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第三十七幕 逃争終猟


位置について


ヨーーイッ















■■■











「ハッー

走る

「ハッー

走る

「ハッー

走る


ハハハハハハハハハハ


走る走る走れ走れ走る走る走れ走れ走る走る走れ走れ走る走れ走走る走る走る走る走る走る走るれ走れ走れ走れ走れ走れ走れ走れ走る走れ走れ走る走れ走る走れ走る走れ走る走れ走る走れ走る走れ

生きたいから

死にたくないから

殺されたくないから

走る

走れ

「ハッー

がむしゃらに腕を振り

「ハッー

しゃむにむ足を回し

「ハッー

走って走って走りまくる




飛び出した自室から、レイモンドと目と目が合い、呼吸する間もなく右にダッシュして始まった逃走劇

三歩踏み出して扉が閉まる音が聞こえ

更に三歩踏み出したら扉がおもいっきり開く音が聞こえ 

「ーーーー!!!」

また三歩踏み出す間もなく怨嗟のこもった怒声が聞こえたけれど、振り向く勇気はないからそのまま駆け出した。全力ダッシュ、最初からトップスピード。

勿論廊下に置いてあったデカイ壺を台ごと倒すのを忘れない。

ガッシャン!

「!!貴様ー!?」

地味に有効?

そんなことは気にせずただ走る

走る

薄暗い廊下を、真っ赤な絨毯が敷かれた廊下を、豪華絢爛な廊下を

正しいフォームなんて考える暇もなく、両腕をちぎる覚悟で振り回し、両足がもげるつもりで踏みしめる。

走る

走る

必死に決死に走るってぇぇぇ

「っー!!」

つきあたりぃぃぃぃならぁぁぁ左ぃぃぃぃ

「!!」

んで階段ーーー「ハッ!?」を、二・三段飛ばしでかけ降りる。


訂正


転げ落ちた。

階段ではなく、階段に置いてあった“何か”につまづいて転げ落ちた。

「っぁーー!?」

そして見てしまった。

本能的に立ち上がって走り出しながら見てしまったんだ、階段に倒れ付す甲冑姿の死体を

力なく腕を伸ばし、真っ赤な絨毯を更に赤黒く血で染め、虚ろな眼球で自分を見つめるその死体を、


「ひっ!」

瞬間、酸欠の気味の脳髄が自分自身の死体を捏造した、掴まったらああなるぞー追い付かれたらああなるぞーと幻覚を見せ付ける。

いや、わかってるからな脳ミソ! そんなもん見せなくても知ってるって!

知ってるから走ってるんだよって!

「っぁ!?」

二個目の死体発見!

階段から転げ落ちてすぐさま右に曲がった廊下にこれまた鎧姿の屍発見!

「ーーっ!」

そのうつ伏せに倒れて真っ赤な模様を描く死体を飛び越える。 

吐きたい衝動を堪える

気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い

でもそれ以上に

恐い恐い恐い恐い怖い怖い怖い怖い怖い怖い

なにより

死にたくない

神様神様神様神様神様神様神様神様神様神様

助けて助けて助けて

シュルツさん!衛兵さん!見張りは!?巡回は!?

誰でもいい助けて!

なんで誰も廊下にいない!?

助けて

たすけ


「このっ、いい加減ちょこまかと!」

「!!」

後ろから聞こえてきた罵声に息が詰まる。

あまりに恐いから、まるで高所恐怖症なのに崖の下を眺めてしまうように、我慢できず振り向いてしまった。

一瞬、暗闇の中を追いかけてくる金髪の左手にデカイ氷塊が煌めいた。

脊髄反射的に路線変更

全力疾走しながら無理矢理右手で壁の柱を掴んで進路変更、木製の豪華な柱に食い込ませた指が汗でズルリ滑るけれどなんとか成功

瞬間

ビュオーッ

と、背中を何かが掠めて通りすぎた気がした。

つーか絶対にさっきの氷塊が飛んできてたって!

