第十九幕 奇襲故障
クライマックスは唐突に
バットエンドは突然に
さよならは言えずに
桶狭間
真珠湾
厳島
落鳳破
一ノ谷
その他色々
■■■
交通事故というものを幸いにして自分は体験したことが無い。精々、雪道を父親が運転する車で360度スピンを経験したぐらい。その時だって電柱や対向車と衝突することもなく、ただその場で一回転するだけという面白現象の一言で片付けられる範囲内だった。それに、まだ幼かった自分は危機一髪だったという自覚は無く、むしろ理解が追い付く前にキャッキャッと喜んで父親にもう一回もう一回と頼んだと、母親が苦笑いして語っていた。
まあ、そんな自分の人生初、もしくは二回目となる交通事故は、自動車ではなく馬車で、回転ではなく横転というものになった。理解は追い付いてないが流石にキャッキャッと喜んではいない。むしろ自分の上に乗っている物体のせいで肺に酸素が供給されず苦しんでいる状況
さっさと降りろエーリカ。
「ぐが?」
「うぅ〜〜〜。」
「??」
「つ〜〜っ!」
文字どおりひっくり返った馬車の中、自分、エーリカ、ミケさん、シュルツのにーちゃんが折り重なるように積み上がって苦悶を上げる。
いったいぜんたい何事だい?
そして、自分の上から早く降りろエーリカ!
「なにがあったってんだぁ?。」
「ご、ご無事ですかエーリカ様!?」
「うきゅ〜〜〜。」
起き上がって周囲を見渡すシュルツさんにエーリカを案じるミケさん。
なにがあったって、馬車がひっくり返ったんでしょうがシュルツさん。
ご無事ですかって少なくとも自分は無事じゃないですよミケさん。
と、
「閣下っーー!!」
「魔帝様ーー!?」
馬車の外から叫び声多数。
まあ、当然といえば当然だな。大統領専用車が事故ったもんだもん。
扉を開けろだの、そっちを押さえろだの、矢から守れだの、火を消せだの、それをどかせだの怒号と言って差し支えないレベルの会話が繰り広げられ、蜂の巣を突いたように騒がしい。
何か物騒な単語が聞こえたような気がするんだけど・・・。
まあいいか。
「きひひっ!!。こいつはやべーか!?。」
こんな時でも笑いを止めない銀髪赤目のにーちゃんが、そう呟きながら逆さまになった馬車のドアを開ける。が、ガチッと音を立ててドアが開閉を拒否した。
「あぁん?」
フレームでも歪んだのか、何か外でひっかっかってにるのかガチガチと2ミリ二も満たない開閉しかしないドア。まさかずっと四人で馬車の中生活?
ザッ・密室サスペンス。
「きひひ。」
ガンッ!
あっ、蹴り破った!
密室サスペンス 完!
冗談はさて置き。
いざ脱出と、シュルツさんが飛び出し、ミケさんがエーリカを支えながら続いて出て、置いてきぼりをくらうのは勘弁と、自分も馬車から退避。
やった日の光だ。
自由だ!自由なんだぁ!
と、現実からも退避。
いや、だって、その、あの、なんていうか、えー、あー、うん、アレです、アレ、ねえ?
馬車から出た瞬間に゛死体゛があったら誰だって現実から目を背けるよね。
漆黒の鎧の兵士さん。脳天には今流行りの矢がアクセント。赤色の鮮血メイクでアイラインを強調。開ききった瞳孔と半開きの口でクールを表現・・・。
「っ―‐・・!?・・!。」
叫び声を上げなかった自分を褒めたい。嘔吐感がくる前に神経をシャットアウト。意識的にこれは夢だ非現実だと脳が誤認。
発狂する前に逃避
自壊する前に退避
自失する前に避難
これは夢なんだ。
ひっくり返った馬車の中で気を失って見ている夢なんだ。
目の前で死んでいる兵士も。目の前を通り過ぎた矢も、目の前で切り結んでいる兵士達も、急いで陣形を作ろうとしている兵士達も、エーリカを指差して叫ぶ兵士達も、それに合わせて炎の固まりを放つ兵士達も、巨大な氷でその炎を防ぐミケさんも、後ろが落ちたら助からない高さの崖であることも、行軍の途中だから隊列が伸び切ってしまいまともな陣形が組めていないことも、馬車が燃え始めていることも、どっかで見た記憶がある牛頭ー確かネロガイウルとかいう奴が突っ込んでくることも、どう見てもエーリカが狙われていることも、その周りにいる自分もターゲットにされていることも、断末魔も、剣と剣がぶつかり合う音も、
全部
全部夢なんだ。
?
