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第三十六幕 寝頭乃晩

「・・・」

「・・・・・・」

「・・・・・」

「・・」

「・・・・・・・・」

「・・・・・」

「・・・」

「・・・・・・」

「・・・・・」

「・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」







■■■







「・・・・・・」


ふと、


ふと目が覚めた。


何か夢を見たような、何も見なかったような、違和感を感じたような、何も感じなかったような、気もするようなしないような気がして

ふと目が覚めた。

そして服を着替えないまま、トンガッてた帽子兜を着用したまま寝ていたことに気づいた。

でもメンドイから着替えようとは思わない。


ぼんやりとした視界に写るのは見慣れたけど馴れない薄暗い天井。もちろん、赤い目が自分を覗き込んでいるわけでもなく、豪華に無機質なまま。

帽子兜とバンダナの二重隠ぺいされた耳には何も聞こえなくて、静かで、静寂で、無音。


確認するまでもなく時刻は夜だろうね。

空気が、空間が、感覚が、深夜だと教えてくれる。


まあ、突然夜中に目が覚めたからといって、特別胸騒ぎがしたり、根拠なく不安になったり、ましてや嫌な予感がしたりはしない。理由もなくエーリカの安否を確認しに行ったりなんてのはもってのほかだ。

そんな第六感は自分に備わっていない。

そんなイベントは自分には似合わない。

ただ単に、ただ普通に夜中に目が覚めてしまっただけだろうさ。

誰だって経験したことがあるだろうし自分だって何度か体験している。

大方昨日の日中に昼寝し過ぎたから体内時計が狂ったんだろう。

そう結論付けて、でも眠くはないのでぼーーっと天井を眺めてみた。考えるのは元の世界のこと、故郷のこと、家族のこと、いろんなこと。

はぁ、一体なんでこんなことになったのか今だに意味不明だ。帰る手段どころか、やってきた意味、目的、理由も分からなければ、この世界にやってきた方法すら未解決だ。

いや、そういえば最初に召喚魔法陣がどうとかエーリカが言ってたよな。たしかにその召喚魔法をメインに帰る手段を探していたけど、よくよく考えてみれば魔法陣があれば魔法使い(召喚者)、言い方が悪いけど犯人がいるはずなんだよな。召喚魔法を使えって事実を隠している奴がいるわけだ。んじゃ誰だ?

エーリカか? グナイゼナウのオッサンか? ドーラ公爵か? カイテル伯爵か? ミケさんか? チェルシーさんか? シュルツのにーちゃんか? 大家さんか? 故人のロッソか? 鬼籍に入ったネロガイウル男爵か? ダンディーカイテルか? 雲隠れしたレイモンドか? 目立たないカーンか? それとも他の誰かなのか?

分からない、

動機が分からないから解らない。自分の存在意義が解らないから召喚理由が分からない。召喚理由が分からないから犯人が解らない。

解らない

分からない

わからない

もしかしたら神様の悪戯なのか?

もしかしたら悪魔の悪戯なのか?


ハハハハハ、

何一つわからねーや。

どっかに、確かに、誰かが、ちゃんと持っているんだろうー自分を呼んだ理由と意味。

まあ、もしかしたら別な物(勇者とか悪魔とか)を呼ぼうとしたら失敗しただけなのかもしれないけど・・・・・そっちの方が可能性が高いけど。




嫌な結論になりそうだったので思考停止

流石に間違って召喚しちゃいましたは酷い、あんまりだ、受け入れがたい。しかも有り得なくもないから始末が悪い。

最悪とはいかないまでも次悪くらいにはなると思う。 

思うけど、思うことしか出来ないからやっぱり思考中止


意識を脳内から視界に移行させる。

薄暗い室内の、趣味じゃない装飾が施された天井をぼーーっと眺める。


ボーー・・・・・・


ボー・・・・・


ボー・・・




うん


飽きた。




飽きたからゴロリと首だけ寝返りをうってみた。

ゴツゴツしたトンガってた帽子兜の感触に嫌悪感を覚えて、せめてこの帽子兜だけでも外そうかなと考えながら、やっぱりめんどくさいからいいやと億劫になりながら横を向く。半開きの眼球に写る景色が天井から壁と天井の境角になり、境角から壁に、壁の一部が扉になったのが見えたところで、


ふと、


でもしっかりと


薄暗い室内の中に、


自分以外いないはずの室内に

自分のでは無いシルエットの

自分以外の誰かが見えた。





・・・どちら様で?




