいなんでマフラーして来ないのさ」
「いやー忘れちゃって。」
「仕方ないな。俺のマフラーしなよ。」
そう言って彼は自分のマフラーを私の首に巻いてくれた。
「ありがとう。今度会う時返すね。」
「ああ。」
そしてクリスマスイブから1ヶ月後。彼は事故死した。
彼はバイクに乗っていて、走ってきたトラックと衝突したらしい。
私は、彼が死んだ後も、事故のショックから立ち直ることが出来なかった。
上手く笑えなくなったし、口数も減った。
私は返せなかったマフラーを握りしめて、ずっと泣いていた。