帰国報告
タウリも蹄鉄に慣れ、ラーミァ達は、ドラゴンズゲートを後にした。
「本当にありがとうございました。」
「いえいえ。御使い様に預けられた馬に、もしもの事があってはいけませんから。」
これから、王都へ報告に行かねばならない。
街の石畳などで、タウリの蹄が割れても困るところだった。
『これで、やっと腹が落ち着く。』
バーンは腹が空いていた訳ではなく、安心出来るパートナーに預けられる事に、安堵していた。
久々にワイズの頭に顎を乗せて、御満悦だ。
ワイズも頼もしいパートナーと一緒でも、騒ぐ兵隊が居ない事に安堵していた。
強さを競う腕試しなど、趣味ではない。
平安な時間を経て、一同は無事に王都へと、王城へと辿り着く。
旧国境門や王都入り口で、先駆けを出しているので、直ぐに謁見は行われた。
「長らくの任務。御苦労であった。ラーミァ殿。お元気そうで何よりだワイズ・バーン殿。」
「陛下には御機嫌麗しく。」
任務の詳細は、報告書を提出しているので、挨拶だけが基本だったが、報告書に無い確認が、行われた。
「ラーミァ殿。ステファンから聞いたのだが、帝国の姫君だと言うのは、真か?」
「はい。わたくしは、養母ラーファの後を継ぐ王国ガーランドですから、下手に騒ぎたくは無かったのです。」
ラーミァは、隠していた真意を語る。
「帝国に帰るつもりは無いと?」
「本当の家族の為に、たまの里帰りはしたいと存じますが、御許し頂けるのであれば、このまま王国ガーランドを続けたいと存じます。」
「そなた程のガーランドだ。願ったり叶ったりだが。」
国王は、頷く。
「報告を大儀であった。下がって良い。」
ラーミァ達は、礼をして下がった。
ラーミァ達の退室の後に、カーテンの影から、ステファン皇太子が姿を現す。
「いかがでしょうか?父上?」
「疑っていた訳ではないが、本人からの確認も必要だからな。後は、帝国への根回しをせねばならん。」
「そうすれば?」
「彼女は、御使い様の使徒でもあるし、大切なガーランドだ。王命ではなく、本人同志の意思を重視したい。」
「では、頃合いを見て、求婚をしても良いのですね?」
「この婚儀が上手くいけば、帝国との関係も更に改善され、将来的には統合も夢ではない。くれぐれも、慎重にな?」
「御意!」
息子の望みと、国家の後継、外国との関係の三つが、一気に改善されるのだ。父として、国王として、これ程の行幸は無い。
国王は、久々に旨い酒が飲めると喜んだ。
リリアナとトッカーナを城に残し、ラーミァとワイズ達は、ラーミァの家に向かった。
流石に、リリアナ達を受け入れるには手狭だし、料理も質素だ。
ラーミァには、一休みしてから王国内での豊穣の儀式が待っている。
トッカーナが落ち込んでいたが、これは仕方がない。
彼女達にとっては、当たり前の生活が戻ってきたわけだった。
ただ、王国のビゼル家だけは、違っていた。
帰国したトッカーナが、父親だけでなく、騎士団長である祖父までも打ち負かしたとの話が広がり、更には料理や女らしい所作まで身に付けだしたとかで、異変の前兆とまで言われ、騎士団がざわめきだしていた。
嬉々としていたのは、トッカーナの母親だけだった。
「殿方の心を射止めるには、やはり料理でしょうか?」
トッカーナから相談を受けた母親は、香水や衣服、女らしい所作を教え込む機会だと、奮闘していたのだ。
その話を聞いた父親は、剣技で負けた時以上に落ち込み、数日間も寝込んだ。