■■■




視界に映る一つ、いや一人のシルエット。ベットに寝ている自分と、この部屋唯一の扉との間にいる正体不明者との距離は大体5メートル位。近いっちゃ近いけれど、カーテンが閉めきられて月明かりすら入ってこないこの部屋では顔が判断できない。せいぜい黒いシルエットしか見えない状況

一瞬、きひひひと聞こえてくると思ったけど、そのシルエットは銀髪赤目のにーちゃんとは違っていた。

薄暗くてはっきりとは見えないし、体型や身長が似ているけれど、雰囲気で違うとわかった。


んじゃーーー誰だ?


記憶を探る

記録を捲る


まっ、シルエットだけから個人をちゃんと特定出来るスキル、なんてのは自分は保有してないんだけどね。


と、

適当に思考している自分に気付いたのか知らないが、視界に写るシルエットが一歩、更に一歩


自分に近づいてきた。


一瞬、もしかしたらミケさんが、淋しい夜のサプライズにきたのかと妄想したけど、それは絶対に、完全無欠に、天地神明に誓っても、天変地異が起こっても、森羅万象を崩しても、最後の時がやってきても、最初からやり直しても、徹底徹尾必然に、有り得ないと理性が否定

んじゃーチェルシーさんか? うん、彼女なら有り得そうだ。うきゃきゃきゃきゃきゃとか踊りながら甲冑姿でやってきても違和感が無い。いや、流石にそれは無いか・・・シルエットはツインテールじゃないし、うきゃきゃきゃきゃとか笑ってる姿も見たことないしな。でもこの前ミケさんにS級セクハラ発言している姿は見たな、回し蹴りで人(魔人)が吹っ飛ぶ光景はいまだに忘れられない。おもに蹴りを放ったミケさんとか・・・とかまあ、そんな妄言は置いといて




「誰ですか?」


聞く


もっとも単純かつ簡単な調査を行った。

もっともベットに寝たままだけれどね。

んで、反応は



「・・・・・・」




はい、無反応。

無視です、スルーです、イジメです。

こっちが話し掛けて起き上がったというのに、驚くことさえせずにシルエットは無反応

いや、歩くのを止めているのか・・・

ちょい不気味


訂正


ヤバイくらい不気味


まさか人生初の心霊体験なんじゃないかとシルエットの足元を確認。

良かった、ちゃんとあるっ・・・・・・て、

なんか別なのも見えた気が・・・・細くて、長くて、棒状で右手に直結・・・いや、右手に持っているのか。

ん〜〜、暗くてよく見えないな。

まっ、見えないなら見えるようにするまでだ。

と、寝ぼけたままの思考で結論づけて、でも流石に不審シルエットに近づくことは恐いからせずに、ゆっくりベットから起き上がる。顔と視線は黙って何のアクションも起こさないシルエットをガン見したまま慎重に上体を起き上がらせる。両足を床につけ(なんと靴を履いたまま寝てた。しかも安全靴)て、いつでもダッシュできるように警戒したまま腰を上げてベットの脇に立つ。

「・・・・」

「・・・・」

お互い何も言わない。


ここまでくれば流石の自分だって何かヤバイと解かる。

異常事態だと判断出来るから、慌てずにシルエットの動きを観察する。非常事態だと認識したから、頼りない感覚を研ぎ澄まして背後の気配を探る。緊急事態に近いかもとビビッて抜き足差し足で移動。

見つめながら、探りながら、ゆっくりとベットから壁側に、壁にある一区画、外界に繋がる一区画、つまりは窓際まで移動。

気が付けば何故だか緊張してたりして、冷や汗なんかかいてたりして。うん。まあ、こう何度も死に掛けていれば自然と自己防衛機能が身に付きます。もういっそ幽霊やら心霊現象であることすら祈ってます。