死ぬ、死ぬ、死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬって

「ハッ!」

また階段ー!?

「逃げても無駄だよ!」

ひっ!!

「ハッひっ!」

追撃者の声に心臓が飛び上がって、連動して足も飛び上がって、多分十何段ある階段をわずか三歩で駆け落ちる、いや、飛び落ちる。 

股からピキリと何かが切れる音がしたけど無視 

「あがっ」

勢い余ってズダンと壁に激突 

痛い、苦しい、そして痛い、休みたい

けれど

「ひっ!」

階段に足を踏み出そうとしている金髪が視界に見えると反射的に脚が思考とは別に逃走を開始

「ハッー

前に

「ハッー

更に前に

「ハッー

右足を前に

「ハッー

左足を前に

「ハグゥッ

息が詰まっても前に

ダダダダダという自分の足音に、タタタタタというレイモンドの足音が重なって、ハッハッハッという自分の荒い呼吸音に、無言で追跡してくるレイモンドの恐怖が鼓膜を揺さぶる。

「ハッこの!」

廊下に置いてある壷とか甲冑とかよくわからない調度品をかたっぱしから倒して逃げ回る、少しでも邪魔になるように、純粋がスピードだと絶対に勝てないから障害物を造って逃走する。

でも

「ひっ」

首だけ振り返って見た後ろには、さっきより近づいている金髪

迫りくる死の恐怖に心臓がありえない回転数で両足を動かす

と、

「っ!?」

右足、いや、左足か? どっちでもいいから足に“何か“が引っ掛かり転びかけた

もつれる両足をなんとか制御して、左手を壁に叩きつける勢いを利用して転倒するのを防ぐ、その時、前のめり姿勢になった視界に写りこむ本日三回目の”何か”

「っぃ!!」

その真っ赤に染まった”何か”

その事切れた生命を見てなんとなく確信する

 

ああ、助けを呼んで叫んでも無駄なんだな


っと、

であえーとか、曲者ぞーとか、敵襲ーとか、シンプルに助けてーとか叫んでも無駄なんだろうなーと理解した。

準備がいいというか、抜け目が無いというのか、見張りを片付けてあるから追いかけてきてんだろうなーと酸欠の脳髄で自己逃避

してたせいか

「!!」

グシャっと、嫌な音がして

ドンっと体が前に押された気がして

バンッと左腕が前方に跳ね上がって

真っ赤に染まってた

「ひはっ!?」

小さく飛び散る血飛沫の中、スローモーションになった視界を先端を赤くしたバスケットボール大の氷塊が飛び去っていうのが分かった

ああ、やられたんだなーとちょっとだけ冷静になって

「はひひはははは」

痛くて熱くて痛くて冷たくて痛くて怖くて痛くて痛くていたくて

「っち、掠っただけか!」

後ろからの声が聞こえたけれど気にならなくて

ただ、服が破れて地肌が露出した腕が綺麗なくらい赤くなってて、感覚が無くなった指がフレミングの法則みたいになってて

「日ははは火ひひっはは派はっはははっは歯は刃はひひ非ひひ」

なんだか笑うしか出来なくなって

折れたのか抉られたのかわからなくて

猛烈かつ痛烈かつ激烈な痛みが襲ってきて

酸素が届かない脳のせいで真っ白になっちゃて

追いかけっこにはもう疲れから


思いっきり体重と勢いを乗せて


バンッッ!


