第四十幕 魔帝降臨
まあ、いいや。
■■■
「どうして、自分をこの世界に呼んだんですか?」
ただ、それだけ。
ただ、それだけの言葉が牢獄の部屋に響いた。
ベットに座りながら上半身だけ起こした体勢で、左目を包帯で塞ぎながら右目のみで自分は“犯人”を見つめる。
そう、目の前に立つチェルシー・トルバンフォを見つめる。
「ほぇ? いったいぜんたいなんのことでげすか?」
無意味に両腕で己のツインテールを引っ張りそうのたまうチェルシー。そのふざけた姿を無視して話しを続ける。
「だから、どうして自分をこの世界に召喚したのですか? その理由を教えて下さい」
「しょうかんー? なんのことだかさっぱりですたい? 色々あって疲れてるんですよ人間。ちょっとお休みしなさいな」
噛み合わない会話。
お互いに空気を読まず話すからラチがあかない。
なら、
「・・・では、質問を変えますね」
ベットに座ったまま、真っ直ぐチェルシーの碧眼を見上げて喋る。
昼過ぎの空気は妙に静かで、妙に湿ってて、妙に暑くて、恐いくらいに冷たい。
自分を見下ろすチェルシーさんの顔が、ふざけた笑みを浮かべているのに、
何だか恐い。
でも、無視する。
でも、喋る。
「チェルシーさん。ねぇ、チェルシー・トルバンフォさん。
どうして、
どうして貴女は、
魔帝になろうとしなかったのですか?
」
「ほえ?」
キョトンとした表情になるチェルシーさん。
こいつ何言ってるんだ?って目で自分を見下す。
「なっ、どうしてあっしが魔帝にならないとか言われないといけないんですっきゃ?」
ぬふーーと、息を荒げて疑問を口にするチェルシーさん。
それをつまらなそうで見上げる自分。
嗚呼、なんかめんどい。
疲れるから方針変更。
というか、別に自分は探偵でも刑事でもないんだから勿体振る必要も理詰めで順序よく語る意味も無いんだよね。
つーことで
「はぁー」
息を吐く。
仕切直して
「もう一度聞きますね、
チェルシー・トルバンフォさん。
いや
チェルシー・フォン・バルトさん。
ねぇ、
エーリカ・フォン・バルトと同じ家名を持つ貴女に聞きます。
どうして、自分をこの世界に召喚したのですか?」
■■■
トルバンフォ
トルバ・ンフォ
逆さまに読んで
フォン・バルト
実にくだらなくて、正にしょーーーもない。
そんな解答。
偶然?
かもしれない、けれど
「あーーー・・・」
と、天井を仰いで
「・・・そこまで知っているんですねー。ふふ、やっぱり貴方は油断できない人間でーすね」
こう言ったチェルシーを見る限りは、偶然じゃなくて正解みたいだ。
ふふふと、穏やかに、まるでエーリカのように笑うチェルシーさん。さっきまでのふざけた動きも妖しげな言動も止め、真っ直ぐに、威圧するでもなく、恐喝するでもなく、慈愛に満ちてるわけでもなく、感嘆する風でもなく、ただ普通に、どこか自分と似たような覇気の無い瞳で自分を見下ろしてきた。
オーラなんか感じれなくても解かる。雰囲気が様変わりしたのが解かる。
その、チェルシーさんだったチェルシーさんが口を開く、
「ふふふ、ふぅ、あーーあ。もう少し”外“から眺めていたかったのになー」
口調は軽いけれど、視線は重い。
「ねぇ、これは純粋な好奇心なのだけれど、どうして私が魔帝が一族に連なる者だと解ったのか教えてくれるかしらー?」
言いながらチェルシーさんはスタスタと歩き、自分の座っているベットに腰掛ける。自然、自分と目線の高さが合わさる。見下げるでもなく見上げるでもなく同等、同じ、対等。自分より遙かに強い魔族の方にわざわざ降りてきてもらったのだから説明しましょう。
迷探偵よろしく、
迷刑事よろしく、
迷推理よろしく、
ね。
では、解答編です。
息を吸い、深呼吸して、さぁー言ってみよう。
「勘です」
「却下!」
「なんとなく」
「ふざけんな」
