ヤバイ孫娘
孫娘の婚約には、反対だった。
ちゃんとした貴族の家に嫁いで欲しかった。
騎士団を率いる儂や息子の影響か、孫娘はヤンチャに育ち、武芸では王国で五本の指に入る様になった。
そして、言い放った。
「わたくしより弱い殿方に嫁ぎたくはありません。」
予想出来ない事ではなかったが、そんな事を言われても、五本の指のうち、残りは儂と息子。他も既婚者だ。
そろそろ適齢期だから、妥協して欲しかった。
そうしたら任務先で、強い男を見付けたらしい。
魔力は有るが、貴族でもない帝国の男。
そんな任務から帰ってきた孫娘に、息子が試合負けしたそうだ。
それも連敗。
「お前、実質は王国最強じゃなかったっけ?」
「いや、あれは人間相手の剣技じゃないですよ、父上。」
後日、儂も手合わせしたが、確かにあれは勝てない。
僅かな期間で、首位を勝ち取り、化粧や料理をし出した孫娘に、事情を知らない騎士団の面々は、天変地異を恐れて騒ぎだし、教会に通いだした者まで出た。
最近、各地で御使い様関係の天変地異が多発している。
そんな中で、王命による先の帝国の男との婚儀が決まった。
貴族に養子入りして、仮りそめの爵位を得ると言う奴だ。
不満だ。
領地も無い宮勤めが関の山だろう。孫娘が幸せになれない。
事情を知った、息子が寝込んでしまった。
儂も寝込みたいが、息子に続き、騎士団長まで寝込むわけにもいかない。
相手の親からドレスまで贈られたと聞き、現場復帰した息子が見に行って、漏らしていた。
愚痴ではない。いい大人が、下を漏らしていた。
「父上。あの婚儀に反対してはなりません。騎士団が全滅します。」
その時は、戯言だと思っていた。
後日、南西の連合国が攻めて来たとの報告を受け、王命で南部の国境へ騎士団全軍を率いて向かった。
伝令では戦場は三ヶ所。
北側から順に回ったが、既に制圧済みで、国境の前後に数百人の死骸が転がっていた。
最後の国境壁へと急ぐと、なんとか間に合った様だった。
そこで、儂は見た。
二体の戦鬼が、信じられない戦いを繰り広げる様を。
実際に空を飛び、一太刀で数人を輪切りにし、強烈な魔法で焼き払い、駿足で駆け抜ける。
敵の銃弾を跳ね返し、体当たりでも揺らぎ一つしない。
「化け物か?」
聞けば、国境付近の死体は、殆どが、あの二体の化け物が短時間に仕留めたらしい。
敵に回せば、王国の驚異になると直感した。
そんな二体のうち、小柄で赤い奴が、儂を睨んでいる。
思わず、剣に手をかけた。
もう一体は戦っているが、赤いのは、ゆっくりと、こちらに近付いてくる。
全身が血まみれにも見える、その姿は、人の様にも、魔物の様にも見える。
胴体や腕の一部に見えるのは、鱗の様な身体の一部だろうか?
周りの部下達にも戦慄が走った。
赤いのは、自分のバイザーに手をかけて、ゆっくりと引き上げる。
「あら?お祖父様。お早いお着きで。」
兜の中には、汗一つかいていない、満面の笑みを浮かべる孫娘の顔があった。
立ったまま腰が抜けた。
いや、恐怖を感じた。
そして、息子に言われた事が、脳裏に浮かんだ。
「儂は、其方達の婚姻には賛成だからな。本当に賛成だからな!」
大声で叫びながら、近付く孫娘に、自分の股間が温かく濡れるのを感じた。
孫娘は、魔物に取り憑かれたようだ。
うちの孫娘はヤバイ!
ヤンチャな時が懐かしくも思えるほどヤバイ!




