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逃亡者

連合国の一部は、大陸の海に繋がっている。

漁業も行われているが、船舶による大陸の他国への貿易も行われていた。


「首脳陣と権力者の一部は、船で逃亡した様です。」


崩壊した首相官邸でステファンを待って居たのは、フィグロ・キーマだった。


「何人かは捕食したのですが、行き先までは知らされていなかった様です。」


フィグロが、皇太子に頭を下げる。


「いや、今回の防衛は、貴公の貢献が大きい。何事も完璧は難しいと思う。」

「取り逃がした中には、あのサマサ商会の御曹子も含まれている様で、うまくすればシータ様の手掛かりが掴めるところだったのです。」


創造主の敵を逃した自分が許せなくて、誰かに謝罪したかったのだろう。


「それは、残念でしたね。」

「本当に、残念です。」


頭を垂れて、トボトボと去るフィグロを、ステファンは見送るしかなかった。


「殿下!」


家臣の声に、ステファンは我に帰る。


「港を重点的に、出国者を捕縛しろ。連合国の武器と武器開発施設は、全て破壊。王国と帝国に移動している連合国民は、強制帰国を開始させろ。」


皇太子の号令が響く。


「今後、当地は王国と帝国の協同監視下に置かれる。国外への出国は禁止。流通は王国指定の業者が行う。連合国民は、非道なる侵略国家の一員である事を胸に刻み、指示にに従う様に。以上を広報せよ!」


文官達によって用意された、大量の告知書が兵士に手渡され、一軒一軒の家に投げ込まれる。


命令で残された議事堂に、臨時行政府が準備され、王国と帝国の大臣と貴族達が馬車から移動を始めた。


「将来の朝廷復活に備えて、貴公等には、期待しておるぞ。」


帝国大臣達と一緒にやって来たカナシス皇太子が、ゲキを飛ばす。


「お久しぶりです。カナシス殿下!」

「ステファン殿下も御苦労が絶えませんね。」


御互いに、熱い握手を結ぶ。

国王は、国の要なので、出歩く事は少ない。

特に外国での国事には、決定権を持つ皇太子が出向く事が多い。

そして、今期の皇太子には、近年稀にみる程の重役が背負わされている。


「御互いに、先代の御代が羨ましいですね。」


父達が皇太子の時期は、もっとのんびりできたのであろう。

二人は、同時に溜め息をつく。

その後、ステファンは思い出した様に、姿勢を正した。


「報告によりますと、首脳陣と権力者が、船で逃亡したらしいと言うことです。」


ステファンの連絡に、カナシスが側仕えに目で合図する。


「御忠告をありがとうございます。義兄上アニウエ。」


両者の顔に、笑顔が浮かぶ。


「まだ早いと思いますが、私にも兄弟が出来る事は、とても嬉しく思います。」


戦争での占領支配もあれば、好意的な統一もある。

両皇太子の側仕え達は、微笑ましい二人を見て、希望を感じるのであった。



---------



洋上を漂う船の中では、避難した連合国の首脳陣が、騒いでいた。


「サマサ殿。本当に大丈夫なのだろうな?」

「お任せ下さい。」


船団は、沖合いを南へ向かい、大陸の東側、エデンの地を目指していた。


「魔物にも見付かっていない、秘密の港がございます。宿舎と日用品も用意してございますので。」


禁断の地に、その様な場所が有るとは信じられる者は居なかった。


「私の手の者が、カナンの国家で安全な場所を確保するまでの間、こちらで我慢していただくだけでございます。」


各地に広げた店は、サマサ商会との繋がりを隠す為に、幾つもの架空の店を経由して運営をしてきた。

更には、信頼出来るシスタ教徒を管理に混ぜてある。

あえて、責任者にしないのは、目立たないようにする為だ。


メインのサマサ商会は、母上ソックリのニセ物が運営している事は、知っているので、今は繋がりを切っている。

元より、これらの商会は、母上にも知られていない、彼個人の運営だ。


船団は、海から直接入れる洞窟へと向かっていた。

船がギリギリ入れる大きさで、奥は、かなり深い。


船が近づくと、洞窟の中ではアカリりがトモりだした。

船は一艘イッソウづつ、順番に入ってゆき、入り終わると灯りは消えていった。




波打つ洞窟の入り口に、伸びる手が有った。

濃い緑色の腕には、鱗と水掻きがあり、岩場をしっかりと握っている。

何度かの波が寄せた後に、その腕が、静かに波間へと消えていったのを、知る者は居なかった。


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