「ヤマ勘です」
「最初と同じ」
「虫の知らせかな?」
「疑問形になってる」
「顔に書いてありました」
「そんな訳ないでしょう」
「ある夜の事なんですが夢の中で全知全能と名乗るミーキャット族の神様てかミケさんが貴様に神託を授けると言いい光と共に聖なる言霊が七色に輝き轟き」
「長いしデタラメ過ぎるし理由になってないし意味不明だし無茶苦茶だし収拾がつかなさそうだしというかミケが出て来る時点で嘘って分かるわって夢ぇ?」
「冗談ですよ」
と、右手を上げる。
「この状況で冗談とか最悪ねー君」
と、チェルシーさんは笑った。
まあ、最初にふざけていたチェルシーさんに対する当てつけみたいなモンです。
まあ、いいや。
気を取り直して
んじゃあ真面目に解答編
「まずは名前ですよね。トルバンフォとか手抜き過ぎるでしょう」
「あら? 単純だからこそ誰も疑問に思わないのよ? 逆から読んだら閣下と同じなんて酒の席での戯言と同じ扱いなのよー」
「そういうもんですかね・・・まあ、それはきっかけでして、他の理由としましては自分の部屋で見付けたチェルシーさんの髪の毛ですね。そね茶色の髪の毛って染めているんでしょう? 拾った貴女の髪の毛は生え際が金色でしたからね。つまりは貴女の地毛がエーリカさんと同じく金髪だということ」
「あーーー、流石に私も抜け毛までは気をつけてつけなかったわー」
てへっと、舌を出す仕草を無視して話しを続ける。
「後は貴女の行動ですね。つーか不自然過ぎですよ。
自分の部屋で休んでいたり」
「あーー、君の正体を調べていた時ねー、いきなり君が入ってくるから逃げそびれたのよー」
「ドーラ公爵が美人局集団を連れてやってきた時も現れましたし」
「あの時ねー。ドーラ公爵に呼ばれたからいい機会だと思ってちょっと大胆になっちゃったもん」
「ミケさんじゃあるまいし、エーリカと雑談するメイドなんてありえないですからね。まあ、そのエーリカは全然気づいてなかったようですけど」
「ふふ、だって久しぶりにエーリカと会話できたんですもの。楽しくってつい」
「後は・・・髪型を変えたことですね。反乱討伐に行く前はセミロングだったのに、凱旋して戻ってきたらツインテールに変えていた。
ロングだったエーリカさんがラクトアで断髪してセミロング近くに変わると、避けるように貴女は髪型を変えた」
「少しでもエーリカとの接点を減らしたかったのよー。それにツインテールって可愛いいじゃなーい?」
「はぁ、それにはお答えかねますけど・・・とにかく、とにもかくにも貴女は自分との接点が多過ぎだったんですよ。それこそ不自然な程に、ね」
支離滅裂なキャラクターで気にならなかったけど、冷静に思い返してみれば違和感だらけ。
強いて言えば、チェルシーさんが登場した時全部がフラグだったようなもの。
木を隠すなら森の中、嘘を偽るなら嘘の中。
思い返せば、『大臣将軍』と出会う時には既にチェルシーさんは自分に接触していた。ただのメイドのはずなのに自分に名前教えていた。
思い起こせば、『銀髪赤眼』のにーちゃんと遭遇する前に出会っていた。
振り返れば、『赤目猫眼』の話の途中で解ったのだけれど、どうしてかシュルツのにーちゃんに不自然に情報を伝えていた。
記憶を捲れば、『凱旋帰宅』した最後に、髪型を変えて自分の部屋に侵入していた。
記憶を探れば、『平日業務』をしている時、自分と接点が多いミケさんと買い物に行っていた。それは、自分の事をミケさんから聞きだす為だったのかもしれない。
記憶が確かなら、『表裏秘境』なドーラ公爵が変装してやって来た時、醜い商人を案内してきたのはチェルシーさんだった。自分の事を探りにきたドーラ公爵を案内してきたんだ。あの後にも不自然なタイミングで着替えを持ってきてたしね。
『焼肉低食』を持ってきた時は・・・別にいいか。