南無南無

とか現実逃避じみた思考は置いといて、

まるで臆病な野良猫を触ろうとするようにゆっくりと、バレないように自然な動作で右腕を伸ばす。

眼球で怪しいシルエットを捕捉したまま、勘を頼りに右手でカーテンを掴む。そしてそのままおもいっきりカーテンを開け放つ


シャーー  とな


「・・!?」

「・・!!」

薄暗い室内に入り込んでくるのは窓からの月光

やや青白いその光が目の前にいるシルエットを浮かび上がらせる。

そこには

幽霊なんかじゃなく、ちゃんと実体を持った金髪イケメンの男が、剣を握った魔族が、キザったらしく笑うどこかで見たことのある奴が立っていた。


コイツってたしか・・・


「こんばんは、付き人君。あの時の会議以来だね」




レイモンド・・・反乱軍の首謀者だったレイモンド伯爵じゃねーーか!




間違いじゃなきゃだけれどね。




■■■




レイモンド伯爵

フルネームだとアーサー・ケビン・レイモンド

政務院の長を務めていたキザったらしい金髪イケメンの魔族の男。チャラ男みたいな癖に高い政治能力を持っていいたらしい。そしてネロガイウル男爵や太っちょロッソらと共に反乱を起こした野心家。

自領の災害を手玉に取ったり、同じ反乱軍だったロッソを囮にしたり、奇襲攻撃を仕掛けたりと中々の腹黒さを持つ魔族至上主義な危険人物

でもエーリカによって反乱は失敗。特には活躍もできず、自分との接点もないまま撤退、居城のダンケルク城はあろうことか裏切りによって陥落され、ついでに身内の大半が死亡したという悲惨な結果になった不幸者。

結局は仲間も領地も兵も何もかも失って行方知れずになっていた男


そのレイモンドが自分の目の前に立っていた。

つーかいる。

ビックリ、驚き、予想外

脳内処理が追いつかなくて右手でカーテンを掴んだ体制のままストップ。

「・・・こ、コンバンハ」

でもとりあえずは挨拶。いや、のんきに挨拶なんざしている場合じゃないのは分かっているんだけれどね。右手に持っている抜き身の剣が月光に怪しく煌いているんだけどね?

もう何度目のピンチだよ!?

そんな自分の心境なんてお構いなしにキザったらしい表情で自分を見て口を開くレイモンド

「ああ、こうやって君と二人っきりで話すのは初めてだね」

いやいや、何のんびりんなこと言ってるんだよ。口調は柔らかいけどその右手に持った剣で台無しだから。笑顔すら怖いからね。

「しかし君もよくわからない存在だよね。付き人っていう話だけれど、城内の、しかも閣下の隣部屋に住むなんて普通はありえないし。この僕の情報網ですら調べられない程に過去が謎だし、その癖魔力がほとんど無い弱者だしさ」

クスクスと笑いながらそう話すレイモンド元伯爵。まるで雑談のように喋っているけれども、全然笑える内容じゃない。

「そうそう、城下で奴隷の子供を助けてたでしょ? 街中で噂になってたよー、閣下の付き人は心優しいお方だってさー。良かったねー。それに昨日の演説の時に閣下の身を体を張って守ってただしょ? アレ見てたけどかっこう良かったよー。まるでお姫様を守護する物語の騎士みたいでさ」

クスクスと笑いながら自分を見るイケメン。夜中に部屋に侵入し、右手に剣を持ちながらも、自分を褒めるこの男の真意が分からず困惑する。目的がわからないから対処が出来ない。対策が立てれないしアクションが起こせない。



「でも、おかげで閣下の暗殺に失敗したんだけどさ」



ゾワリとした


いくら殺気が読めないからって、気配を探るスキルがないからっていってもわかる。

ヤバイ

やばいやばいやばいやばいやばいやばいやばい

命の危険がレッドアラートにメイデーメイデーSOSな110番かつ119

コイツ・・・自分を殺す気だ。

「アハハ、そんな緊張しなくていいよ」

え?