!
!?
!
「なぁにやってんだイッヒのだんなぁー!!」
!!!
グイッと、視界が一瞬ブラックアウトする勢いで襟首を掴まれ後方に飛ばされる。瞬間、自分が居たであろう場所、自分が存在しただろう空間に巨大な、人の背丈をゆうに超える氷塊が落ちてきた。
危機一髪
ミケさんじゃないよね?
「きひひひ、死にてーのかよあんたは?」
白昼夢からの目覚め。
いや、ただの現実逃避からの回帰か。
きひひひ、きひひひ、とシュルツのにーちゃんは、いつも腰に帯びている剣を右手に握り、左手でしりもちをついた自分の襟首を掴み、楽しそうに、実に楽しそうに笑っていた。
「゛゛〜っ〜〜っ‐!」
対して自分は、情けないことに、実に情けないことに、しりもちをついたまま、所謂腰が抜けた状態となり、呂律も回らない状態になっている。
体は恐怖に震えているのに、
怖いのに、恐ろしいのに、
脳は冷静に処理している。
心は麻痺している。
どうやら自分は現実逃避を極めてしまったらしい。
もしくは壊れたのか
元からズレていたのか。
「お下がりください閣下。」
「円陣を組め!閣下には指一本触れさせるなよ!」
「畜生っ!腕がぁ、腕がぁー!」
「増援はまだかっ!?。後方にも敵だと?。後ろの事など知るかっ!こっちには魔帝閣下がいるんだぞ!!」
「いたぞっ!、愚帝の首だけを狙え!」
「手柄を立てろ!魔帝を討ち取った者にはどでかい恩賞が与えられるぞっ!」
「どけっ!貴様が邪魔で矢が放てーぐぎゃ!!」
「バンキス!?あの野郎ー!!」
「ぁーーぁ"ーーぁ"ー。」
「守れぇぇぃ!閣下の盾となれぇぇぃ!」
「進めぇぇぃ!愚帝の首を取れぇぇぃ!」
オーケーオーケー。
ちょっと冷静に状況を分析しようか。
自分達は反乱軍に奇襲を受けた。
行軍中の突然の襲撃。しかも総大将であるエーリカを狙っての奇襲。
そして見事に成功。魔法でも罠でも仕掛けてたのか知らないが、エーリカと自分達が乗っていた馬車はひっくり返り馬車での逃走が不可能になったと。しかも行軍中だから隊列が伸びきっていてろくな防御ができていないと。更に後方を別動隊が襲撃、おそらく先頭も襲撃されているだろうから援軍も来ないと。
仕上げに、牛頭・ミノタウロスのネロガイウルさんがエーリカ目指して突撃を敢行。親衛隊による防御網をどんどん突破中。マジ強ーんだけどあの濁音牛。頼みの綱のグナイゼナウ大公もドーラ公爵も居場所不明。カイテル伯爵は前の場所に置いてきたから元からいない。一騎当千の英雄っぽい方も味方には見あたらない。乱戦して混戦してる。唯一の救いはまだエーリカが存命していることと、自分の近くにシュルツさんがいること、漆黒の鎧の味方が随分粘って戦っていることかな?
うん。
まずい。
何がまずいかって自分の命がまずい。
バッドエンド寸前。さようなら人生直前
って!
シュッ!
あっ、危ねー。矢が、矢が自分のすぐ脇を・・・
「うぉりゃぁぁー!」
「させるかよって!きひひひ。」
ガキン!
ドシュッ?
ドサッ。
見てない。
自分は見てない。
自分に向かってきた兵士を切り捨てたシュルツさんなんて見てない。
なんだよ。なんなんだよ。
なんでこんな目に遇うんだよ?。なんで本当に奇襲なんてされるんだよ!
見張りはどうした?
斥候はどうした?
グナイゼナウ大公はどうした?
先頭?
戻って来い!
ドーラ公爵はどこいった?
後方?
早く来て!