とにかく、なんだかんだで怪しい行動を、自分を探るような行動をしていたような気もするようなしないような、そんな感じだったわけだ。
まあーでも結局は
「ほとんど勘っだたんですけどね」
「勘?」
「そうです勘、勘、まさしく勘。いくらなんでもさっきの理由で貴女が自分を召喚したんだ! チェルシーさんは魔帝の一族だ! なんて、思っても断定はしません。出来ません。間違ってもいいや気分で喋ったんですよ」
「あら? でも私は最初否定したわよ?」「いきなり認めるとは流石に思ってませんでしたからね。本当は理由を説明してからもう一度問いかけるつもりだったんですけど、結構あっさり白状してくれたんで驚いてます」
「驚いてます・・・て、違っていたらどうするつもりだったのよ」
「どうもこうも適当にごまかすだけですよ。元より自分は人間ですからね。何も関係ないなら自分の言葉を信じたりしないでしょう? 冗談ですって言えば終了です」
「本当・・・君って最悪だわ・・・」
「照れますね」
「褒めてないわよ」
と、チェルシーさんは自分を見て笑い。自分は天井を見上げて苦笑いした。
「さて、それじゃーそろそろ本題に入りましょうか」
「そうね・・・と言っても何から話せばいいのかーしら・・・?」
「そうですね、んじゃーまずは貴女が、チェルシーさんがエーリカさんとどういった関係なのか教えて下さい」
「・・・そこはあんまり言いたくないのだけれど、ふぅ。仕方ないわねー」
なんて、溜息をしてから窓を、まどの外を眺めるチェルシーさん。その碧い瞳には、懐かしむような、自虐するような、そんな影を写してチェルシーさんは喋り始める。
「簡単に言えば・・・私とエーリカは姉妹なのよー」
なんでもないように爆弾発言投下。
マジで?
似てねーよ!
「と言っても腹違いだけどね」
つーことは・・・
「よくある話よ」
と、自分を無視してチェルシーさんは話し始める。
むかーしむかしと語りはじめた。
■■■
「あるところに王様がいました。その王様にはお妃様と生まれたばかりの娘がいて幸せな家庭を築いていました。ところがある日、王様がお忍びで城下町を散策していると、とある花売りに出会いました。王様はお妃様に綺麗な花でも買って帰ろうと思い花売りに話しかけます。ところがその花売りの女性の顔を見た瞬間にあろうことか一目惚れ。ついでに花売りも王様に一目惚れ。さあー始まった身分違いの恋物語。一輪の花を買った王様は花売りにまた来ると言ってその場を去ります。花売りの女性は待ってますと言いその場に留まります。それ以来王様は機会を見ては頻繁に花売りに会いに行き、花売りは毎日毎日王様を待って街に立ち続けました。そうして王様と花売りの女性はどんどん親密になり、やがてある祭の夜に越えてはいけない一線をめでたく越えて
私誕生!
」
パチパチパチパチと拍手しながらも、視線は窓の外。鉄格子の向こう側。
「・・・ふぅ。まあ、後は御想像の通り。しまった、どうしよう、やっちゃったと焦る王様。久しぶりに会った花売りの女性に、アナタノコドモデスなんて膨らんだお腹を見せられたら顔面真っ青になっても仕方ない。そうこうしてる内に王様の様子を怪しんだお妃様が花売りの女性のことを知ってしまう。怒り心頭お妃様。王様に真実を怒りの拳で聞き出します。
ー私を愛してるの?
ー愛してます。
ーあの女を愛しているの?
ー・・・愛してます。
甲斐性無しの王様に呆れたお妃様。そのまま城下に突撃。花売りに会いに行きます。ところが花売りが立っていない。ならばと花売りの家に突貫したお妃様が見たのは、生後十日程の赤ん坊を抱きながら今にも死にそうに寝ている女性でした。
ですがお妃様は問答無用に聞きます。
ーあの男を愛していますか?
女性は答えます。
ー愛しています。
ーでは、あの男と結婚している私が憎いですか?