と、目的の部屋に体当たりで飛び込んだ。





■■▲




ちょっとしたトリビアなんだけど、いや、もしかしたら自分の記憶違いで間違っているのかも知れないけれど、日本のドアは外側に開閉するのが多くて、欧州とかだと内側に開閉するのが多いらしい。それは家の大きさだとか、スペースに余裕があるないだとか、玄関で靴を脱ぐ脱がないだとか理由があるらしいのだけれど、まあその辺は割愛して。

このファンタジーな世界でもドアは内側に開閉するので、頑張れば自分でも警察の突入よろしくドアを体当たりでブチ破れた。


そんなどうでもいい事を脳震盪仕掛けた頭で考える。

飛び込んだ真っ暗闇な部屋の中、うつむけに倒れた体制からよいしょと立ち上がる

「ぜは、ハッ、ハッ、ハッヒハ、ヒヒ、ハッ、ギギ、ゼハハッ」

荒い呼吸で酸素を吸引

肩を上下させながら自分が飛び込んだ入口を振り返る

『起きろ、起きて、起きて下さい』

自分の思考回路

『しっかり、ちゃんと、状況を把握して下さい』

自分の脳ミソ

『静かに、冷静に、慌てず行動してください』

自分

いいかな?

じゃあ・・・

『よし、やろう』

心で呟き覚悟を決める。

ポタポタと左腕から血が落ちているのが分かる。バクバクバクバクバクバクバクバク狂った心臓に合わせてズキズキズキズキガンガンガンガン痛みが狂う。

『こりゃ本気でヤバイなぁ、バレないようにいかないと・・・』

不思議なくらい冷静になって思った呟きをしたところで


バンッと!


金髪イケメンのレイモンドが部屋の入口に現れた。

「!!」

そして驚いた表情で固まる

そりゃそーだ、さっきまでみっともなく逃げ回ってた自分が部屋の中で待ち構えていたら驚くだろう。

少なくとも警戒はする

警備の衛兵を事前に無力化させるくらいに慎重なレイモンドだからこそ迂闊に近寄らない。

その分自分の寿命が延びるって寸法だねっと考えながら向かい合う

逃走劇前のように、逃走劇前以上に暗い部屋の中で向かい合う


「・・・・・」

片や無言で油断泣くなく睨む金髪野郎

「ぜい・・ぜぇ・・・ぜは」

片や、というか息も絶え絶えな自分


『寝ている最中に襲撃されて〜命からがら逃げたらここでしたっと』

そんな酸欠気味な頭で呟く

『きっと自分は殺されて〜エーリカさんも殺されて〜ミケさんだって殺される〜』

まるで歌のように未来を想像

『死にたくないけど殺せない〜武器も度胸もないから殺せない〜』

まるで唄うように未来を嘆く

と、


「くく、覚悟を決めましたか? それともまた醜い嘘でも吐いて逃げ回る腹積もりかい?」

なんて余裕釈釈に言いながら右手に持った剣を自分に向けるレイモンド

それに対して、ちくしょう! なんでこっちは息が上がる程疲弊してんのにアイツは全然疲れてねーんだよ。とか場違いな感想の自分

うん、軽く以上にテンパってる。

誰か助けて







まあ、誰も助けにきてくれないけどね。

助けてくれないから、助かる為の命ごいをしますか。

『奇跡まで、ちゃんと英雄が起きて準備を完了させるまでの時間稼ぎをね。まだまだ機会じゃないから、助けが来る場面じゃないですからねっと』

つーことで痛みを堪えて喋ります。

「ぜぃ・・・ねぇレイモンドさ「おっと! 君には喋らせないよ」

あれ?

「君の武器はその口なんだろう? 閣下を騙し、ドーラ公爵をいなし、グナイゼナウ大公をたぶらかし、この僕すら陥れたんだろう? さっきので確信したからね、君を喋らせたら危険だって、魔力なんてなくても君は最悪だってね」

あらら?

なんかヤバくないですか?

今自分から口先を取ったら何も残らないんですけどー。とか考えてる場合じゃない!ええい、何がなんでも喋らなきゃ。傲慢そうに余裕ぶっているのに隙も油断もないレイモンドをなんとか慢心させないと・・・こっちのペースに乗せないと。

「いやいやそれは間違「黙れよ」

なんとかきっかけを掴もうと喋りかけた瞬間

レイモンドの静かな叫び声と一緒に、ギラリと煌めく剣先から野球ボール大の炎が現れて、飛んできて、飛んできて

「がゃっ!」


自分の左目付近にデッドボール!


