懐かしいが、君の名は?
今回は懐かしいものを紹介…………と思ったら、現代にもあるじゃああああんっ!! と、叫んだもの。
皆さんは“物持ちがいい”そういう言葉を聞いたことがあるでしょうか?
かなり昔の物を、現在でも大事に取っておいたり、大事に使う人にそう言ったりしますよね。
中には当たり前に使っているのに、今ではお店で買えない物も多くあります。
“時代の遺物”なんて言われても、自分の家では当たり前で、すっかり“別のもの”として定着していたり。
今回は長く一緒にいる物なのに、それの“真の名前を知らなかった件”について語りましょう。
物って想像よりも長持ちする。
ある時、携帯のコラムかニュースだかでこんな記事を見つけた。
『100円ショップのマグカップを十年以上使っている。これ全然壊れないよ』
どうやらこれは、どうせすぐに壊れる物なら100円のもので良いだろう……と使い始めたら、人生において長い付き合いになったということらしい。
だから適当な物でも安易に考えて買うな。
ふざけて買うくらいなら安い物でもちゃんと吟味しろ、という話なのだ。
よく見たら我が家にも100円のマグカップがある。しかもコレ、昔にバイト先の休憩室用に買ったもので、かれこれ十年は軽く超えている代物だ。
使い勝手も良く、今では自分のマグカップの中で一番出番がある。デザインもシンプルで飽きない。
グラスコップやティーカップが昇天していく中、あの震災も生き抜き、平気な顔して戸棚に並んでいる。
そのマグカップは今でも主戦力だ。
( ¯ω¯ )「よもや、こんなに一緒にいるとは……」
本当にあのニュースと同じことを呟いてしまう。
本題に入ろう。
自分の実家含め、うちは物持ちがいい方だと思う。特に台所にある食器類はだいたい前時代の代物が多い。
先程も言ったように、ガラスのコップはけっこう代替わりが激しいが、厚めの瀬戸物、スプーンやフォーク、大きなお皿などはかなり昔のものだ。
うちは今の家に引っ越す前は、自分の実母の実家である亡くなった祖父の家に住んでいた。実家の空き家対策のためだったが、家電以外の祖父の物はだいたい受け継ぐことになった。
そこには、何でも取っておく祖父の性格が幸い(災い?)したのか、昭和の生活用品が溢れていたのだ。
ちなみに、その家で育った自分の実母も祖父と同じ感性の持ち主である。
その中でも、我が家では今でも現役で愛用されているものがあった。
いつだったか、家族でテレビを観ていると『懐かしい昭和の生活用品』とかいう特集をしていた。
「これは何でしょうか?」
軽快な司会の芸人が簡単なクイズ形式で、昭和の時代に使われていた物を紹介している。
そして、そこで紹介されたのが以下のような食器だった。
『先割れスプーン』
スプーンなのだが先が三又に分かれたもの。
『いちごスプーン』
いちごを潰しやすくするため、先割れてるプラス平べったくしてある。オシャレにいちごの模様あり。
『グレープフルーツスプーン』
先が細く、ギザギザしているスプーン。グレープフルーツの中身をそれでくり抜くようにする。
『フルーツフォーク』
小さな二股のフォーク。小さな果物なども刺しやすい。
…………という、いわゆる『専用』に使われるもの。
昭和の日本人というのは、けっこう細かいところに心血を注ぐ気がする。
令和を生きるうちの息子には“○○専用”と、それだけを食べるために存在する食器が不思議に思えたようだ。
(゜∀゜)「変なのー!!」
( ´-ω-`)「………………う〜ん……」
( ¯ω¯ )「どしたん?」
( ´-ω-`)「…………ほとんど、うちにあるよ?」
ガチャガチャ…………
自宅の食器入れのスプーンやフォークを出した中に、テレビで紹介されたものがズラリと。
(゜∀゜)「おんなじ!!」
( ´-ω-`)「うちのじいちゃん、こういうのは大事にとっとく人だったからなぁ。実家にも同じものがあるし」
両親が共働きだったので、夏休みや冬休みの日中は祖父母の家にあずけられていた。
早くに亡くなった祖母が生きていた時、小さかった自分のおやつにフルーツがよく出てきたのだ。
( ´-ω-`)「ガラスの器にフルーツ入れて、テレビで言ってた専用スプーンやフォークで食べるのよね」
いちごは練乳が掛けられ、器の中で『いちごスプーン』で潰しながらたべる。
グレープフルーツは横に半分に切られ、砂糖が掛けられていたものを『グレープフルーツスプーン』でくり抜きながら食べる。
輪切りされたトマトとかにも砂糖が掛けられ、それを『フルーツフォーク』で刺して食べていた。
↑↑↑↑↑
昭和のばあちゃんは何故か必ず、砂糖や練乳、塩、はちみつなどをぶっかけてくる。おやつのひと工夫だろうか?