死ぬ!死んでしまう!殺される!斬られる!焼かれる!死ぬ?死にたくない!もがれる?殺!死!終わる!生きたい!逝く!死ねる!惨殺!焼死!討ち死に!イッヒ終了のお知らせ?死死死死!殺!矢!剣!魔法!殺人!犠牲者?死にますか?殺されますか?嫌です。嫌、嫌なんです。死にたくない。無理です。殺されるのは嫌だ!名誉ある死!犬死に!野に散る!葬式!夢叶わず!若い身空で!死ねるね!殺せる?生き残りはどっち?死!じゃっ!やろうか?殺されるー!ハハッ!死ねるな!ヘルプミー!殺される殺される殺される殺される?ごめんなさい!死にたくないよー。南無阿弥陀仏お陀仏。ハハッ。帰りたい。帰りたいい。日本。日本。にっぽーん!。アイムゴーホーミー。死ーーー。嫌ー!ハハハハッ。死にたく死にたく死にたくないよー。殺されるのは勘弁です。死ぬのは嫌でゴワス何弁です?殺人弁当!終わり終了ご臨終。さようなら世界。さようなら異世界。母よごめんなさい。父よありがとうございました。兄よあの世で待ってます。お爺さん今いきます。いや、いや、いやいやいやいやいやいやいやいやいや。ハハツ。殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される。死にたくないです。斬られたくないです。燃やされたくないです。凍りたくないです。刺されたくないです。貫かれたくないです。終わりたくないです。死?死?うん死!嗚呼死!詩?違う死!死?そう死!ハハハハッハハッハハッハハッッハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ『』ハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ『嫌』ハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ『嫌です。』ハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ。
『死にたくない!!』
え?
今のは、
エーリカさん。
の、
叫び声?
念話だけど。
というか、
現実逃避からまた舞い戻っちゃったんだけど。
あのまま精神的に狂ってしまおうとしてたんだけど。
ガキン!
「痛!?」
良かった〜〜。トンガリ帽子兜に矢が当たっただけか。
間一髪。
『死にたくない死にたくないですー。』
まだ言ってるよエーリカさん。自分だって死にたくないですよ。でもさぁ、もう無理でしょ?。ゲームオーバーでしょ?。なんか、現実に引き戻されたおかげで諦めがついちゃいましたよ。
ほら、
味方はどんどんやられていくし。助けが来る気配は無いし。自分無力だし。
今だってトンガリ帽子に運よく当たっただけで顔面に矢が刺さったかもしれないし。
倒れた馬車にでも隠れようかな?
どうせ見つけられて殺されるか。
なんかもうねー。精神が麻痺しちゃってるっぽいんだよね。死体とか見ても平均だし、血とか見ても何も感じないんだよね。
そこで剣が振るわれても、大柄の男が槍に貫かれても、女性の兵士が地面に真っ赤な花を咲かせても、悲鳴にならない悲鳴を上げて燃える兵士も、満身創痍の水筒の兵士さんも、エーリカの前で盾を構える見張りをしていた兵士が震えていても、自分に向かってきた敵兵が真っ二つにシュルツさんに斬られても。
なーんにも、感じません。
無の境地ってやつか。
違うか。
あ~~~あ。
『短い人生だったな~~~。』
『あっ、あっ、諦めないでくださいっ!!。まだ、まだ死にたくないんですぅぅ。』
達観した雰囲気の自分に涙声で慌てるエーリカ。
いつのまにか自分、エーリカ、ミケさん、シュルツのにーちゃんが集まってしまったね。
死ぬ時はみんな一緒だよ。みたいな。
『今までありがとうございましたエーリカさん。』
『おおおおお別れの言葉なんかいいいりません。』
ならどうしろと?
剣を持って戦えと?
力の限り戦えと?