ー・・・いいえ。あの方が愛した貴女をどうして憎めましょう。それよりお願いがあります。私はもうすぐ死にますが、どうか残されるこの子を憎まないで下さい。貴女の怒りならば私が受けますから。
ー・・・まさか。私が愛したあの男の子供をどうして私が憎めましょう。あの男が貴方を愛したならば、私も貴方を愛しましょう。貴方の子供を愛しましょう。残された貴方の娘を愛し守りましょう。
ー安心しました。これでゆっくり逝けます。
なんて、安らかに旅立つ花売りを見送りったお妃様。生まれたばかりの子供を連れてお城に戻る。泣いてばかりの王様を置いて花売りの子供を育てる宣言。だけれど親友の若い公爵様が言います。
ー庶子の子供は争いの元です。やっちまえ。
と、だけれどお妃様は負けずに言います。ー私はこの子を守ると決めたのです。だからこそ、例えあなたであっても、例え私の夫であろうとも、この子を傷つけることは私が絶対に許しません。
真っ直ぐなお妃様の言葉に若い公爵様もつい折れます。でもやはり王様の子供とするのは将来的に害をなすとして、その子供を公爵の部下の子供として、トルバンフォと名乗らせ育てることにしました。そしてお妃様の娘の遊び相手としてお城ですごします。
やがて成長した子供はお妃様の目がちゃんと届くようにお城で働くようになります。
ところがある日、お妃様が病に倒れ、そのまま亡くなってしまいます。ついでに王様もあっさり亡くなってしまいます。
そうして新たに王様になった前王の娘でしたが、弱虫な性格のため周囲から飾り姫や、無能帝と呼ばれます。でも成長した花売りの娘はそんなことなどお構いなしに過ごしていました。
が、ある夜のこと公爵様がやって来て言います。
ーアナタは前王の娘だ。今の王ではやがて謀叛がおきるかもしれないから、いっそアナタが王になるべきでは?
成長した花売りの子供は言いました。
ー私が前王の娘だというなら、私と今の王は姉妹だ。小さいころから遊んできた姉妹だ。その姉を裏切るなんてできないし、なにより私は今の王が、少し頼りないけど、大好きだ。
と。それを聞いた公爵は言いました。
ーわらわも大好きよ。
と。
そうして花売りと王様の娘は王になることもなく、平和に大好きな姉の近くで暮らしましたとさ。
めでたしめでたし」
■■■
・・・・・・
「いや、めでたしめでたしで終えないで下さい。と言いますか、一言いいですか?」
「ふぅー、何かしら?」
「長い」
「心を込めたのよ」
なんて言いながら笑うチェルシーさん。誰にも言えなかった秘密を喋れてスッキリといった感じだ。
まあ、いいや。
とりあえずチェルシーさんのことは解った。
なら次は
「どうして、自分をこの世界に召喚したのですか?」
ド本命だ。
「あーーー本当はねー、勇者なんていうのを召喚したかったのよ」
勇者?
いきなりファンタジーな奴がきたね。
「ほら、私って一応魔帝の一族じゃない。だから召喚魔法が使えるのよ。それで魔帝一族しか入れない部屋で勇者を喚ぼうとしたらいきなりエーリカが部屋に入って来て、慌てて脱出したもんだから魔法が中途半端に発動しちゃったのねー。もう、『何か来た!』って解ったのに結局確かめられなくてねぇ。後で確認したら君がいて、でも君が何者なのかはわからなくてー仕方ないからミケに聞いたりドーラ公爵と一緒に調べたりしたのよ」
てへっ・・・と、いたずらに失敗したような笑顔で語るチェルシーさん。気が付けば口調が普段とは全然違う感じになってるし。
まあ、そんなことは置いといて。
「勇者・・・ですか。なんでわざわざ勇者なんかを喚ぼうとしたのですか?」
魔が付くこの国には真逆もいいところのチョイスだろそれ。
「簡単よ。勇者を召喚したら適当に暴れてもらって、その後にエーリカに討伐させるの。そうすればエーリカは人気者。みんな笑顔になって万々歳」
「勇者が可哀相ですって、それ以前にエーリカに勇者を倒せると思ってたんですか?」
「うーーん、いざとなったら毒でも盛って弱ってるところを襲わせようと計画してたんだけどねー。それにー元々召喚魔法が成功するとは予想してなかったのよ。どうせ駄目だろうなーって半信半疑に発動させてたからねー」
こいつ腹黒れーよ。
つーかなに、自分はそんなダメでもともとな計画で召喚されたのか!
「でも良かったわー。君は勇者なんかじゃなかったけど、無事にエーリカは人気者になれたし、それどころか前とは比べものにならない程立派になったもんねー。公表できない妹としても嬉しいわー」
流石私がは喚んだ人間ねーと無駄に誇らしげなメイドから視線を天井に移して考をまとめてみる。
つまり、
・自分を召喚したのはチェルシーさん。
・理由は勇者を喚ぼうとして失敗したから。
・召喚魔法が使えたのは魔帝の一族だったから。
うん。
何て言うか、なんて言えばいいのか、これだけは言っとこう。
「そりゃねーよ」
特に失敗してるあたり。
「ふふふ、ごめんなさいねー。確かに君には悪いことしたわね」
なんて、自分の心からの呟きに対して、誠意とか誠実とかを1ミクロンも感じさせずに謝るチェルシーさん。
せめて視線は窓から移せ!