「僕はね、君のことを高く買っているんだ」

「・・・どういうことですかね?」

聞く。聞きながら状況を把握する。

出口は一箇所、レイモンドの背の向こうだけ。自分の背にある窓は・・・いや、ここは三階だ。落ちたらまず助からない。んじゃあ武器は? あるわけないか、盾になりそうなのも無いし・・・チクショウ、八方ふさがりじゃねーか。

「僕は考えたんだ。どうして僕の革命は失敗したのか。どうして閣下に負けたのかをさ」

ジリリと体制を整える。いつでも動きだせるように。いつでも逃げ出させるように。

「たしかに閣下の魔法は予想外だったよ。でもそれ以上の予想外だったのは閣下自らが出陣したことさ。あの性格なら城に篭ってガタガタ震えていると思ったのに、ちゃっかり兵士を鼓舞してやって来るんだもん。驚いたなーその報告を聞いた時はさ。てっきりドーラ公爵あたりが影武者でも仕立てたのかと疑ったんだけど、まごうことなき本物だったしね。僕としてはロッソを囮にして出てきたグナイゼナウ大公とかドーラ公爵を討ち取って、後は適当にバルケン城を攻める予定だったんだけどさー。ロッソは”君”の策であっさり負けるし、頼りのネロガイウルは結局死んじゃうしさーもう散々。ラクトアの馬鹿共をけしかけてみたけど無駄骨だったし、こうなったら暗殺しかないと思ったら”君”に邪魔されるしさ。ホント、どうしてこうもものの見事に負けたんだろう?」

クスクスと自嘲的な笑いかたをしながら自分を見るレイモンド。

正直、恐怖で反応のしようがない。

「そして僕は気付いた。僕が負けた理由には必ず君の影がチラついていることに。ロッソとの戦いだと傭兵を使って裏切りの指令を出したらしいじゃないか。ラクトアでも君は閣下の一番近くにいた。奇襲した時だって閣下の傍にいたし、奴隷禁止演説の時なんて台に隠れてまでして傍にいたんだろう? 

何より閣下の変貌ぶりときたらさー。今までは部下の顔を正面から見れない程臆病だったのに、君が来てから別物だと勘違いしちゃうくらいに変わったからね。カイテル伯爵とかは猫を被ってたんだと言ってるらしいけど、それは嘘なんでしょう? 閣下は幼いころから臆病だった。それこそ病気じゃないかと心配になりくらいにね。

でも出陣の演説も、会議の時も諸侯達を黙らす程の気概を見せた。できるわけないのに。グナイゼナウもドーラも手伝ってないのに軍勢を率いた。

何故だろうと考えて・・・君に行き着いた。

・・・ねえイッヒ君」


もしかしてバレてない。

なんか色々バレてないか?





「君が閣下を操っていたんでしょう?」


自分でも両眼が限界まで見開かれたのがわかった。歯が噛み合わない、ガチリとカチカチカチと震える。

犯人はお前だ! 

と、言われる気持ちが分かった。

操る、魔帝を、エーリカを操る。念話、テレパシー、リピート・アフター・ミー、カンニング。

いつも自分はエーリカの隣で、斜め後ろから念話を飛ばしていた。

エーリカを・・・思うがまま操っていた。


クスクスクスクス


喉が渇く咽が乾く

手が震える足が震える

脳が熱い身体が寒い


クスクスクスクス


「何も言い返さないってことは図星かな? まあ君は極力目立たないようにしていたみたいだから他の諸侯は気付いてないと思うけど、でもいつかは露見すると思ってたんでだろう? いつか寝首を掻かれるんじゃないかと思ってその兜を被ったまま寝ていたんだろう?」

この兜は違う。

違うけど、いつかはバレるとは思ってたけれど、何でコイツに、何で今なんだよ!

レイモンドを睨む、いや、ただ愕然と見ることしかできない。


クスクスクスクス


「だからそんなに緊張しなくていいってば、言っただろう? 僕は君のことを高く買っているんだ」

そう言って、スッと右腕を自分に向ける金髪イケメン。握られた剣が水平に自分の向けられる。切っ先が心臓を狙う。

「君が何者だろうと詮索はしないよ。大事なのは君が非常に有能だということ、絶対不可能と云われた奴隷禁止を可能にさせてしまうくらいには切れ者だということさ。だからイッヒ君」


月光に光る剣の先で、ニヤリと美しい顔が歪んだ気がした




「僕と組もう」






「・・・・は?」

ナンダッテ?