はっ、冗談。
自分は無力だ。
あくまで一般人だ。
どうしようもなく一般人だ。
だけど、
一般人なら一般人の誇りがある。
例えどんなに言われようと、馬鹿にされようと、呆れられようと、説得されようと、罵られようと、
自分は
絶対に人を殺さない。
魔族じゃんというツッコミは置いといて、
戦争中じゃんとか間接的に大量殺人してるじゃんとかも無視して、
自分は殺しをしない。
キレイなままでいたい。
そうじゃないと、元の世界に戻った時、自分は自分でいられない気がするから。
例え誰かを殺して生き残っても、自分は自分を許さない。
逃げて逃げて逃げて、それでもダメなら、逃げ場が無いなら、あがいてもがいて抵抗して、でも殺し返すのだけはしない。
てか、出来ない。
基本的に鍛えてないし、戦い方を知らないし、武器を握ったこともないし、覚悟もない。
殴れるけど殴殺は無理。
眺めるのは耐性がついたけど、自分の手では不可能。
でも、それでいい。
『笑って家族に会うために。
笑って死んでやる。』
異世界だろうと新世界だろと関係ない。
罪を作るくらいなら、無実の罰を受けてやる。
さあ、
『ドンと来い。』
『い〜〜や〜〜で〜〜〜す〜〜〜〜!!』
・・・うるさいな。
せっかく人が格好良く自己完結しようとしたのに。
『私は生きたいです。痛いのは嫌です。死ぬのはもっと嫌です。生きて、結婚して子供を産んで幸せになって老後をゆっくり過ごしてそれから死にたいんですぅ!!。こんな所で終わりたくなんかありません〜〜。』
それは自分だって同じだよってんだ、この我が儘お姫様が。
だったら
『だったらどうするんですか?。この状況を。』
周りはすでに敵兵に囲まれてるし、前方も後方も状況が不明。グナイゼナウ大公もドーラ公爵もこうなったら生死不明だ。味方である漆黒鎧の兵士も数が大分減ってるし。滅茶苦茶強い敵のネロガイウル牛頭は健在だしね。
「ちぃぃ。閣下だけはなんとしても守るのだ!」
「追い詰めたぞ!あの金髪が魔帝だ!殺せぇー。」
「下がるんじゃねー。後ろは崖だぞ!」
「ネロガイウル様に続けー。手柄を立てろー。」
ハハッ。ピンチだねー。
「きひひひ、いっそ後ろの崖にでも飛び降りるか?。運が良ければ助かるかもしれないぜ?きひひひ。」
この高さは無理でしょシュルツさん。というか飛べないの?魔法とかあるでしょ?
「まっ、十中八九森に火を放たれるだろうけどな、きひひひ。」
ダメですね。
「ならば敵陣を突破いたしましょう!この身に替えましてもエーリカ様をバルケン城にお連れいたします。」
敵中突破ですか、勇ましいですねミケさん。
ですが無理ですよね?
蟻の出る隙間も無いほど囲まれてますよ。
『自分はもう死ぬ覚悟ができましたよエーリカさん。潔く逝きましょう。』
ん?
どうしましたエーリカさん?
下なんか向いちゃって。
肩まで震わして、
もしかして、
泣いてます?
それとも
笑ってます?
『い、い、イッヒ?。わ、わた、私は、ど、どうしし、どうじて、こ、こんな目に遇うんでで、しょうか。』
ヒックと啜り泣くような、ふふふと微笑むように、汚れた黒の鎧ドレスを震わせて、そうエーリカが念話で呟く。
自分には、返す言葉が見つからない。
エーリカの思惑がわからない。
『ね、願ったのがいけなかったんでしょうか?。ゆ、夢みたののが悪かかったんで、しょうか?』
呪咀のように。
普段のゆるやかな口調とも、焦った時の噛み噛みの口調とも違う、どこか空虚な、どこか儚げな口調で言う。
『そ、そうですよね、。わ、私がが、諦めてい、いれば、良かったんです、よね?。は、早く、だ、誰かにに、魔帝を、ゆ、譲って、いればば、よ、良かった、んで、すよね?。そ、そう、すすれば、誰、も、傷つかない、で、ミケも、シュ、ルツも、み、みんな、戦わないで、す、済んだん、で、す、よね?。ふふふ、ふふ、ふふふふふふ、無、無能帝は、無能帝らしく黙って、こ、殺されれば、い、いいんですよね?。ふふ、か、飾り姫の、通り、く、首だけ、に、なって、飾られれば、いいんですよね?。ふふふふふふ、ふふふふふ、ふっふふふ。』
ガキン、ドシュ、バキン、ガン、ドカ、ザシュ、ズバ、ザス、ブン、グサ、ドス、キキン、ドサリ。
耳には剣戟の音が、死の音が、生の音が聞こえて
頭にはエーリカの狂った声が聞こえて
いや、もう、自分も狂ってしまいたい。
というか、自分もこんな感じになっていたんだろうか。
恐いよ。不気味だよ。
ガキンッ!!
「がっ!?」
痛っ!。またトンガリ帽子に矢が当たったよ。そんなにいい目印なのかこれ?
まあ、いいや。
とにかく、
とにかくだ。
死ぬのはいい。いや、よくわないけど諦めた。ああでも、生き残れるなら生きたい。やっはダメか。
ダメだこりゃ。
次いってみよう。
あ〜〜。なんでか今ものすっごくホームシックになりそう。
帰りてーなー。命の危険なんてない日本に帰りてーなー。帰って友達と遊んで兄とくっちゃべって、婆さんの肩たたいて、母さんの飯食って父さんと一緒にテレビ見て。
はっ!
