オーグ
ヌアンベクト殲滅時、肉を喰らい、家を焼き、岩を砕いていたドラゴンと虫達だが、厄介な物がある。
『金属』だ。
更地にせよと命を受けていた 彼等は、比較的分解しにくいこれを嫌がった。
しかし、ここに一人の男が居た。
彼はドラゴンや虫達と話をして、面倒な金属類を集めさせ、ある地域の地面の下に隠した。
ヌアンベクトからドラゴン達が去った後、彼は商人として王国に、ある提案をする。
「海外から無理矢理に帰ってくる旧ヌアンベクト国民を隔離する村を作るべきではないでしょうか?」
同意した王国は、彼に、その隔離村の運営を一任した。
王国から資金や資材の援助を受け、家を作り、畑を準備し、工房を作らねばならない。
場所は自由に選べたので、ヌアンベクト中から金属を集めた場所の近くを選んでおいた。
作物は、すぐには出来ないが、不法入国してくる旧ヌアンベクト国民は、比較的早く多く集まった。
駐留軍からは、留置場がイッパイにならなくて助かったと好評価で、国から感謝状まで貰った。
王国からの支援で、村人の食事は賄い、指導員を手配して、農業と鉄鉱業に従事させる。
商会としての投資無しで、支配出来る村が出来上がった。
村人は、鉱山を掘らなくても、すぐ近くに鉄材があるのに驚いていたが、商人が「帝国から持ち込んだ」と言ったので、信じるしかなかった。
増える村人に対しては、王国からの支援が受けられる。
村人の隔離には軍の援助が受けられる。
自給自足の生活に加え、男が村人に求めたのは、鉄材を使った『武器』の製作だった。
「ボーガン用に準備した盾に、追加装備と改造だけで、売り物になりそうですね。」
彼は、状況に合わせた調整で、更なる利益を求める。
指定された特殊な武器は、男の商会で買い取り、近くで蓄えられていた。
食糧自給が出来る様になると、余剰作物は商会が買い取ってくれる。
武器や農作物を売ったお金で村人は、商会が各地で集めた商品や食品を購入する事が出来た。
教会を建て、ヌアンベクトの堕落と、正しき教えを教育する。
孫の代にはキーマ商会の行商人として村を出る許可も、王国から取ってある。
村の生活は、そんなに悪いものではなかった。
そんな村を作り、武器を蓄えてきたのは、魔導帝国キーマ商会代表のフィグロ・キーマ。
正体はエデンの魔族スライム種の長、オーグ。
村を管理したり、教会の司祭は、勿論オーグのスライム分身体だ。
村人全員に、オーグの分体が寄生しており、王国に謀叛を考えたり、シスタ教に走る様だと、翌朝には頭が無くなる神罰が下る。
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彼は人間が好きだ。
虚弱で誘惑に弱く、滑稽だ。
オモチャとして好きだ。
彼等の起源種となる人間には、『自分が傷付かない限り変質行為は楽しい』と言う特性があったらしいので、彼は、それが色濃く遺伝しているのだろう。
このオモチャを踊らせる為には、お金は有るだけ有利だ。
スライムである彼は、創造主に与えられた情報収集と言う仕事にも有益な『商人』という立場を、たいへん気に入っている。
スライム種である彼には、痛感が無い。破損した部分は切り離す。
最悪、自分を食べられるので、飢えと言う感覚も無い。
当然、同胞意識も無い。
有るのは娯楽に対する喜びだけ。
その為に、スライムの特性は便利だ。
寄生して情報を集め、擬態して騙して、分裂して演じる。
無様に踊らせて、最後は喰らう。
今の人間を見ていると楽しい。
創造主たるゼータ様に伺った話では、人間が進歩すると、指紋や静脈配列、網膜などで個人認証を行う様になるだろうとの事だった。
擬態が面倒になる。
だから、人間文化を現状維持させるイータ様に協力している。
シータ様の人間が自由に進歩出来る世界では、面白味が減る。
シータ様の用意した軍勢は、進歩した武器を持っている。
これに対抗した新しい武器が、人間の文化を進歩させたのでは、本末転倒だ。
重要部分を、使いきりの消耗品とし、再現性の無い物にしなくてはならない。
幸い、エデン入りした時に、ドラゴンの長に、良い話を聞いた。武器に使えそうだ。
オーグには、秀でた戦闘力は無いが、リンクシステムは与えられていた。
マリコスを使い、植物性油から、特殊な油を合成する。
分裂出来るのを利用して、人間に秘密で量産出来る。
「これで、この面白い人間達を守れる。」
現状維持しようとする人間は、娯楽の為に重要だ。
進歩しようとするシスタ教団信者など、彼には害悪でしかない。容赦はしない。