つーか痛い、熱い、痛い、熱い、痛い、痛い痛い痛い熱い熱い熱い熱い熱い痛い熱い痛い熱い痛い熱い痛い熱い痛い熱い痛い熱い痛い熱い痛い熱い痛い熱い痛い熱い痛い

「ぁ・・・がぁ・・・」

無事な右手で左目付近をおさえる。ぐちゃりと嫌な感触が脳髄に伝わる。

「ひぃ・・・ぎゃ」

痛い痛い痛いいたい痛い痛い嫌だ嫌だ嫌だ嫌だいや嫌嫌嫌嫌いや嫌痛い熱い痛いいたい熱い痛い嫌だ嫌痛いぃぃ

『黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ』

喚き叫ぶ思考と驚き駆け巡る声を理性と念で押さえ込む。

『落ち着け落ち着け、まだ生きてます。まだ立ってます。まだ機会じゃない。まだ終わってません!』

と、思考沈静中に

体制を崩して悶えたせいか、さっきの炎のせいなのか、ガシャリと音を立てて、コーンと渇いた響きを残して、

自分の被るトンがってた帽子兜が床に落ちた。

ついでにハラリとバンダナも解けて赤く滲みつつ床に落ちていった。


『さよなら相棒』


なーんて自己逃避


もうね、左腕が痛いんだか左顔面が痛いんだかわからないくらいの激痛に思考が麻痺してますすすすす痛い痛い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い痛い痛いいだだだだだだだだだがががぃぃぃ


まあ、いいや。


リセット


無理矢理ウヤムヤ心頭滅却よっこいさと痛感遮断

勿論そんな芸当はできないけど、そこは痛みを我慢してごまかし前に意識を集中させた。二撃目、もしくはトドメを刺そうとしてるだろうレイモンドを見た


そこには、金髪姿のイケメンが、二撃目もトドメも準備せずに




限界まで両目を見開き驚愕してた。



はて?


さて?


自分の顔になんか付いてますか?




「な! な!? なっ! なんだソレは!? なんなのだソレは?!」

さっきまでの余裕は何処へやら、ガタガタと右手を、ついでに剣先を震わせながらビックリ顔で叫ぶ金髪野郎

ソレって何?

さっきの攻撃で左の眼球でも取れたか?


「な!なんなのだその


髪は!?


耳は?!



髪の毛に耳?

普通だけどっ・・・て、アレ?



「そ、そ、そ、そそそそそそそそれでは!


それではまるで”人間“ではないか!?


引き攣った叫び声が真っ暗闇の部屋にこだまする。

つーか、まるでじゃなくてそのまんま人間なんだけど。

なんて激痛に蝕まれた脳内で呟いたり。


「・・・今頃気付きましたか?」

なんて実際に呟いたり。

「認めない! 認められるかっ!? この僕が人間に負けたのだと!? 人間風情が魔帝国に入り込んでいただとぉ?!」

聞いちゃいねー。

まっ、いいけどね。

自分も顔面の痛みで会話どころじゃないし、左腕に至っては痛みどころか感覚が無くなってきてるし。

ポタポタと滴り落ちてる血液量的にも限界が近いと思うしね。

「何故だっ!? 何故人間が付き人なんぞを? いや、き、貴様が閣下を操っていたといことは人間が魔帝国を操っていということ・・・馬鹿なっ!、そんなこと認められるか! 認めれrerukaihrgd?!!」