「反省してるわー」
うわぁ、殴りてー。
少なくとも自分と同じように左目と左腕に怪我をしろ!
とか、
とかまあ、
とかまあ、もういいや。
過ぎたことはとりあえず置いとこう。
解答編はもうオシマイ
ネタバレは、はい終了
そろそろ続きを始めましょう。
大事なのはこれからのこと、今からのことだからね。
では、
「ではチェルシーさん」
「ほぇ?」
ようやくこっちを向いてくれたツインテールメイドを真っ直ぐ見る。
右目だけで見る。
「これから、これからどうするのですか? 自分をいったいどうするつもりですか? 貴女はいったい何をするのですか?」
問い掛ける。
先生、人生の質問があります、だ。
先生の解答は
「どうしようかしら?」
ですって。
「まさか今、君に真実を喋ることになるとは思ってなかったからねぇ。考えとなかったわー」
と苦笑いするチェルシー。
なら自分から言わせてもらおうかね。
「それじゃあチェルシーさん、こうしましょう。
自分をまずは送り返して下さい。
そして貴女が自分の代わりにエーリカさんの隣に立ってあげて下さい」
ってね。
反応は
「無理よー」
まあ、予想通り。
「君を送り返すのは構わないけれど、私が君と代わるのは無理ねー。閣下は、姉さんは私のことなんか知らないしー、今更妹ですって現れても混乱させるだけよー。私が魔帝の一族っていう秘密は、私と公爵様だけが死ぬまで秘密にすることなのよー」
ふふふ、ふぅ。と笑って溜息を付いたチェルシーさん。そのどこか悲しげな表情に向けて自分は言う。
「その秘密、もう手遅れです」
「ふぇ?」
驚く声を無視して天井を見上げる。天井板を見上げる。
つられて天井を見上げるチェルシーさん・・・と
パカリ
と、なんの予兆もなく天井板が外されて
スッと暗闇の中から金色と漆黒の存在が、優雅に、そして圧倒的に降りて
ヒューーー・・・ドシンッ!!
・・・・・落ちてきた。
「ふえ? ほえ? へぇ?」
呆然唖然とするチェルシーさん。
その見開かれた視線の先には、床の上で痛そうに腰をさする魔族の女性
そう!
我らが愛すべき馬鹿帝! エーリカ・フォン・バルトが乱入してきた。
「あうーーー痛たたたたた」
いつもの情けなさと一緒にね。
では、
いらっしゃいオチ担当。
いらっしゃい遅れてきた主人公。
ついでに
「きひひひひ」
「だっ、大丈夫でございますかエーリカ様!」
いらっしゃい銀髪赤目のにーちゃん。
いらっしゃい天衣無縫のミケさん。
「ふえ? ほえ? へぇ?」
ゆっくりしていきなよチェルシーさん。
さぁーこれで役者は揃った。
それじゃあー、終わりを始めようか
この最悪なる世界の物語のね。
「イッ、イッヒ~、こ、腰がぁ~~~」
・・・シリアスなんだけどなー。
諸事情により、更新後すぐ削除するという掲載ミスがありましたことをこの場をお借りして謝罪いたします。
申し訳ありませんでした。
そんな訳で四十話です。
サブタイトルがオチです。
チェルシーが登場したとこほぼ全てがフラグというオチです。
トルバンフォがフォン・バルトだったというオチです。
なんかゴメンなさい。
さて、ちょっとしたことなのですが、作中にて『』内に漢字四文字が書いてるのはサブタイトルになっています。「二話参照」とか書きたくなかったのでこうしました。
はてさて、それにしても動かない主人公ですねー。前話から歩いてすらいませんね。そしてヒロインがほとんど不在。
はてはて、これもちょっとしたことなのですが、チェルシーの一人称はエーリカと同じ『私』です。まあ姉妹ですから。
といった感じです。
蛇足なのですが、最終話の後にエピローグを書くべきかどうか悩んでいます。何かご意見がありましたら教えて頂けると嬉しいです。
それでは次回もよろしくお願いします。




