せひろ、猫さまにさわりたい
今回は猫さま。
作者、猫に関しては変態的でありますので、どうかドン引くことなく、最後までお読みください。
もふもふ、もふもふ……この感触が好きな人間は多いはずだ。
自分ももちろん大好き。
そう、“もふもふ”……特に“猫”。
ふわふわの毛並み。
三角のふにふにの耳。
ビー玉のような眼。
ぷにぷにとした肉球。
ピコピコと動く尻尾。
ふにゃふにゃと軟らかい身体。
それらすべてが融合した奇跡のフォルム!!
この世の中で、神が創った最高傑作と言えるのではないか?
もう分かるかと思うが、自分は“猫大好き”である。
まずは自分が以前住んでいた場所での話。
そこはまさに“猫天国”というくらい、近所の猫さまに遭遇する地域であった。
どうやら、近くの家で猫を放し飼いにしているようで、毎年子猫が増えていっていたのだ。
・~・~・~・~・~・~・~・~
ここで注意してもらおう。
猫は可愛い。
しかし、無計画に殖やしてしまうのはいただけない。
“多頭飼い飼育崩壊”という、飼い主ではどうしようもなく増えてしまう事態にもなりかねない。
殖えて溢れた猫は、餌を求めて野良猫になることも。そしてさらに野良猫同士で殖えていく。増えた猫たちの餌や糞の問題は、ご近所ではかなりのトラブルものだ。
そうして際限なく増えた猫たちは、地域であぶれ、殺処分の対象になってしまうおそれもある。
あと、飼い猫に比べ野良猫は常にストレスに晒され、寿命も短いと聞く。環境によっては交通事故死してしまう子も多い。
そんな不幸な猫たちを救済されておられる方々もいるが、個人や地域ボランティアでは活動に限界もある。
そんな不幸な猫たちを増やさないのも、猫を愛でる者たちの責任であることを忘れてはならない。
・~・~・~・~・~・~・~・~
結婚して引っ越してきたばかりの自分は、実家の猫に会いたい想いを募らせつつ、近所の猫さまたちのお姿を拝見していた。
しかしこのご近所猫さま、人間をかなり警戒しているのか、滅多に近くには寄らない。
外で猫を見かける(1メートル範囲)
目が合う→逃げる
外で猫を見かける(2メートル範囲)
目が合う→逃げる
外で猫を見かける(5メートル範囲)
目が合う→逃げる
外で猫を見かける(10メートル範囲)
目が合う→逃げ………………
お前たちのコマンドには“逃げる”しかないのか!?
はぐ○メタルだって、たまに攻撃してくるぞ!!
そう、この近所の猫さまたちは基本“人間の姿を見たら逃げる”のである。うちの旦那の時にも、ちょっと立ち止まって見ているらしいが、それでも数秒のうちに逃げて隠れてしまう。
どうしろっていうの!?
視界に入るなってか!?
………………いや、それでもいい。
猫さまのご尊顔を拝する機会に恵まれているのだ。お姿だけでも拝ませてもらおう。
はぁ~、猫さま可愛い、猫さま可愛い。
しかし一度だけ、引っ越して半年経たない時に、小さなシャム猫っぽい子が撫でさせてくれたことがある。
あの子はあれ以来、あの地域では見掛けることはなかった。
きっと、天使かなにかだったのだろう(大真面目)
庭で産まれたばかりの子猫を拾ったこともあった。
その子は現在、自分の実家で立派な猫に育った。しかし、遺伝子にあるのか、自分を見ると逃げていく(泣)
逃げる猫さまたちとの生活は、約八年ほど続いた。
そして、今現在住んでいる場所へ移るのだが、この地域もなかなかの“猫天国”であった。
ここの猫たちは飼い猫とは違う骨太さ。
おそらく、近くのお寺に住む野良猫だ。
もちろん近くに寄れば逃げられるのだが、ここの猫さまたちはなかなか根性が座っている。
その中でも、うちの庭をよく通る『おっさん』というあだ名の黒虎猫は貫禄が違う。
彼との出会いは、引っ越してきて数日の我が家の庭。
置いてあった荷物の上に、足を広げて座っていたのだ。まるで酔っぱらいの中年のおっさんが壁にもたれているように。
『おっさん』は名前の由来はそこからである。
子供と一緒にその彼の姿を見てゲラゲラ笑っていたところ、おっさんはゆっくりと座り直してこちらをじっと見ていた。
『そんなに笑うな。恥ずかしいだろ!』
そう言わんばかりの視線。
猫さまの意思がこちらに伝わってきたのは、その時が初めてだった。
そして、おっさんは度々うちの庭や駐車場を通っていく。
この間などは、うちの車の前で二時間ほど熟睡していた。前の家の近所猫さまたちとは違う、大物っぷりがうかがえる。
相変わらず、外にいる猫さまたちを触ることはできない。
まぁ、それも当たり前のことだが、自分はやはりもふもふを撫で撫でしたい。
だが、そんなある日、奇跡は突然訪れる。
ある日曜日の朝、自分は趣味のウォーキングに励んでいた。
その時、視界の隅にある一匹の白猫を捉えたのだ。
猫好きの必須スキル【猫感知能力】である。
当然、ダメ元で『チッチッチッ、おいで~』と手を差し伸べてみた。
トコトコトコトコ…………スリリリリリッ。
しゃがんだお膝に、温かく柔らかい感触。
ふぉおおおおおおおおおおっっっ!!
なんと、猫さまが自らのお身体を自分の膝や手に、スリスリと擦り付けてくるではないか!?
「かわいい……!! 可愛いねぇ!!」
「にゃーん(ゴロゴロ……)」
はぁあああんっ!! たまらんっ!!
頭から尻尾まで、猫さまが動く通りに手を滑らせていく。めちゃくちゃ毛並みの綺麗なお嬢様である。
その後、この子は十数分に渡り撫でさせてくれた。
飽きっぽく気まぐれな猫さまからしたら、破格の時間と対応であったと言える。
「あぁ……今日は朝から幸せだ……」
手のひらに余韻を残しながら帰宅。
そして、玄関にて。
「ただいま…………………………旦那さんや、ちょっといいかね?」
「おかえり…………って、どうしたのそれ?」
旦那は帰ってきた自分を見て軽く驚く。
「“コロコロ”持ってきてください…………」
「はい、どうぞ」
コロコロ、コロコロ、ベリッ!
コロコロ、コロコロ、ベリッ!
コロコロ、コロコロ………………
強力カーペット用のごみ取り“コロコロ”が五枚ほど消費された。
猫さまとの戯れの代償である。
自分の紺色のジャージは、猫さまの毛がびっしりとくっついていたのだ。
どうやら季節柄、毛の抜け代わり時期だったみたいだ。
撫でている時、取れる毛の量が半端なかった。
ふふふ……しょせん自分は、猫さまの『自動ブラッシングマシーン』にすぎなかったのか……。
それでも、行きずりの幸せをもらった。
自分は大満足である。
幸せを決めるのは自分。
他人の尺度ではないのだ。
『おっさん』の詳しい話は、またいつか。
今回は寝る前に書き上げたので、所々おかしい点があるかも。
おかしいのは、文章ではなく作者が。