勝手に驚き、勝手に叫び、勝手に怒り、勝手に悩み、勝手に喚き、勝手に悶え、勝手に憤慨、勝手に激怒、

自分が人間だと解った瞬間にイケメン的なキザッたらしさが完膚なきまで消えて、ドン引きするくらいのヒステリーを起こしているレイモンドを無事な右目で眺める。

両目は血走り、両手を無茶苦茶に振り回し、口からは解読不能な言語を喚き散らしている金髪の魔族をちょっと哀れみながら見た。

魔族至上主義だか民族主義だか知らないが、よっぽどショックだったらしい。

日本の内閣総理大臣にカナダ国籍のジョン・スミスさんがなる以上にはショックだったんだろう。


合掌


「アハ」

あっ、

「アハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ」

壊れた。


カラン

と、剣を床に投げ捨てて、血走った目で凶悪な笑顔になってるし。

左手に歪な氷塊を持って

右手に淀んだ炎を纏って

「もう関係ない、関係ない、かかか関係ないeeeeigtjma。うぃ、今殺せば、ここ殺せばばばききき貴様が居た記録もも痕跡も無くなる。に!人間がこの帝国に存在したことなど! そうだ! そそうだ! 元から人間などいなかったのだ!貴様なんぞ元から死んでいたのだぃぐゃぎゃきやぎゃ」

イケメンよどこへ?

正直言って、人間だとバレると人格崩壊を引き起こすとは予想していなかった。

げに恐ろしきは思想、信仰、固定概念か・・・あ痛たたたた。

ヤバイな、右手で押さえてる顔面の左半分の痛みがハンパないし、左腕の感覚に完全に消えたし・・・もう、立ってるのがやっとだ。

でも、まあ

『もう、いいかな』


よく格闘マンガとかであるけど、怒ったり慌てたりすると隙だらけになるって展開。あれは本当だね。ましてや壊れて狂ってるんじゃあ尚更だ。

「殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺し殺し殺し殺し殺し殺し殺し殺し殺し」

武装は十分

殺意は十二分

視線は自分目掛けて


でも


自分しか見えてない


自分しか


「死ねぇぇぃ人間ぇぇぇぇぇん!!」



自分目掛けて、こともあろうに両手にそれぞれ氷と炎を持って突撃する金髪イケメンキザ野郎


だけど、


その死が届く前に



『お願いします』


ヌッと

暗闇の中から、自分の顔の右脇から包帯だらけだけど惚れ惚れするほど綺麗な腕が現れて、

ウォンと

暗闇よりも更に真っ暗で真っ黒な球体を造り飛ばし

ギャッと

レイモンドの右腕と体の大部分を奪っていった。





流石です。助かりました



「エーリカさん」




■■■





なんでこんな結末になったのか。

なんてことは無い話で、自分が逃げ込んだ部屋にエーリカが居ただけのことだったりする。まあ勿論、狙ってこの部屋に逃げ込んだわけだけど、ある意味というか、完全に賭けではあったりする。

まずエーリカが生きていることと、この部屋に、この偉いさん用の医務室に寝ていることが絶対条件だった。

でもの二つハレイモンドが自らエーリカが寝室に居ないこととまだ殺してないことを言っていたから解った。ただ一番重要なのはエーリカが起きて、そして黒球をしっかりと放てるまで状況を理解するかどうかだった。

そして自分は賭けに勝った。


「ハッ・・ハッ・・ハッハッ・・・ハッ・・・」

背中越しに聞こえて来る荒い呼吸音

今までレイモンドに悟られないように暗闇の中ベットから起きて、自分の背中に隠れながらチャンスを狙っていたエーリカの息の音だ。

混乱する頭で、痛みに支配された脳内で、ほとんど一方的にエーリカに念話を送り、混乱したエーリカが何とか納得し、痛みに耐えながら機会を待ち、顔面に炎を喰らっても我慢し、そうして、予想外ではあったけどレイモンドが錯乱したおかげで、

