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西部の国境

王国南部へ連合国軍侵入の知らせを受けて、王国の軍隊と西部の駐屯地の軍隊は、最低限を残して、王国南部へと向かった。


王国南部の侵攻は、ある意味、囮で西部の兵を出来るだけ削減しておくのが、目的だったのだ。

ガーランドは、西部にも居るので、南部が失敗しても何とかなるなる。


西部に潜ませた、諜報員の報告で、駐屯地の部隊がドラゴンズゲートを通過したのを確認すると、連合国軍の本隊が動き出す。


アナログ時計での九時から十時方向に、進軍を開始する。

最終目的は、西部の奪取だ。

南側同様に、前もって用意していた国境壁を取り壊し、一気に進軍して、先ずはドラゴンズゲートと帝国側門の二つを閉鎖して、援軍を防ぐ。

それから、駐屯地や軍事拠点を順次、潰して行く予定だった。


そんな彼等に南部部隊が、待ち伏せを受けた事を知る術はなかった。


一番本隊に近い南部の突入ポイントは、ワイズとトッカーナにより瞬殺され、伝令を出す事も出来なかった。


最大戦力でもある彼等が、本隊相手に回されなかったのは、その速度と殲滅力にある。

最新鋭の銃も、兵隊全員に回せる程は無く、突入部隊に優先された為に、残りは一般の民兵でも戦えた。


南部の他の突入ポイントは、盾に進路を塞がれた所を、連合国側から回り込んだ、ワイズとトッカーナにより、後ろから殲滅されて行く。

国境壁側へ向きを変えれば、銃歩兵の一番弱い最後尾が、民兵の剣に倒れる。


連合国側に入った王国民兵は、伝令の殲滅を最優先とされており、逃げ延びた兵士が、連合国本隊に到着した時は、既に遅かった。



---------



連合国軍の本隊は、南側同様に、待ち伏せに会っていた。

王国軍ではない。

帝国の魔導師部隊が、特殊な装備で待ち構えていた。


総数が違うだけで、基本的には南側と同じ武装だった連合国軍は、同じ様に台車付き盾に阻まれていた。

ここに、弓矢隊が居れば、上方からの攻撃に弱い性質の、この盾は大打撃を受けていただろう。

しかし、銃がある部隊は、弓矢の必要性を否定してしまう。



魔導帝国は、平素、エデンからの魔物対策に兵を配置していたが、ハイフース率いるドラゴン一族が、代わりに境界線付近で、魔物を防いでいた。

ワイズを養子として婚約にこぎ着けた礼だそうだ。


帝国は一部の国境警備を除く、ほぼ全軍を、行商人馬車に乗せて、極秘に西部の国境壁防衛に回して来たのだ。

勿論、オーグ/ジャシャーカの売り付けた武器を構えて。



帝国軍が使ったのも、基本的には南部と同じ、台車付きの盾だったが、少し違ったのは、ホースから噴き出す液体が、台車に乗せられている点だ。

台車には、中くらいの樽が乗せられ、魔法で加圧する事でホースから中の液体が、敵に向かって降り注ぐ。


「うっ!何だ?この水は?油?」


銃弾は移動式盾で防がれ、頭上からは油が降り注ぐ。

この装備が民兵には配備されなかった理由が、魔導師部隊にある。


「燃えてしまえ!」


魔導師の放った魔法が、連合国兵士に降り注いだ油に、火を灯す。

この油は特殊な物で、発熱量が異常に高い。

引火した兵士達は、銃を構える暇など無く転げ回るが、それ位では消えはしなかった。

性質的には、ガソリンに近い。

もがく銃歩兵部隊に、次は容赦なく魔法と剣が、迫る。


このシーンだけ見れば、どちらか悪者か、判らないだろう。


更には、変な荷馬車が到着する。

荷馬車は戦場に尻を向けると、馬を外し、前後逆に取り付けた。

普通の馬車は、馬が馬車を引く物だが、これは馬が馬車を押す形になっている。

馬車の最後尾、いや、今は最前部には、除雪車の先頭の様な鉄板が立て掛けられている。

荷台には、大きな樽が複数と、ホースが。


凶悪な事に、火炎放射戦車が登場したのだ。

複数の魔導師による放水は、飛距離を増し、国境壁の穴を抜けて、後衛の部隊まで火ダルマにして行く。


既に銃によるメリットは、失われ、手放した銃により、撃たれる者もある。

火炎放射は、盾で防いでも、盾が燃えて手放さざるをえなくなり、ひたすら放水から逃げ惑い、仲間同士でぶつかり合う。


火が消えた後を、魔導師部隊は、ゆっくりと前進する。

銃弾は重厚な盾を貫けず、近付けば燃やされる。

盾は壁状態なので、突撃しても阻まれる。

南側同様に、添え壁が有って迂回が出来ない。


更に国境壁まで引火したした。

連合国軍の先頭部隊は、内も外も、火に被われた。

もはや、生きている者はいない。


魔導師部隊は、国境壁を越えて、連合国領内へと進む。


後続部隊として準備していた者も、手も足も出ずに、燃えるか撤退しか無い。


広くなると、帝国魔導師部隊は、魔法攻撃を主軸においてくる。

移動式盾を押しながら、魔法で銃歩兵を狙い打つ。


「なんで、帝国が攻めて来るんだ?」


連合国軍の想定だと、多少の魔導帝国軍人が居ても、銃歩兵の連射で倒せる算段だった。

魔法攻撃も、数が少なければ、物量で凌げる。


しかし、現実は魔導師部隊の大量投入と、敵新兵器で銃の無力化による被害の増大。

今さら、対応策など練り様が無かった。

ひたすら撤退しか出来ない。


帝国軍は、一般の市街地に、通常武装の兵士を見張りに立て、特殊部隊は、油を補充しながら、著名な軍事拠点と行政拠点を燃やして行った。


北側から進軍した帝国軍と時を同じくして、王国南側に向かった王国軍は、ワイズ達が確保したルートから、連合国東側に潜入し、帝国と戦っていた連合国軍の側面と後方から攻めて来た。


行商人による情報収集が出来るのは、連合国だけではない。

連合国の重要拠点は、次々と燃やされていく。

兵士や職員達を巻き添えにして。


ある意味で、降伏の出来る近代的な銃撃戦より、建物ごと焼かれて降伏も出来ない古典的火攻めの方が、殲滅戦には向いているのかも知れない。


大陸で戦闘特化した帝国魔導師部隊を相手にして、更には二面性戦闘におちいり、銃の優位性を失って、勝てるわけが無かった。


いや、基本的に襲う奴等は、自分が襲われる事を前提に行動しない。

防御の備えは皆無だ。

対して、襲われる方は防御と反撃の両方を準備する。

情報が漏れ、奇襲が失敗した時点で、全ては決まる。



王国は結果的に、更なる領土を手に入れる事になった。


「今回は、更地で無いだけ、まだマシだな。」


ステファンは、占拠した連合国に入り、国防や行政面での問題は有るが、幾分かは楽な結末だと、自分に言い聞かせた。


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