「本当はさー閣下を殺してから言うはずだったんだけど、寝室に居なかったから今言いうよ。

閣下を裏切って僕の部下になれ。

悪くはない話だと思うよ。待遇だって今より良くするし、なんだったら爵位と領地もあげよう。富と名声、好きなだけあげるよ。今のコソコソした生活なんかオサバラしたいと思うだろう?」

いや、いやいやいやいや

確かにこの生活からオサラバして元の世界に戻りたいとは思うけど、爵位も領地もいらん。


「どうだい? 選択肢は二つ、一つは僕と手を組むか、もう一つはここで僕に殺されるか。アハハ、悩むまでもないだろう? うん、そうだね、僕の部下になるならまず始めに閣下を殺してもらうか。君なら閣下の居場所を知っているだろう? なーに閣下さえいなくなればグナイゼナウもドーラもカイテルも恐れる必要は無い。ちゃんと手は打ってあるから安心してくれ。さあイッヒ君

僕と一緒にルフトバッフェを掌握しよう。そしてやがては人間共の国に討ち入り世界を魔族の楽園にしようじゃないか!!」そう言って今度は左手も伸ばすレイモンド。

右手を取れば死

左手を取れば裏切り

選ぶまでもないだろうと、クスクス笑いながらニヤつく目で自分を見てくる。

本当に、選ぶまでも、悩むまでも無い。

嗚呼でも、一応は聞いとこうか

「少し確認していいですかね、貴方は召還魔法が使えますか?」

「・・・いや、使えないけど」

「そうですか」

一瞬ポカンとなるレイモンド。よほど自分の質問がトンチンカンだったらしい。

けどまあ、使えないならいいや。召還魔法が使えないなら用はない。

「ではレイモンドさん」

姿勢を正す。意識を直す。深呼吸して落ち着かせる。

さあ考えろ自分。この状況を打破する最悪な選択を

いや、考えるまでもないんだけどね。自分に出来るのはその場しのぎと嘘とこけおどしだけだ。だから

「自分の回答を言う前に少しだけ話をさせて下さい」

「???」

両手でトンガってた帽子兜の位置を調整して、両目でレイモンドの両眼を真っ直ぐ見て言う

「どうしてエーリカ閣下が寝室に居なかったと思いますか? どうして自分がこんな寝苦しい格好で寝ていたと思いますか? 寝首を狙われるのを恐れていたから?まさか、それは不正解です」

「・・・・なに?」

頭から離した両手を開きながら前にだす。少し笑いながら剣先を無視する。

「襲撃された直後にまた襲撃はされないだろうと・・・そう自分達は考えるだろうと・・・そう貴方は考えて今晩会いにきたんでしょう?」

「・・・貴様!?」

「魔帝閣下を殺した後なら自分がすんなり裏切ると、忠誠心なんて持っていないと思ったんでしょう?」

「っ!・・・」


適当、デタラメ、大当り!

「まあ、今さらそれについてどうこう言うつもりはありません。ついに言えば、貴方がこの後どうやって挽回するのか、全てを失った状態からいかにして逆転するつもりなのか、ドーラ公爵方をどのように撃破するつもりなのか? どんな罠を仕掛け、どんな策略を巡らし、どんな謀略を弄し、どんな仲間を得、どんな奇策を張り、どんな作戦で魔帝となるつもりなのかは知りませんし、興味ありません」


戯れ言で相手を惑わす。いや、そんな大層なモンじゃない。単純に時間稼ぎをしてるだけ。寿命を伸ばしてるだけさ。

そんなことは置いといて


「自分が興味あるのはエーリカさんのことだけですよ。いかに立派な魔帝として振る舞うことが出来るように補佐するか、いかに魔帝閣下の役に立つことが出来るのか。側にいるために側で何をすればいいのか考える」