( ¯ω¯ )「懐かしい?」
( ´-ω-`)「じいちゃんばあちゃんは懐かしいけど………………食器は現役でしょ?」
(゜∀゜)「デザートに使ってるよねー!!」
さすがに『いちごスプーン』『グレープフルーツスプーン』は、それ専用だが昔と食べ方も違うのであまり使ったことがない。(いちごは潰さないし、グレープフルーツは皮を剥いて食べるため)
しかし『フルーツフォーク』は使わない週がほとんどないほど、我が家では当たり前に使っている。
( ´-ω-`)「あー、でも……そうか、コレって昭和の遺物だったのか。どおりで店でも同じものを見ないはずだよ」
実は自分の実家でも、当たり前のように『フルーツフォーク』は使われていた。だから、結婚する時に新しい食器を探していたのだが、どうしても『フルーツフォーク』だけが同じものが見つからなかった。
( ´-ω-`)「……似たようなのも無くてね。しかも、実家では『フルーツフォーク』などという、オシャレな名前で呼んでなかったから店員さんにも聞けなかったの」
( ¯ω¯ )「そのまま“フルーツに使うフォーク”だよね?」
( ´-ω-`)「いやいや……実家では『つくんこ』って呼んでたのよ」
さすがに『つくんこ』が真の名前ではないことは、大人になった自分も気が付いた。
しかし、実家では一度も正式名称で読んだことがなかったので、よもや“フルーツに使うフォーク”という当たり前の発想が出てこなかった。
ちなみに、これは本当にフルーツ以外にも使い易く、楊枝の上位互換だと思っているほどだ。
( ´-ω-`)「そうか……お前の名は『フルーツフォーク』というのか…………今まで“アダ名”で呼んでたなぁ」
新しいものは見付からなかったが、祖父から継いだ『フルーツフォーク』はたくさんあったので、それを我が家で大事に使っている。
後日。
( ´-ω-`)「ようかん食べるひとー?」
(゜∀゜)( ¯ω¯ )「「はーい」」
( ´-ω-`)「皿と『つくんこ』出してきてー」
…………『つくんこ』やめられない。
意外と皆さんの家にも、世間では『遺物』と言われるものが、知らず知らずのうちに名前を変えて当たり前に出ているかもしれない。
( ´-ω-`)「便利よ、アレ」
最近はネットで探したら、昭和のものに近いのもあるみたいですね。良いものはまた世に出てくる。
昭和レトロ万歳。
【追記】
イラストから『フルーツフォーク』を『姫フォーク』とも言うことを教えていただきました。なんと、『いちごスプーン』と共に日本生まれだとか。
他にも『メロンスプーン』や『カツカレースプーン』『スパゲティフォーク』など専用のものが多い!
用途を考えて使い分けできるのが面白いと思います!
このエッセイを書く際に、ネットで『フルーツフォーク』を検索。
似たものは普通に出てきた。店売りで見た事なかったのに。
( ´-ω-`)「旦那さんや、ネットに『フルーツフォーク』が売られておった……」
( ¯ω¯ )「良かったね。買うの?」
( ´-ω-`)「いいや。今、うちにある子たちを大事にしたいの」
(; ¯ω¯ )「情が移りまくってるねぇ」
たぶん、新しいのをお迎えするのはずっと後。
昔の食器って頑丈だし。