なんか話がそれた。
いけないいけない。
よし。
死ぬとして、
死にたくはないけど死ぬとしてだ。
最後に隣にいる存在が精神的に狂ってるってどうよ?
自分は嫌だ。
自分が狂うのはいいけど、いや、よくはないけど。他人が狂うよりはマシだ。
優しさとかじゃなくて普通に嫌だ。というか自分を現実に引き戻しておきながら一人だけ狂ってんじゃねーよと。
お前も帰ってこいよと、
道連れにしてやるよと、
そんな風に思ったわけで、
『エーリカさんエーリカさん。』
恐らく最後になるであろう念話を開始。
カムバックエーリカ。
『ふ、ふえ?、ふふふ、ふふふふふふ、ひふ、ふふふ。な、なん、なんですか、イ、イッヒ?』
目の前でまた一人味方が倒れたけど念話を持続。
『死ぬの嫌ですか?』
『ふふふ、嫌ですよイッヒふふ。』
『殺すのは嫌ですか?』
『嫌です嫌です嫌嫌でーす。ふふふ。』
『ならどっちが嫌ですか?』
『も、もちろ、ん、死ぬ方、ふふふふ、っです。』
『なら殺せば生き残れるとしたらどうしますか?』
『ころ、殺す、殺しますよ?ふふ、イッヒでも、殺し、ますよ?ふふ。』
それは勘弁。
『じゃあ、
目の前の奴らを殺せば助かるとしたらどうします?
』
あれ?
なんか自分の思惑と違う方向に誘導してる気がする。
現実に戻すどころかアクセル全開にあらぬ方向に背中を押してる気がする。
まあ、いいか。
『ふふふふ、もちろん殺します。まーす。ふふ。』
手遅れっぽいしね。
『では、
思う存分、
どうぞ。
』
スッと、左手で敵を、囲まれてるからとりあえず目の前の敵に向かって差し出す。
ミケさんも、シュルツも、味方も、誰も気付かない仕草で。
魔帝の道を印すように手を伸ばす。
その瞬間
「!!?―‐―‐ぁ¨¨―“――っ――――――ぁ―――――――――っ―――――――――!!!!!!!!!――‐‐‐!!!?」
この世界に来て初めて。
エーリカに出会って初めて。
念話ではなく声帯を震わせて
突然叫び咆哮し、
唐突にミケさんを押し退けて、
いきなりシュルツさんを弾き飛ばし、
壁となっていた漆黒の鎧を掻き分け、
制止の声を取り合わず
叫びの懇願も聞かずに
前に、敵がいる前に、自分が指し示した前に
飛び出した。
金髪を掻き乱し、まるでライオンのように猛々しく
碧眼を見開き、まるで仁王像のよいに睨み付け
汚れ傷ついた黒の鎧ドレスを、まるで宝石のように煌めかせ、
「っ――!!!―‐‐‐――――!!」
右手を真っ直ぐに突き出し
手のひらを開ききって
あれは、
自分と初めて出会った時にエーリカがとったポーズ
シュルツさんが初めてエーリカに姿を見せた時の構え。
「!――ぁ――――――――――――――¨¨―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――!!!!!??!!!―――――――――――――――――――!!――――――――!!!!!!ぁ!!!っっ!!――‐‐――!‐!‐¨!¨――――――――――――――――――――――――――――っ!!!!!。」
自分の視界の中で
瞬間
‐黒‐
が、
爆発した。
グッバイ・エーリカ。
まずは謝罪を
すいませんでした。
この話を読んで気分を害する人用に謝っておきます。
さて、主人公が狂いました。ついでにヒロインも狂いました。今振りかえると、はちゃめちゃなストーリーですね。まあ、異色なファンタジーを目指してるわけなんですけど、どうでしょうか?。主人公が本名不明で、戦闘があっても戦わないで傍観し、精神的に壊れやすい。
ストーリーとして破綻してきてますね。
まあ、いいや。
とりあえず続きます。
まあ、だいたいオチは読めるとは思いますが次回もお楽しみにしてください。
というか楽しめますかこの小説?
追伸
気が付けばお気に入り登録数が120件を超えてました。
ありがとうございます。
本当にありがとうございます。
出来たら感想等をお待ちしております。
よろしくお願いします。
更に
ありがとうございます。