嘘、偽り、でまかせ。


「そんな自分がエーリカさんを裏切るとでも思いましたか?」

余裕ぶって、手足の震えをひた隠して余裕綽々ぶって、冷や汗を流すのを我慢して上から目線に話す。

「・・・そうか、それが君の回答か・・・なるほど、君とは仲良くなれそうだったのに・・・・・・残念だ」

スゥーっと笑みを消して自分を睨むレイモンド

スゥーっと静かに構えられた剣が怪しく光る

スゥーっと一歩踏み出して来る

「なら、君には死んでもらうしかない」


絶体絶命

でも 

「いやいや、話しは最後まで聞いて下さいって」

喋るのは止めない

つーか止めたら死んじゃう、殺されちゃうから

だから

だからさ


いっちょう

必死に、みすぼらしく

決死に、哀れなくらい

悪あがきのスタートをしますか


「考えてみて下さい。奴隷禁止演説の最中に襲撃されるのを予想して自分は台の中に隠れていたんですよ?

そんな自分が今晩襲撃されるのを予測できていないとでも?

わざわざ兜まで装着して他に何もしてないとでも思いましたか?」

「!?」

嘘・嘘?嘘!嘘

でも強がれ!


さぁーやるぞ!

一世一代の小芝居だ

傲岸不遜に振舞え、絶対優位に惑わせろ。

ふーやれやれとでも言う様に肩をすくめる。チラリと視線をレイモンドから移した後、何事もなかったかのようにまた目を合わす。剣を構えて斬りかかろうとして、でも自分の真意がわからず斬りかかれないレイモンドを見る。

ドクドクドクドクドクドクドクと暴れる心臓が鼓膜に響くけど、ヌラリと手の平が汗で気持ち悪いけど、ここが正念場だ

勇気を、いや、勇気じゃなくても根性でも気合でもなんでもいいから振り絞って、震える手足と逃避したがる思考を意地で、いや、生にしがみつく汚い意固地で押さえつける。

喉の渇きを無視して口を開く


「策を仕掛けたのは自分で、罠に落ちたのは貴方ですよレイモンドさんー」


そして


「なっ!」


一気に正面から首を振る

いきなり視線をずらす、

金髪イケメンの左側を、

左後ろの天井を睨んで、

勝ち誇った声で叫べ、

おもいっきり叫べ、





「今ですシュルツさん!!」




「っ!?」


瞬間的に振り向き剣を水平に振るうレイモンド

流れるような動きで左手に氷の盾が誕生するーーまさに達人の域、強者の技 

だけど

「ーーーな?!」


そこには誰もいない

そこには何も無い


何も無い反対側を

「ーーーーーー」

駆け抜ける!


レイモンドが振り向くと同時に、床と壁を蹴ってダッシュする!

レイモンドの背中を扉めがけてすり抜けるー!

虚空を斬り付ける奴の体が視界に迫りーー景色が霞んでーー走り抜ける!

「! 貴様ーー」

瞬間的に騙されたと気付いて振りぬかれた剣が背中を擦った気がしたーーけれど止まらない!

瞬間的に騙せてもーもう自分に残された道はこれだけ


後ーー五歩

「このっ!!」

後ーー四歩

シュッ

後ーー三歩

「ぎ!?」斬られたーーけど!? 

後ーー二歩

「逃がすかっ!!」

後ーー一歩

ドアノブを掴んーー

後ーー




ダァーーン!






生まれて初めて扉を体当たりで打ち破って

ゴンッーーと、勢い余って廊下の壁までぶち当たって、

「!?」

「?!」

開け放たれた扉越しにレイモンドと目が合ってーーー 

「まっ・・・」







ダッシュで逃げた。










さぁ、鬼ごっこの時間だ。

中途半端な位置で終わってしまいすいませんでした。 

もうちょい書きたかったのですが、長くなりそうだったので止めました。

さて、戦わない主人公の面目躍如です。

「あっ!UFO!」

です。

窓から飛び降りる方法とどっちにしようか悩みましたが、こっちの方が姑息でイッヒらしくていいかなと思ってます。

どうでもいい話しなのですが、この小説に似合いBGMとか歌ってあるのでしょうか? 

どうでもいい話しでした。 

ごめんなさい。

それでは、一応エンディング目指して頑張っていますので、これからも駄作駄文、悪字悪行なこの小説をよろしくお願いします。



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