チャンスが来て

チャンスを活かせた

それだけの話。

運が良かった。

悪運だけは・・・いつもいい。


なーんてね・・・あ痛痛痛つつつつ。

「あぎゃ・・・ぎゃぁ・・に・・人間ごときが・・・人間がぁぁ・・人間がぁぁぁぁ」

あーーあ、まだ言ってるよ。右腕を失って、体の大部分をえぐられて瀕死になってもまだ言うか。そこまで人間が嫌いなのか・・・つーかよく生きてるねイダダダダダ

ああ、ヤバイ。本気でヤバイ。目の前で血溜りに沈んでるレイモンド並みにヤバイなー。

「!!っ、イッヒ!? イッヒ!! イイッヒ!?」

ドサリと崩れ落ちる。

尻餅をついて、更にそのまま後ろに、エーリカが寝ていたベットに背中からもたれかかる。

トサリと右手が顔面から放れる。

左腕に続いて左顔面の痛みも消えてきた。どんどんどんどん眠くなってきた。

「イッヒ!!しっかりしてイッヒ!?」

ガクガクガクガクエーリカに揺さぶられるけど・・・つーかこれトドメさされてね?

「ぁぁぁぁぁぁ・・・人間がぁあ・・・人間がぁぁぁ」

ああでも、旅立つ前にこれだけは言っておこう。

「ねぇ・・レ・・・イモン・・ドさん?」

「ぎゃ・・ぁ・?」

ぼやけてきた視界の中、歪な姿になった金髪魔族が自分を見る。首だけ動かして自分を睨む。

「貴方は・・・貴方は自分に負けたと・・・自分が、エーリカさんを操っていたと・・言ってましたけどね・・・それは間違いですよ」

「な・・に?」

「じ、自分はただ助言を、いや・・・独り言をエーリカさんの隣で喋っていた・・・だけです。自分は逃げ回っていた・・だけです」

「・・!・・?」

「け・・・結局は・・・結局貴方は・・・そこに居るエーリカさんに、魔帝閣下に負けたんですよ・・・アンタが見下していたエーリカさんに・・・ね」

「あ・・ぁ・・ぁ・・・ぁぁぁ」

笑う。

隣で自分を心配するエーリカを誇るように笑ってやった。


自分はいつも逃げて、逃げて、逃げて、さっきも逃げてばかりだったのに。エーリカは、逃げ出したい気持ちを抑えこんで、声を震わせて、ちょっと狂ったりしたけど魔法で戦ったりして、真正面から真っ直ぐ歩いていたんだ。

「イッヒ!! いいからっ! 喋らなくていいから! 今医務室に連れて行ってあげるから!!」

いや、ここが医務室です・・・とか冗談は置いといて。

「アハハ・・・アハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハaaaaaaaaaaaaaaaa」

倒れ伏したまま突然笑い出すレイモンド

思わず凝視してしまう自分とエーリカ・・・・で

「aaaaaaa・・・ぁ・・・ぁぁぁ」

悔しさに顔を歪ませて笑った状態のままエーリカを限界まで見たまま

「ぁぁぁ・・・・あ」

全ての活動を停止した。

ゆっくり、でも確かに停止した。



以上でロッソ伯爵反乱の報告から始まった魔帝国の大騒乱が完全に終了した。

 










じゃ・・・

「オヤスミ」




「イッヒィィィィィ!!!」



たまには謝らずにお礼を、閲覧ありがとうございます。

やっぱすいません、ごめんなさい。

ということで三十七話でした。なんというか・・・これが限界でした。

ヒーローは遅れてやってこないから自分から行く話です。それがイッヒ。

さて、一応といいますか、補足なのですが、主人公が『』を使用したあたりで念話を開始しています。ちょっと違和感があるのはそのせいです。なんとか納得してくれたら嬉しいです。

そう言えばお気に入り登録件数が1100件を超えていました。

ありがとうございます。もう精一杯ありがとうございます。この気持ちを表すなら「バンザーーーイ!突撃ぃぃーー!ぎゃぁぁぁ」という感じです。すいません混乱してます。とにかくありがすいません。

こんな駄作者が書く駄小説ですが、これからもよろしくお願いします。

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